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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅸ ミドルゲーム
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Ⅸ ミドルゲーム 2. 独りのアリス㊤ 4

 プロミーとロッドが酒場に着くと、メルローズとガーネットがすでに席を取っていた。後から来た者達は、先に来た者達の向かい側に座った。猫耳の給仕が忙しく店の中を歩き回っていた。


 店ではすでに客たちはチェスの話で持ち切りだった。


「ドロップの町で赤と白のポーン同士が戦ったってよ。白の方が負けて足止めを食らったそうだ」


「あの宣伝人か? 強いじゃねぇか。もっと戦いの中身を聞かせろよ……」


「ここの酒場の煮込み料理はおいしいんですよ」


 プロミーが話し声を聞いていると、ガーネットがお品書きをロッドとプロミー側に見せ、料理名を指で示した。


「では、それにしよう」


「私もそれにします」


 ロッドはプロミーに目を合わせて、店の中の会話から意識を戻す合図をした。この席で敵対的な話を持ち込まない、と二人は了解しあった。四人が注文すると、メルローズが始めに話を切り出した。


「団体馬上試合から私たちは一旦王城へ帰還した。ウェイも王城へ戻っていて、そのまま王城にいる。チェスの御前会議には出席できないが、チェスの進行はビショップのアルペジオから聞いて押さえているようだ。アルペジオは元々騎士の家の育ちで、私たち赤の城の騎士とも近しい仲間である。


 ポーンにフーガという魔剣使いがいたが、彼は王城に戻っていない。どこかで旅をしているのだろう。


 今回遺跡で“試合”をすることとなったが、私が言うのもなんだが油断しないでくれ、ロッド。クエストの仲間が増えたが、騎士同士の試合のように割り切った戦いにはならないように感じる……」


 メルローズは何か良くない予感がある、という風に眉をひそめた。ロッドは少し考えて言った。


「慎重になろう。しかし勝負が決まったら、私はそれに従おうと思う」


 そこで四人の席に料理が運ばれた。鉢に盛られたのはキジ肉と野菜の煮込み料理だった。ガーネットが勧めるだけあって、とても美味しい、とプロミーは感じた。


 ロッドは食べながら、プロミーがソールズに来る前に会った森のアリスの話をした。


「森のアリスの伝承なら、私たちもこの町で情報集めをした時に聞いている」


 メルローズが頷いた。


「古代の王は思い残すことがあって、アリスをこの世に残したと」


「もしかしたら遺跡探索の中で、森のアリスが現れるかも知れない。プロミーの話では彼女は姿を消して、冒険者の後を付いてくる、と言っていたそうだ」


 ロッドが情報がフェアになるよう知っていることを伝えた。メルローズは少し悩みながら、自分の持つ情報を話した。


「私も一つ伝えておきたいことがある。私は赤の王城でビショップのブラックベリが白の駒のクロスを隠すよう部下に指示をしている所を見た。どこに隠したかは話が聞けなかったが、私は家の者を使ってブラックベリの行動に注意を払っている。いつかクロスの隠し場所が分かれば、白の者に伝えようと思っている」


「その事件は私も知っている。私の方から白の闇のビショップマーブルにその件を伝えておこう」


「それでは明日はお互い頑張ろう、ロッドにプロミー」


 皆が食事を終えて、メルローズは切り上げの挨拶をした。その言葉に他意は無く、温かい励ましだった。


「この後暇よね、プロミー?」


 ガーネットがプロミーを見た。何か目配せのような動きだった。プロミーが戸惑いながら短く「はい」と答えると、ガーネットは次の言葉を放った。


「それならプロミーの部屋に遊びに行ってもいいでしょ」


 その強い言葉は有無を言わせなかった。


「はい、大丈夫です……」


 プロミーはガーネットの何か話したがっている様子を見て、小声で答えた。


「それじゃ、今日はプロミーと夜中まで話すわよ!」


「あまりプロミーを困らせるのではないぞ」


 勢いづくガーネットに、メルローズが一言やんわり嗜めた。


「大丈夫ですよ、メルローズ様! 従者同士にしか分からない話とかがあるんですから」


 ガーネットはプロミーの手を引いて、酒場から退散した。ロッドとメルローズは、それぞれの部屋へ戻った。


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