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XV-ii 赤いドレス (9月31日) 4. 僧侶と少年 1
「お世話になりました、ラルゴさん」
レンは白い厚手の僧衣の僧侶に頭を下げた。白の王城ではチェスが終了してから一週間祝祭が続き、その間レンはそれに参加していた。今はお祝いも終わり、白のポーンたちは一人また一人と城を去っていく所だった。レンも再び自分の村に戻るため、僧侶ラルゴに城門前で別れを告げていた。
「こちらこそ。レンさんには大変な役目を与えてしまいました。どうもありがとうございました」
ラルゴはにこやかに挨拶を返した。手には大きくて細かい装飾の杖を持っていた。ラルゴはチェスの終了と同時に、大僧正の位に上がったそうだった。もう一人の僧侶マーブルも同じく昇進したとレンは王城で聞いていた。
レンはお祝いとして王から金貨やお土産を受け取っていた。ポーンは皆お祝いが与えられた。それを腰の鞄に携えて、スターチスの野原が広がる街道をレンは出立した。僧侶はレンが見えなくなるまでそこに立って見送った。
これからもこの聡明かつ慎重な少年に、王城での相談事を持ちかけるであろうことを、僧侶はまだ言わなかった。