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The Chess  作者: 今日のジャム
Ⅶ-ii 赤の城
102/259

Ⅶ-ii 赤の城(8月8日) 1. 王城会議

007 8/8 6:00

<From> 私立つつじ女子大学図書館

<Title> The Chess赤の城


 赤い月が漆黒の闇夜に浮かぶ頃、金の髪の女王アキレスは、明々と松明で照らされた居城の回廊を、王の間に向かって足早に歩いていた。夜が来ると、王が目覚める。夕と夜を分かつ黄昏時になると、王城にいる赤の者たちは王の間に集う。


 王の間ではすでに王城にいるプレイヤーたちが顔を揃えていた。ルークの王城守護魔術師アフェランドラとスクアローサの姉妹。ビショップの黒いローブの王付き僧侶ブラックベリと赤いローブの女王付き僧侶アルペジオ。ポーンの宣伝人ジーク、運び屋ルーマ、暗殺者ジャスミン。アキレスは皆の顔を確認すると、王の眠る寝台へと足を寄せた。デンファーレ王は眠っていた。


 そこへ甲冑姿の女騎士が従者の少女を連れて、アキレスに遅れて王の間に入ってきた。


「ただ今戻りました、女王陛下」


 女騎士メルローズはアキレスに礼をすると寝台の枕元の人の群れの中に入って行った。


「団体馬上試合はご苦労であった、メルローズ卿。グリンスリー卿も王城に戻っている」


 アキレスが旅から戻った騎士に労いの言葉を放った。アキレスはふと顔を寝台に向けると、眠る者の体が動いたようだった。


 デンファーレ王が目覚めた。アキレスは王が起き上がるのをそばで支えて助けた。


「王よ、お目覚めになられましたか」


 ルークのアフェランドラが最初に挨拶をした。デンファーレ王は寝台のそばに据えられた棚に置いてあった王冠をアキレスから手渡され、それを頭に載せた。僧侶ブラックベリはフードを目深に被ったまま、王の御前で報告した。


「今日は白の王城では騎士ロッドとアリスのプロミーが帰還し、白の者が揃いスターチス王の御前で作戦会議をしていた、と報告を受けております。彼らのうち攻め手になる者は一人を除き明日旅立つ、ということでございます」


 デンファーレ王はゆったりと頷き、そして言った。


「白の者は四手に分かれて王都スウェルトに向かってくる。それぞれの道に足止めの役を引き受ける者はいるか?」


 ポーンのジークが前に出た。そして控えめに発言した。


「私が行きましょう。旅で試合をするのが私のオーナーとの契約ですから。明日の朝、立とうと考えております」


「それでは、明日でお別れですね」


 ジークの横に立っていた運び屋の少女ルーマが小さな声で名残惜しそうに言った。


「ルーマさんは小竜に乗って白の城まで行かれるのですよね」


「はい、私の特技ではそれが一番活躍できるかと思いますので」


 その横にいた騎士メルローズも一歩前へ出た。


「私も旅立ちましょう、王よ。チェスの間、ロッドと戦いを交わす約束があるのです」


 デンファーレ王が攻め手に名乗りを上げた者たちを励ました。


「これは頼もしいことだ、宣伝人ジークにメルローズ卿、それに運び屋ルーマ」


 アキレスが手を打った。


「旅に出ているポーンのピコットとオリーブにも伝令を送るよう手配をした方がいいだろう」


 アキレスの言葉に赤い僧服の僧侶アルペジオが応えた。


「仰せのままに」


「明後日は白の城攻めだ。白の守り手がどう出るか」


 デンファーレ王は不敵に笑んだ。



 れいしがベッドの中で新着メールが示すリンク先にある“The Chess”の新しい物語を読み終わった頃、新しいメールが届いた。


032 8/8 6:05

<From> 温

<Title> Re:

1. e4“e5”

 王道でしょ。


by 再参加の赤のポーン


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