Ⅴ 商店背負いの行商娘 3. 三つ頸の翼竜2
翌日の朝、ガーラとレンは空飛ぶ絨毯に乗って西へ向かった。そして七日目の夕方、白の王都シエララントに到着した。王城ではラルゴが出迎えた。
「お疲れ様です、レンさん」
ラルゴはレンとガーラの冒険をすでに承知済み、という風に挨拶をした。
「僕をここまで呼んだことには理由があるのですよね、ラルゴさん?」
レンはラルゴに問うた。ラルゴは笑顔を変えずに答えた。
「そうです。まずは王の間までいらして下さい」
ラルゴは王の間にレンとガーラを案内した。
王の間には女王エーデルがいた。ラルゴは女王のいる前で、レンに依頼した。
「これは王からの伝令なのですが、ゲームの参謀になって下さいませんか」
「すごいじゃない、レン!」
ガーラは自分のことのように喜んだ。レンは強く首を横に振った。
「僕にはできません。僕は祖先とは違うんです」
ラルゴは拒否されても動じることなく説得した。
「三つ頸の翼竜を空に飛び立たせる段取りは見事だったと思います。そんな感じで白のチェスプレイヤーの作戦を立てて欲しいのです。レンさんはプレイヤーの人物像にも精通していて、先を読むことができると私は思います」
「女王である私からも頼みますわ、レン。これは王の願いです」
女王陛下が自ら頭を下げた。レンは困って言った。
「頭をお上げになって下さい、女王陛下。僕は目立つことが苦手なのです」
「それなら大丈夫ですよ、レン。ゲーム中は王城にいるだけですから戦うプレイヤー達のように魔法本に記されることもなく、目立つことはありませんよ」
女王は大らかに答えた。レンは小さな声で弱々しく言った。
「僕にどれだけできるか分かりません……」
「レンが嫌なら断るのもしょうがないけど、私はレンに合っていると思うわよ」
ガーラがレンの背中を押した。レンはふうっとため息をついた。
「僕にできるようならやってみます……。では地理を頭に入れたいので、大きな地図はありますか」
ラルゴが笑った。
「はい、王家の者が使う壁掛け地図をお持ちしますね」




