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The Chess  作者: 今日のジャム
XⅢ 赤の城の攻防
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XⅢ 赤の城の攻防 3. 白い巨人

 リアは赤のルーク、アフェランドラと魔方陣を挟んで対峙していた。アフェランドラは言った。


「異界の者は大きな魔力を持つ。戦いを願おうか」


「では僕は魔方陣で一人召喚します。その者があなたと戦います」


 アフェランドラは頷いた。リアは誓言を唱えた。



「我、ゲームの創始者の名において誓う。

 赤のルーク、アフェランドラに試合を挑むことを。

 勝負は我が召喚せし者と赤の者の魔術で戦う。

 先に戦意を失った者が負けとする」



 アフェランドラは応えた。



「我、古の偉大なる石の精に賭けて誓う。

 白の者の挑戦を受けて立つことを」



 互いのクロスが淡く光った。光が収まると、リアは緑の魔方陣を杖で叩いた。


「我が守護せし者、召喚主の助けを求める声を聞け。スノー!」


 緑の魔方陣の光が増し、円陣の中から白い巨人が姿を見せた。リアは喚び出した者に言った。


「ここであなたの助けを借りたいと思います、スノー。魔術で援護しますので、赤のルーク、アフェランドラと一戦交えて下さい」


 白い巨人は召喚士を見つめると、大きく頷いた。リアは了承を得ると、アフェランドラに言った。


「僕の代わりに戦うのは巨人のスノーです。スノーは魔法が使えないので、僕が代わりに魔力を送ります」


「分かった」


 アフェランドラは短く答えると、姿を消した。


 次に魔術師が姿を現したのは、巨人の斜め上だった。アフェランドラは魔術を編み、巨人に向けて冷たい雪の混じる風を吹き付けた。巨人は真正面から吹き付ける吹雪を腕で目を覆って堪えた。


「スノー、大丈夫ですか?」


 リアが巨人の体力の持ち具合を尋ねた。巨人は平然と答えた。


「これくらいの雪は平気だ。北大陸の故郷が懐かしい」


 リアは巨人に体が温かくなる魔術を送った。巨人に当たる雪は蒸発するように溶けていった。


 アフェランドラは巨人の背後に回り、巨人の背中に氷のつぶてを放った。つぶてはナイフのように鋭利だった。しかし巨人は無傷だった。召喚士の守護魔術が巨人を守っていたからだった。


 巨人は後ろに振り返りアフェランドラを掴もうとした。アフェランドラは姿を消し、巨人の頭の真上に移動し、巨人の視界から離れた。


 アフェランドラはそこから魔力を巨人の頭目掛けてぶつけた。魔術解除の技だった。しかし巨人にかけられた守護魔術は強く、攻撃者は逆に跳ね返されて宙高く飛んだ。姿勢を崩したアフェランドラを巨人は掴み捕ろうとした。しかし魔術師は素早く体勢を整え、巨人の大きな腕から逃れた。


 アフェランドラは巨人から離れた所で浮遊し、虚空から魔力を秘めた剣を現した。それから巨人の大きな顔の前に現れ、煙幕を焚いた。巨人は視界を奪われ眼をこすった。その間に巨人の首元へ飛び、魔力を秘めた剣で首筋を切り付けた。召喚士の守護魔術が剣の刃を遮る。アフェランドラは守護魔術を切り刻もうと力一杯剣の刃を白い剛毛に当てた。しかし召喚士の魔力の方が上だった。アフェランドラは攻撃力が上がれば上がるほど己の魔力が吸い取られるようだった。煙幕が晴れ、視界が戻った巨人は首筋にいる攻撃者を掴もうとした。しかし魔術師は瞬間移動しその場から消えた。


 そのまま異空間の主はその場から見えない場所に移動したようだった。白い巨人はリアに尋ねた。


「この空間の奥に魔術師の気配がある。私には闇の空間の気配が分かる。先へ進んでいいか?」

 リアは大きく頷いて答えた。


「はい。一緒に行きましょう」


 巨人とリアは奥へと進んだ。道は途切れ、崖になっていた。その先にアフェランドラが浮かんでいた。


「スノー、崖ですが大丈夫です。僕がスノーを浮かばせます」


 巨人は頷き、崖から一歩出た。何もない虚空に巨人は足を置いた。その巨体は沈むことなく浮かんでいた。


 アフェランドラは目を細め、後ずさった。巨人はゆっくり足を踏み出し、アフェランドラを捕まえた。魔術師は捕まった瞬間、辺り一面に白い光を放った。巨人は目がくらみ、足元がぐらついた。気持ちを集中させて浮かんでいた巨人は空間の底に沈みかかった。リアは光の中、巨人に魔力を送り地面の上に瞬間移動させた。アフェランドラはすかさず巨人のいる地面を消していった。この空間はアフェランドラが創ったものなので、地面を消すことも造作のないことだった。巨人とリアは急いで消えゆく地面から離れ、走って逃げた。


 リアと巨人は元いた魔方陣を現した位置まで戻った。後ろでアフェランドラが浮かんでいた。リアは巨人に言った。


「もう一度、宙を歩いてアフェランドラを捕まえて下さい、スノー」


「また発光したらどうする?」


「今度はそうさせません」


 巨人はリアの言葉を信じ、再び道のない虚空に足を踏み出した。巨人が宙に浮かんだ。巨人はゆっくりとアフェランドラを捕まえに行った。リアは巨人に魔力を送った。アフェランドラは再び巨人の両手に捕まえられた。アフェランドラは光を放とうとした。が、魔力が効かなかった。急いで瞬間移動をして逃げようとしたが、魔術が発動しなかった。


「これは……」


 アフェランドラは訝しんだ。リアが言った。


「スノーの両手に魔術封じの魔術を送っています。スノーの手の中では魔術師は魔術を使えません」


 アフェランドラは動じずリアに言った。


「手を放してもらおうか」


 リアは巨人に言った。


「スノー!」


 巨人は手を放した。アフェランドラは解放され、リアの前に立った。


 王城守護魔術師はクロスを外してリアに渡した。


「これで試合は終了だ」


 リアはクロスを受け取ると、スノーに礼を言った。


「ありがとうございました、スノー」


 召喚士は再び緑の魔方陣を地に現した。巨人は円陣の中に入っていった。


「良い縁だった。リア・クレメンス」


 巨人は一言だけ挨拶すると、魔方陣の中に吸い込まれるようにして姿を消した。


「では我の異空間を解き、汝を王城へ送ろう」


 異空間の主の申し出に、リアは首を横に振った。


「いいえ、アフェランドラ。入城したエンドとパズルさんとプロミーさんが王手をかけてくれます。僕はこのままここを去ります」


 そう言うと、リアは姿を消した。



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