Ⅺ 女王の昔話 1. 再会 3
スターチス王はにこりと微笑んだ。王の間でのことであった。
「たまには王城にも顔を見せて下さいとロッドに伝えて下さい、ラベル」
ラベルは王から伝言を承った。このようなロッドへの伝言はよく王から頼まれた。
「はい、かしこまりました」
ラベルはそれからロッドの放浪先を探し、伝書鳩でその旨を伝えた。ロッドとラベルが十八才の時だった。ロッドは旅先で伝書鳩を受け取り、王城へ帰還した。
「王よ、ご無沙汰しておりました」
「お久しぶりですね、ロッド」
ロッドは片膝ついて王に挨拶した。王はにこやかに答えた。
「騎士叙任の件ですが、私は実はまだ放浪したいと思っております」
ロッドは最初に心の内を伝えた。王は鷹揚に笑った。
「ええ、そうですね。ロッドならそう言うと思っていました。私はロッドがいいと思うまで待ちましょう」
「ありがとうございます」
ロッドは頭を下げた。
「白い盾で戦う方がロッドらしいのでしょう。でも、ロッドがスターチス王家の騎士になっても、私はロッドの自由を縛ろうとは思っていません。それに無理でしょう?」
ロッドはスターチス王を見て苦笑した。
「私は少し顔を見たいと思って喚びました。久しぶりに冒険譚を聞かせて下さい、ロッド」
「かしこまりました」
昼食の時間だった。王と騎士は大広間へ行き、食事を共にした。王は騎士の旅の話をゆっくり聞いていた。
「旅の話をありがとう」
「では私はまた旅に出たいと思います」
ロッドは席から立ち上がった。
「たまにはまた顔を見せて下さい、ロッド。風の知らせで活躍の話を耳にするのも良いのですが、直接話を聞くのも楽しみにしています」
「承知しました」
スターチス王は重ねて言った。
「昔から言っていますが、この城はあなたの家だと思って気兼ねなく来て下さい。そして騎士の叙任に関係なく顔を見せて下さい。それとも何か騎士に叙任されて困ることがありますか?」
「ただの私の性分です、王よ。私の王はスターチス王だけです」
ロッドは爽やかに答えた。スターチス王はにっこり笑った。
「では私の国がチェスを行う時は、ロッドはナイトになってもらえますか?」
「分かりました、王よ。その時はスターチス王家の騎士として参加します」
「ありがとう、ロッド」
騎士と王は約束した。
「お話ありがとうございます。ラベルさん」
プロミーは礼を言った。
「いいえ。お役に立てれば良かったです」
ラベルは爽やかに微笑んだ。プロミーは思った。このラベンダー色の瞳が優しい騎士は、ロッドのことを見守ってきたのだと。その思いは深く、熱い。
「ラベルさんのその気持ちも、ロッド様は大切にされていると思います」
「ありがとうございます、プロミーさん」
騎士は笑った。




