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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅸ-ii 白の王さま
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Ⅸ-ii 白の王さま (8月9日~8月12日) 3. クイーンとルークと仲間たち 5

 十五時三十分が過ぎた頃、あさぎの携帯端末でメッセージを知らせる通知音が鳴った。


『こんにちは。私は福祉家政学科四年の甲府凛といいます。あちらでの相方はポーンの魔術師クオ・ブレインです。

 掲示板を読みました。その脅迫する人がもし福祉家政学部の人ならば、杜田先生に訴えてはどうでしょうか。私は杜田先生のゼミ生なので、いつでも先生と連絡が取れるし、“The Chess”の説明もできます。杜田先生は福祉家政学部の一年生の担任ですが、この学部全体の責任者のような立ち位置です。厳しい先生なので、モラルのない学生を説き伏せることができると思います。

 今、大図書館にいます。もし宜しかったら、この件を詳しく教えて頂けないでしょうか』


 あさぎは新しいメッセージを真に見せると、真に「どうする?」と聞いた。


「うーん、会って話せるならそれがいいですね」


 真は明快に一言答えた。いい話である。あさぎは素早く返信した。


『お返事どうもありがとうございます。今、私たちは大図書館二階中央“白ねこ広場”におります。こちらには他にも投稿を見て下さった白の駒のクロスの読者さんたちが集まっております。できたらお話をお聞きしたいので、こちらでお会いしませんか?』


 返信はすぐに来た。


『分かりました。私はアルバイトが終わった所ですが、今からそちらに伺います』


「来てくれるみたいだよ、真さん」


 あさぎは真に携帯端末を見せた。真は頷いた。


 それから数分後、白ねこ広場にコンコンッと静かにノックする音が響いた。雲が「どうぞー」と答えた。扉が静かに開き、黒縁眼鏡のきりっとした人が現れた。


「こちらは『The Chess』の会合で間違いありませんか?」


 黒縁眼鏡の女性は部屋の中を見回し、上座の方に向かって礼儀正しく凜とした声で尋ねた。訪問者はタイトスカートがよく似合う、女性らしい装いだった。霜は新しい客をのんびりとした声で答えた。


「はい、新しい方ですねー」


「初めまして。私は甲府凛です。伊藤あさぎさんはどなたですか?」


 あさぎは呼ばれて立ち上がり、凛を迎えた。そして秀の隣の席を薦めた。改めてその場に集まった人々の自己紹介を軽く済ませると、あさぎは凛にあったことを詳しく話した。


 凛は黒縁眼鏡を持ち上げて、丁寧に説明した。きれいな小顔が、先輩として大人びた雰囲気をまとっているように真は感じた。


「佐々木燎は福祉家政学部の食物営養学科の一年生なら、杜田先生が丁度学年担任ですね。ではこれから杜田先生に連絡して、明日会って説明できるよう準備します。杜田先生は文学部の方には馴染がないと思いますが、福祉家政学部で一番厳しい先生だと有名です。“The Chess”の件ですが、おそらく大学内のことは杜田先生は承知していると思います。

 また明日上手くことが進んだら、伊藤あさぎさんにご連絡します」


 康は凛の提案に強く賛同した。


「杜田先生ですか!? あの厳しい先生が相手ならきつく絞ってくれそう。いいんじゃない、早瀬さん?」


「それでいい? 真さん」


 あさぎが立ち止まって確認するように真に尋ねた。


「はい。ありがとうございます、甲府さん」


 真は親切な協力者にお礼を言った。琥珀があさぎを見て一言頼んだ。


「明日はどうなったか、交流ページで教えて頂けますか? 私たちは大図書館三階中央の“円卓広場”にいることが多いです」


 あさぎは「了解致しました!」と講釈師の口調で答えた。


「明日も私と雲と霜と真さんは十一時にこの“白ねこ広場”に集まりますので、お時間のある方はまた明日もどうぞ」


 それから真は妹の生穂に、福祉家政学科四年の凛が助けてくれることをメールで知らせた。


 その後掲示板の投稿は無く、会合は十七時に解散した。



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