190/259
Ⅺ 女王の昔話 3. 足止め 1
フローは赤の城の客室で旅支度をしていた。忘れ物がないようにフローは注意した。もうこの城には戻ることがないからだった。部屋を去ろうとした時、女王アキレスが部屋に入って来た。
「シーフのクレア・フローよ、突然出ていくのだな」
「勘が良いですね、女王陛下」
フローはしたたかな眼で相手の出方を探った。赤の王城にいる者達は、フローに白の王城へ再度チェックを掛けることを密かに望んでいた。しかしフローのこれからの行先は違った。その意味する所をこの目の前の女王は知っているようだった。
「私は反対しない」
アキレスは言った。フローはアキレスがゲームの有利な運営とプレイヤー個人の考えの間で悩んでいることを感じた。
「タージェル遺跡では白のルーク、ブリックリヒトがクロスを失った。不正で得た分のクロスを昇格したクイーンで失うのは仕方がない。同郷の者との友情も大切であろう。良い旅を、フロー!」
アキレスは祝福の言葉を贈った。フローは我が意を得たり、と笑い、すっと消えた。