Ⅸ-ii 白の王さま (8月9日~8月12日) 3. クイーンとルークと仲間たち 1
翌日の十二時に真は大図書館二階中央総合案内でお昼休憩に入った朝日と会うと、階段で三階へ上り視聴覚コーナーでほむらと合流した。三人はそこから少し歩き、同じ階の海側に面した屋外ウッドデッキテラスでお弁当を広げた。今は晴れており、水色と青が水平線で溶け合っていた。
真は朝日とほむらに生穂が暴言を受けていたメッセージ画像を見せた。朝日は赤の会合を思い出し、真に説明した。
「あの時、空気がおかしかったんだよね、ほむら。王様を見つけるためには何をしてもいいっていう風な感じを、その場の皆が否定しないでね。ほむらは何かおかしいと気付いて、『私は降りる』ってはっきり言って場の空気をただそうとしたんだけど、保育学科一年生の井富ちこさんとその佐々木燎が突っ走って危うい感じだったんだよ」
「しかしこんなことをやっていたなんて酷いな」
ほむらがメッセージ画面を見て眉間にしわを寄せた。
「佐々木燎ってどんな人だったの?」
真が尋ねた。朝日は少しづつ思い出しながら答えた。
「確か、夏休みは一階フードコートでアルバイトをしていると自己紹介していたはずだよ、真。今から行ってもお昼だから客席も混んでいるし、お店の奥の方で手伝っていそうだから見つけられないだろうなぁ」
「私が明日休んで、どの人だったか教えるよ、真。休みを交代して貰える友達がいるから、見つかるまで付き合おう」
険しい顔をしたほむらが協力を申し出た。真はほむらに礼を言った。
「ありがとう、ほむら。じゃあ、明日九時四十五分に一階の噴水広場で待ち合わせしよう。フードコートは十時に開くんだよね、確か。その時、私の先輩も一緒になるけどいいかな? 白のクイーンなんだけど。私一人で動くよりも頼りになる先輩なんだよね」
「了解、真」
ほむらは短く頷いた。悪意に怒るその顔が夢の中の女騎士に似ていた。
「赤の王様の方はどうなっているんだろう。その会合でも欠席だったんだ、真」
朝日の問いに真は首を横に振った。
「私も分からないんだ」
八月初めの集中講義が終わった後、特に康とオフ会の準備はしていなかった。白の駒のクロスの読者と交流することはあっても、オフ会までには至っていなかった。
「そういえば、夏休みに入ってからまかには会った?」
朝日は真に尋ねた。
「ううん、今度まかの家に遊びに行こうと思っていた所だよ。まかは、夏休みは猫の保護活動のボランティアをやってるんだって。少し日焼けして困るってメールで言ってたよ」
「そうなんだ。去年もやってたよね。まからしい」
スポーツドリンクで水分を補給しながら朝日は言い、真はまかから送られた野良猫の写真を朝日とほむらに見せた。猫を抱き上げたまかが写っていた。