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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅷ-ii ゼミ
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Ⅷ-ii ゼミ (8月8日、8月16日) 1. ゼミ 1

 橙色の空が少しづつ紫色になる所だった。夏の夕暮れをそよぐ風は昼の暖かさがまだ残っていた。大図書館三階西側のウッドデッキテラスで、ハープとフルートとギターとヴォーカルで小さな演奏会が催されていた。


 そこに集まった観客の市民たちは、本を読んだり、携帯端末で気の置けない友人と文字で会話をしたり、お気に入りの飲み物を手元に置きながらめいめい一日の終わりの時間を愉しんでいた。


 奏者たちはその場に集まった観客たちの憩いを邪魔することなく、明るく楽器を奏で歌を歌っていた。この演奏会は八月一日よりこの海の見える見晴らしのいいテラスで、日が暮れる時間に一日二、三曲演奏を行っていた。


 二曲目が終わり、今日最後の三曲目が始まった。曲名は『モリエンド・カフェ』。ギターの女性とハープの女性が異国情緒あふれる旋律を陽気に奏でた。ヴォーカルの女性がスペイン語で歌った。耳に馴染んだ有名曲に、観客の中から拍子を取る拍手が始まった。ハープ弾きは愛らしい笑顔で器用に弦の上に指を躍らせて音楽を愉しんだ。


 演奏が終わるとその場にいた人たちから拍手が起こった。奏者たちは辺りを見回しながら笑顔で返した。


 場が静まると、いつものように片付けに入った。ギターの女性は、思い出したように軽くハープ奏者の女性に訊いた。


「そういえば直、今日は“The Chess”の予定があるんじゃなかった? 赤の会合だっけ?」


 女性は顔立ちの整った魅力的な笑顔で首を横に振った。


「それは行かなかいことにしたよ。田舎の実家に戻るという口実で」


 フルートを片付けていた女性がきょとんとして聞いた。


「えぇ、そうなんだ。いいの?」


 直はにっこりと縦に頷いた。その笑顔はおっとりしていてとても魅惑的だった。


「うん。ネットを使って大勢がやっきになって一人の人を探すのって、怖いから止めておいた」


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