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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅶ-ii 赤の城
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Ⅶ-ii 赤の城(8月8日) 4. 赤の城 2

「んで、これからどうする? れーし?」


 夕暮れの海岸を見渡せる大窓に寄りかかっていた滝が聞いた。


「どうやって王様を探すか……ですわね?」


 夾子が滝の言葉を引き継いだ。早夜芽が淡々と解説した。


「この大学の学生数は1800人、附属高校の生徒数は840人、合計で2,680人。クロスは駒のクロスが32個、観戦者用クロスが151個、計183個。“The Chess”を借りる資格のある人が二種類のどちらかのクロスを借りる確率は6.83%、駒のクロスを借りる確率は1.19%。


 “The Chess”を借りる可能性の高い人は、図書館で働いている人、一部のサークルの人など。


 五月一日の予約開始の告知を見つけて、初めて借りようとする人は多くないと見て差し支えないでしょう。高校生の間では、情報を発信する中心となる団体がないため、私たちよりは知られていないでしょう、きっと」


「これは推理ですね」


 早夜芽の淡々とした分析を黙して聞いていた要が、一言呟いた。


「王様を探すのって簡単じゃない?」


 燎が呟くように言った。


「交流サイトがあるんだから、相手に直接聞けばいいんじゃないですか?」


 燎の考えを冴が諭すように遮った。


「でも“The Chess”が始まって以来、白の王様は交流サイトに浮上していないんですよ」


「私は燎に賛成だわ。毎日尋ねれば、何か答えが返ってくるかも知れないじゃない?」


 ちこが燎を援護した。ほむらはきっぱり断った。


「私は降りる。相手が望まないのに一方的に文字で押し掛けるのはルール違反だと思う」


 その隣に座っていた友人の朝日も重ねて言った。


「皆さん、私もそれは合わないのでそのようなやり方には参加しないことにします」


 夾子が妖艶な声で一同に向けて纏めるように言った。言葉に威圧感があった。


「では、やりたい人はやるっていうことで宜しいでしょう?」


「僕はお姉さまに賛成です」


 笙子が追随するように夾子に同意した。


「さすが霄草姉妹、強え」


 温が小声で毒を吐いた。滝が軽く言葉を流した。


「オレは様子見かな。王様が誰でも“The Chess”の面白さは変わらないし。でも行動は自由ってことでいいんじゃない?」


「では、王様探しは個人の自由ということでいいのでしょうか?」


 早夜芽が冷静な目で辺りを眺めながら、確認するように問うた。すぐに答える者がいなかった。


「……そうみたいですねぇ」


 冴が沈黙から短い言葉で場を纏めた。れいしは頷き、それを黙認した。


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