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XV-ii 赤いドレス (9月31日) 9. 黒騎士のタペストリー 1
「ロッドの旅立ちを止めて下さい、ラベル」
スターチス王はにこやかにラベルに言った。祝宴の終わって時間が経った頃のことであった。
「承知しました、スターチス王」
王城で王に喚ばれたラベルは王の言葉を承った。
「しかし畏れ多いことを申しますが、隠し事をされずに直接ロッドにお話なされば良いのではないですか?」
ラベルは不思議がって尋ねた。スターチス王はやはりにこりと答えた。
「ロッドにも自分の気持ちを確かめる時間が必要でしょう?」
九月末日、ラベルは王の間でスターチス王の命令を受けた。
「今日はロッドを連れて来て下さい」
「承知しました。しかしそれは難しいことを仰いますね」
ラベルは難題に困ったような顔をして答えた。ラベルは王からの箝口令を守りながらロッドを連れてくることは困難なことだ、と思った。スターチス王は笑っただけだった。