ⅹ 星送りと花送り 4. ジャスミンのティーパーティ 4
クオがじりじりしてきた時、やっと主催者が待っていた三人目の客が現れた。ジャスミンは立ち上がり再び参加者リストを懐から取り出して、空色の大きな瞳でじっくりそれを見据えながら新客を迎え入れた。
「ようこそいらっしゃいました。えぇと“特徴:緑の三角帽子、いつもそばに何かしらの生き物がいる”。たぶん、リア・クレメンスさんですね?」
「初めまして、ジャスミン・ルフェさん。お久しぶりです、クオさんにプロミーさん」
リアは緑の三角帽子を脱いで、ジャスミンにぺこりとおじぎをした。
「で、リアはどうしてここに来ることになった?」
クオはまた拍子抜けする答えが返ってくるのではとはらはらしながら、プロミーの隣に座るリアに尋ねた。リアは肩をすくめて眉をひそめて見せた。その肩に乗る青い鳥が、心なしか悄然としているように見えた。
「お茶会の始まる三時を過ぎた時、もう喚ばれないとすっかり気を抜いてしまったんです」
リアの話はクオの時の失敗と似たり寄ったりであった。リアもお茶会には出席しないように木の葉には気を付けていた。が、その開始時刻が過ぎた時、何とはなしに青い鳥サイトが肩から離れ、山道沿いの高い木に生っている実をついばみに飛びたった。いつもの日課のようなものだった。そこで気付かぬうちに青い羽の中に緑の小さな葉を連れて、リアの肩に帰ってきてしまった。それからあとはクオと同じことが起こったという次第だった。
リアと共に来た黄赤色の鹿が、謎の生物とプロミーの小鹿の仲間入りをしていた。鹿の角ではもう一羽の青い鳥がこくりこくりとうたたねしていた。ほほえましい風景である。
「そうだリア」
クオは、陽だまりの中で遊ぶその生き物たちを遠目で眺めながら、新しい客が六十四種類のモンスターと契約している召喚士であることを思い出して、ふっと尋ねた。
「あの“歩くにんじん”は何者だと思う?」
しかし召喚士は首を横に振ってきっぱりと返答した。
「わかりません。見たこともない種類の生物です」
クオは何だかあの生物の正体が永遠に判らないような気がした。
「でも、魔力を持っているようですね」
「やはりそうか」
クオは静かに頷いた。謎の生き物に目を惹かれていたのも、そのためだった。クオは奇妙な茶会の中で、仲間を得たような気分になった。