ⅹ 星送りと花送り 3. 職人の手 1
「へぇい! いらっしゃい! そこの旅人さんたち! ここにあるのは、青年王時代の百五十の騎士たちの一人、危難の席に座ったかの有名なガラハド卿の十字の盾だぞい! この盾の魔法は今も現役! 今なら一割引で売っちゃうよ! どうだいどうだい買った買ったぁ!」
ここ骨董武具の町ティルスは今日も武器商で賑やかだった。町は西大陸を問わず全大陸から剣や槍など様々な武器が集まり、古物収集家から自分に合う武器を求める強者の騎士まで多くの人を引き寄せた。繁盛している店も多く、そういった店は宣伝人を雇った。所々で宣伝を家業とする者が引き締まった腕や首元などに店の宣伝文句を躍らせていた。
人通りの多い町中で、二人連れの旅人が盾売りの露店の前に立ち止まった。一人は大きな琵琶のような楽器を肩から掛け、吟遊詩人風の装いで、まだ少年という年頃だった。その隣には白馬と寄り添う黒髪の騎士の青年がいた。少年は静かに楽器を爪弾いた。その音色は人混みの中でかき消されるほどの小さな音だった。いくらか時間が経つと、異変が起こった。店の前で誰かが歌い出した声がした。それは店で掲げられた“ガラハド卿の十字の盾”からだった。
「わたしゃ~おととーい生まれーたばーかりさ。
つよーく突かれーりゃ、真ん中で割ーれるさ。
わたしゃーたたかーい嫌いな盾だーよ」
店主は突然のことに困った顔をした。周りにいた客たちは皆一斉に「まがい物かよ!」と非難した。店主は慌ててそのまがい物の盾を店の裏側にしまった。その様子を見届けると、吟遊詩人風の少年パズルと騎士の青年エンドはその場を後にした。




