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XⅢ-ii 余韻と休息 (8月29日) 1. 休日出勤
利用者のいない館内に一人、探し物をする人物がいた。八月二十九日。月に一回の休館日。蔵書さえも息をひそめて静かに過ごす中、館長リアルは三階一人掛けの籐椅子が海の見える窓側に面して並ぶエリアで、その背面に並ぶ観葉植物の鉢植えの一つにかがみ込み、根元の土を手で掘り起こしていた。
「多分、ここら辺のはずなんだけどっ……!」
土を掘り起こしても探し物は発見できず、隣の鉢植えに移動し陰に落し物が無いかをチェックし、再び土の中を探すことを繰り返した。盗まれて紛失したクロスは、館内のどこかにある、ということを知っているリアルは、人のいない時間帯などに館内を植木鉢の土の中まですみずみ探し続けていたのだった。
「赤の都のそばの大教会なら、大図書館ではこの場所が相対するんだけど……」
エリアの隅の植木鉢まで来た時、土の中から銀色の鎖が見付かった。それをそっと引き出すと、白石の飾り石が嵌め込まれたクロスが現れた。リアルは安堵した。
「やっとだわ……」




