Ⅺ 女王の昔話 7. 王さまと半獣の血を引く王女 3
エーデルは一月後団体馬上試合に参加し、その足でスターチス王の元を訪ねた。スターチス王は天幕からにこやかに出迎えた。
「お久しぶりです、エーデル様」
「ごきげんよう、スターチス王」
エーデルとスターチス王は辺りを歩いた。夜のことだった。
「団体馬上試合でのご活躍、お疲れ様でした」
「銀の甲冑姿では目立たなかったでしょう?」
エーデルは謙遜して言った。スターチス王は答えた。
「いいえ。とてもご立派に戦われておりました」
「いつか一緒の陣で戦いましょう、スターチス王」
「それは馬上試合で、ですね?」
「ええ、どうかしら?」
「分かりました。今度は馬上試合でご一緒しましょう」
「楽しみですね」
二人は歩いていると川辺に差し掛かった。エーデルは足を止めて言った。
「私の気持ちを申しましょう。しばらく時々会うことにしませんか? 西大陸には様々な町があります。待ち合わせをして、一緒に語らうのが楽しくていいかと」
スターチス王は肯った。
「分かりました。そうしましょう」
スターチス王は懐から銀色の髪飾りを大切そうに取り出して、エーデルに捧げた。
「これは私の国のそばにあるエルシウェルドという町のエルフの職人に頼んで作ってもらったエーデルワイスの模様のある銀細工の髪飾りです。これは私の気持ちです、エーデル様」
エーデルは少し戸惑った。お友達から始めようと伝えたばかりで贈り物を受け取るのは礼儀正しいだろうか、と少しばかり悩んだ。しかしスターチス王の好意は軽やかにエーデルの心を解いた。
「私の気持ちが重かったら、眺めて下さるだけで結構です。髪飾りを付けて下さることを私の楽しみにしましょう」
「ええ、分かりました」
エーデルは贈り物を受け取った。
「最初に会う町は、私が決めてもいいですか?」
スターチス王は尋ねた。
「私はアラネスの町でエーデル様とご縁が繋がるように二重川に願掛けをしました。今度は願解きに行きたいのですが、エーデル様がご一緒だと嬉しいです」
エーデルは頷いた。
「ええ、いいでしょう。私もお礼を二重川に伝えましょう」
その後もエーデルとスターチス王は月に一度程度町で会い、語り合った。劇場の町で演劇を鑑賞したり、巨石文明の残る古代遺跡を訪ったりした。馬上試合も一緒に参加した。そこでエーデルが観察した限りでは、スターチス王は無茶な戦いはせず、しかし相手に敬意を持った戦い方をしていた。
いつの間にかエーデルは、一緒の陣で戦うことが頼もしく思い、また楽しく感じるようになっていた。会場に到着すると、スターチス王を目で探し、見つけるとほっとした。馬上試合が終わった後の夜は、二人で会い時間を重ねた。エーデルは馬上試合の時、贈り物の髪飾りで髪を飾った。