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The Chess  作者: 今日のジャム
XⅤ アリスの入城
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XV アリスの入城 1. ナイト

 エンドは赤のルークの異空間魔術を抜けると、赤の王城の廊下に一人佇んでいた。周りを見ても人はいず、パズルとプロミーとはぐれたようだった。エンドは首に提げたクロスを取り出しその飾り石の透かし模様を確認した。左側を向いた馬の模様に変わっていた。エンドはクロスを服の中にしまうと辺りを観察した。ここは一階のようだった。向こうの方に日の射した場所があった。エンドはそこへ歩き出した。


 しばらく歩くと、王城の中庭に行き着いた。そこには、赤馬に乗ったいかつい男が一人、エンドを待っていた。


「久しぶりだな、エンドワイズ」


 バスクは入城者に向かって短く挨拶をした。その紺碧色の瞳はこれから戦う者を歓迎していた。エンドは応えた。


「待たせて悪かった、バスク」


 エンドは戦う前にふとパズルとプロミーのことが気になった。バスクは他のポーン達のことを教えた。


「職人とアリスはそれぞれ自分に合った相手と会って戦うから大丈夫だ」


「そうか」


 エンドは短く頷くと自分の愛馬を呼んだ。


「小フロスト、ここへ来て欲しい」


 すると、魔力を持った馬は、中庭に通じる城の出入り口からエンドの元へ駆けてきた。エンドは自分の元にやって来た小フロストの腹に手を当て感謝を伝えると、その背に飛び乗った。愛馬に乗ったのは一月ぶりだった。バスクが提案した。


「この中庭では戦うには狭いから城の外の草原へ行くが、いいか、エンドワイズ?」


 バスクはエンドに王の間にチェックを掛けに行くことを放棄していいか聞いた。エンドはバスクが白の城へ入城した時チェックを掛けなかったことを思い出した。エンドは快諾した。


「いいだろう」


 騎士たちは連れ添い、中庭から城の外へ出た。

 


 草原は風が吹いていた。日は天頂に上る所だった。バスクは丁度良い場所へエンドを案内すると立ち止まった。


「ここでいいだろう」


 そこは先程ポーン達で戦っていた場所から離れていた。誰も邪魔する者はいないことを確認すると、二人は一斉にクロスを外して互いに見せ合った。ナイトのクロスが陽に当たり、光った。エンドが宣誓をした。


「我、自身の祖先に賭けて誓う。赤の者バスクと戦うことを。

 試合は馬上戦。戦う志を失った者が負けとする」


 バスクは大きな声で応えた。


「我、己の武器に賭けて誓う。挑戦せし白の者と戦うことを!」


 静寂が訪れた。エンドは静かに辺りを見回した。今度はクロスを奪う者はいなかった。宣誓によるクロスの光が止むと、騎士たちはそれを懐にしまった。バスクは言った。


「それでは始めるかっ!」


 二人は距離を取り、そして勢いよくぶつかっていった。カチン! と刃を交える音がした。エンドは魔槍を、バスクは槍を互いの武器にぶつけ合った。


「エンドワイズ、試合のできる時間はそう長く残されてはいないだろう! 俺は短時間で決着が付くよう休憩は入れないでいく!」


「ああ! 分かった!」


 バスクは槍を振るいながらエンドに叫んだ。エンドも声を大にしながら肯った。槍の勝負は力の技に甲乙つけがたく続いた。どちらも息を切らすことなく、集中して相手の急所を狙って戦った。バスクがエンドの魔槍を払い、相手の首元に槍の穂を突き付けようとした。エンドは姿勢を低くしてそれをかわし、近付いたバスクの胴を見据えて力一杯槍で叩いた。バスクは姿勢を崩し、馬上で揺らいだ。その隙をエンドは見切った。エンドはえんじの声が聞こえた、と思った。

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