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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅸ ミドルゲーム
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Ⅸ ミドルゲーム 2. 独りのアリス㊥ 3

 道を歩いていると、大きな空間の前に辿り着いた。天井には土でできたつららがびっしりと垂れ下がっていた。奥には騎士の甲冑がずらりと並んでいた。プロミーが注意を促した。


「ここは危険な広間です。甲冑は中身が無いのですが侵入者を襲ってきます。広間の中に入ると、上からつららが落ちて頭をぶつけます。つららは地面に落ちたら土ぼこりが舞い、視界を遮ります」


「それでは、私が上方に防御壁を創るから、ロッドとプロミーは甲冑の相手をして、離れないようにして前へ進もう」


「了解した」


 ロッドが答えると、三人は大きな広間に足を踏み入れた。土のつららが落ちてきた。ブリックリヒトは杖を前へ掲げ、頭の上に透明な防御壁を創り上げた。間髪入れず、奥にいた空の甲冑が剣でブリックリヒトに襲い掛かって来た。ロッドはすっと前へ出て、甲冑の攻撃を受け止め、頭部を剣で一閃した。次の手を待つ間もなく、新たな空の甲冑がプロミーに襲い掛かった。プロミーは剣の呪文を唱えた。剣が白い光に包まれ、甲冑が一時止まった所を足の付け根の金具を切り裂き、敵を沈めた。ロッドとプロミーは甲冑の相手をしながら、三人はじりじりと前へ進んで行った。一度負けた甲冑は、時間が経つと再び元の姿に再生した。


 広間の終わりには、多くの甲冑群がその先の道を守っていた。ブリックリヒトは、杖を大きく振り、防御壁の上に溜まった土をそのまま甲冑群目掛けて吹き飛ばした。土の雪崩は甲冑群を倒した。三人はその隙に急いでその場を出た。


「このような部屋が、これからも所々あります」


 プロミーは広間から出ると、二人に言った。


「大丈夫だ、剣で相手が出来るなら、困ることはないだろう」


「あぁ、やれやれ、埃が口に入ったよ」


 ブリックリヒトがローブの埃を払いながら呟いた。



 その後も同じような攻撃が仕掛けられた部屋を渡りながら、三人は前へ進んで行った。


「ここで地図は終わりです」


 攻撃魔法のある広間から遠ざかった場所で、プロミーは立ち止まり、二人を見た。再び行き止まりだった。


「多分、ここにも魔力で通じる入り口があるのだと思います。その後は瞬間移動をする場所に繋がっていると予想できます」


 遺跡に入ってから時間が経ち、外では丁度日が暮れた頃合いだった。


「では、今日はここで休むとするか」


 ロッドが提案した。二人は頷き同意した。三人は行き止まりの壁から少し離れた所に座り、足を休めた。行き止まりの壁は、おそらくどこかに魔術が施されており、間違って壁が抜けてしまったらパーティがちりぢりになってしまうので、近寄らないようにした。


 冒険者たちはそれぞれ食事を摂り、その後、ロッドとプロミーはおのおの剣を磨き、ブリックリヒトは百科事典でアルストロメリア王の項を読んでいた。ブリックリヒトの手元には“喋る花の魔力回復茶”というラベルの貼られた小瓶があり、時折それを飲んでいた。西大陸には、花が喋る花畑がある。土に魔力が蓄えられた花畑で、その花の葉を茶葉として煎じて飲むと、魔力の回復に役立つ。


 プロミーは剣を置くと鞄から毛布を取り出し、眠る準備をした。


「お先にお休みします、ロッド様」


 従者は主人に丁寧に挨拶すると、壁にもたれ掛りながら眼を閉じた。


 眠りに就いたプロミーは、しばらくすると姿が透き通り、そのまま消えてしまった。


「話には聞いていたけど、本当に消えてしまうんだね」


 プロミーの様子を見ていたブリックリヒトがロッドに言った。


「王は日中プロミーの姿で活動し、夜に休まれるのだと思う」


 ロッドは静かに答えた。ブリックリヒトは少し意地の悪い質問をした。


「チェスが終わるとプロミーとも今のように自由に会えなくなる、という先のことを考えたりしない?」


「私はスターチス王に仕える身だから、王のお考えならばそれでいいと思う」


 答えた者の心の内を探るようブリックリヒトはロッドを見つめた。が、その眼差しは爽やかな騎士の心しか見せず、その奥まで読み解かせなかった。


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