Ⅶ-ii 赤の城(8月8日) 4. 赤の城 3
「では、この中で紅雲楼の中の“王様探しをする”という項目をオンにする人はどれくらいですか? 私はあんまりそこまで“The Chess”には関わりたくないんだけど……」
蛍が話を変え、小さく片手をあげてその場の人たちに尋ねた。ちこが最初に答えた。
「私は初日からオンにしているわ! だって楽しそうだもの。私は一日中大図書館を回っていることが多いから、誰か見つけられるかも知れないからね。燎もだよね?」
ちこに話を振られ、友人の燎が相槌を打った。
「ええ、王様も気になりますしね」
その短い回答は何か含みがあるような音色だった。
ほむらが少し強い声音で言った。
「私は大図書館内で仕事をしているからずっとオフにしている。何か待ち伏せをしているようで気が乗らない」
ほむらの友人の朝日も続いた。
「私も同じです」
「オンにすれば、仕事中でも他の読者を見つけられるのに」
ちこが小声で呟いた。
ドアのそばに座っていた要と小春が互いに小声で言葉を交わし合った。
「要さんはどうしてます?」
「私はオンにしていますよ、人と会うことは無かったですが、少し楽しみなので。小春さんはどうですか?」
「私はサークルの邪魔にならないようにオフにしております」
顎に手を当ててじっと話を聞いていた早夜芽が発言した。
「私はとりあえずオフにしていました。けど、皆さんの様子を見てこれからオンにしようかと思います」
れいしが落ち着いて蛍の方を見た。
「私はオフにしております。これも強制ではないので、ご自由にしたら宜しいでしょう」
「私はお話会の時以外はオンにしていますよ。出会いがあったら面白いじゃないですかぁ。温ちゃんは?」
冴が答えて、最後に温に話を振った。
「私はオフ」
温は首を振って簡潔に答えた。
「オレも普段はオフにしてるなぁ。外でバイトしているからあんまり大図書館に来ることないし」
滝が飄々と後を継いだ。
夾子が華やかな声で宣言し、笙子も追従した。
「それでは王様探しをしたい人はオンにしているってことですわね。わたくしも手伝わせて頂きますわ!」
「お姉様がオンなら僕も王様探しに参加します」
「でも、ここに参加されなかった赤の王さまって、誰なんでしょう……」
ドア際の席で、話がまとまりかけている様子を眺めながら、小春はそっと呟いた。