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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅵ-ii 司書の協力者
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Ⅵ-ii 司書の協力者 (8月6日) 1. クロスを持つ司書1

 突然豊に届いたメッセージには、こう書かれていた。


『“クロスを持つ司書”より

“鏡の館”探し


 こんにちは。


 突然のメッセージで驚かせてしまったことを始めにお詫びします。


 私は“The Chess”では、お二人がご存知の通り、白のポーンの“読者”です。


 そして私のこちら側の職業は、つつじ女子大学図書館の司書です。


 “The Chess”は、学生しか借りられない決まりだと、五月一日の予約開始発表には書かれていますが、本当は、借りられる人は当学校の学生の他にも、当大学を卒業した大学図書館の司書も含まれます。


 本を借りることができる人の基準は、身分証明がはっきりしていること、つまり図書館のゲートを通る時、すぐに作成できる“貸出券”や“入場券”ではなく、“学生証”を以て通過したことのある人、ということだそうです。


 しかし司書の場合、学生とは違う条件があり、仕事の都合上、“読者”たちの誰が王様か知っているため、“こちら側”の王様探しゲームには参加できないのです。というわけで、今まで沈黙しておりました。ちなみにこの件については、これからも関わることができませんので、ご理解願います。


 ところで私がお見受けしたところ、お二人は“The Chess”と図書館の秘密についての謎を解こうとされているようですね。というのも、私自身、七年前から“The Chess”をずっと借り続けて以来、長い間この謎について調べてきました。それなので、同じコトを考えているお仲間に、私の知る限りのことをお教えして、 “鏡の館”を探す協力をしたいと思います。いかがでしょうか?


 ただその場合、残念ながら一つ条件があって、お二人は王様探しゲームを放棄することをお願いしたいのです。司書と“読者”が関わると、こちら側のゲームがアンフェアになる恐れがあるからです。


 それでも構わないならば、今日十七時に図書館四階外国語資料コーナーの観葉植物の置いてあるベンチにおいで下さい。


 一度このことについて、お二人とゆっくり話し合えたら幸いです。


 たぶん私の“あちら側”のパートナーは、この謎について、一番多くを知っているのだと思います。


 もしこの提案がご迷惑でしたら、このメッセージのことは忘れて下さい。


 では長文失礼します』



「……だ、そうだ」


 えんじは、大図書館に向かって運転中の豊に、“クロスを持つ司書”からのメッセージを声に出して読んで聞かせ、読み終えると複雑な表情で頭の後ろに腕を組んで黙り込んだ。豊はそれを見て、


「なかなかいいんじゃない? 相手がよく分からない人だけど、司書だっていうんなら、会っても大丈夫なんじゃないかナ? えんじがいいと思うなら私も行くよ。なんせ私は名探偵えんじの助手だからね」


 と緊張をほぐすように軽やかに言った。その間に車は大図書館に到着した。


「そんじゃ、探索もドン詰まりに近付いていた所だし、会ってみるか! 司書だというのが本当なら、見たことがある人だという可能性が大きいさね」


 このえんじの予想は大当たりだった。

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