XV-ii 赤いドレス (9月31日) 10. 赤いドレス 2
「そういうわけで、今年の“The Chess”はいろいろあったけど、丸く収まって終了したようだよ、まか」
九月末日、まかの家の庭園は涼しかった。この庭の草花たちの世話は、すべてまかが行っているそうだ。真は、今日届いた“The Chess”のゲーム終了後のことが書かれた内容を、まかに話して聞かせていた。
そういえば、こちら側のその後のことは、向こう側には伝わっているのかなと、ふと真は疑問に思った。こちら側でも、“ゲーム”はしていたのだから。例えば今この場面なんかはどうなのだろう……。
まかお手製の十二時間かけて抽出した水出しコーヒーを飲みながら、真は目の前に座っている庭園の女主人を見つめた。今日のまかは、珍しく目もさめるような鮮やかな赤のドレスを着ていた。学校では、いつも落ち着いた感じの色の服を好んで、赤色を身につけているところは見たことがなかったが、長い黒髪とすらりとした長身それと凛とした輝きを秘めた瞳には、その華やかな色は意外とよく似合っていた。
まかは、背筋を伸ばしたきれいな姿勢で真の話を静かに聞いていた。そして真の次の言葉を待つように、何も言わなかった。首元には銀のチェーンが見え隠れしていた。
真っ黒なアイスコーヒーは独特の苦味がきいていた。真は呟くように言った。
「赤の王はあなただったんだね。まか」