Ⅶ 白の城 4. 作戦会議 2
その後ロッドとプロミーは僧侶ラルゴからそれぞれの客間を案内され、そこに荷を下ろした。それから二人は再び大広間へ戻った。大広間では夕食の支度が整えられている所だった。緑の三角帽子の召喚士リアが、壁際でヴァイオリンを奏でていた。その音楽をリュージェとガーラが耳を澄ませて聞いていた。
夕食の頃になると、ポーンたちが集まった。そして食事が終わった後は、皆その場で雑談していた。
魔術師クオがガーラに説法するように熱く語っていた。
「リン・アーデンは偉大な魔術師だった。この城の書庫にも多くの本があったので、ここにいる間はできるだけ勉強していきたい。
かの魔術師は優しい人柄だったそうで、王に仕える前は旅の中で多くの人を助けたそうだ。穏やかな人柄で王にもたいそう好まれたらしい」
プロミーはふっと横を見た。話を聞いていたリアがくすりと笑ったように見えた。パズルがクオに言った。
「クオさん、この王城にいる間、魔術のいろはを教えて頂けませんか? 魔術は専門外ですが、後学のため参考にしたいです」
クオは肯った。
「俺も、魔法の話を聞きたい。俺が知ることは教えられるだけ教えよう」
大広間に銀色の甲冑の騎士が現れた。ロッドはそれに気付くと、新しい訪問者を喜んで出迎えた。プロミーは静かに付いて行った。
「ラベル!」
呼ばれた騎士は、爽やかな笑顔を返した。
「お迎えできなくてすみませんでした、ロッド」
ロッドは友人の言葉を気にせず、挨拶を返した。
「王城の守護を任せきってしまったな。ラベルがいるから私は自由に旅ができる。ありがとう」
「いいえ、あなたの気性は良く知っていますので。こちらがプロミーさんですね」
ラベルはプロミーに向き直って一つ頭を下げた。
「初めまして、プロミーさん。私はラベル・ボーストと申します」
プロミーは礼儀正しい騎士のラベンダー色の瞳を見つめ、自分も礼をした。
「ロッドさまからお話は伺っております……」
「私も王城であなたのことは伺っています。ロッドとの旅はお疲れ様です、プロミーさん」
ロッドは親友の言いように小さく苦笑いをした。プロミーは首を小さく横に振って少し強く言った。
「私はロッドさまが私を見つけて下さり良かったと思っております……」
「それでは、ここで立ち話をするより、あちらの長椅子に腰掛けて長い話をしよう、ラベル」
ラベルは了解し、ロッドとラベルは広間の片隅で近況報告を語り合った。
「マーブルはここには来ないのか?」
ラベルは肩をすくめた。
「彼は毎日夜も仕事をしているのです、ロッド」
いつの間にか広間には女王エーデルがいた。女王エーデルはリアと話をしていた。
「お城の書庫はご覧になりましたか、リア」
女王エーデルはまるで大事な客人と話すような笑顔でリアに話し掛けた。リアは三角帽子を外して答えた。
「はい。いつもありがとうございます、女王陛下。新しく書棚に置かれた本も拝見いたしました」
「今回も同じ仲間として戦って下さって礼を申します。この旅でお探しの方をきっと見つけられるでしょう」
「長い旅を続けて探すことしか僕にはできませんので……」
その後プロミーはロッドより先に一人客室へ戻り、明日の冒険に備えて就寝した。
「白の攻め手の人達の道はどうやって選んだんですか、レンさん?」
王の間ではラルゴが参謀の少年レンに質問した。レンは控えめな声で語った。
「ラルゴさんの情報を基に、赤のポーンの暗殺者ジャスミンさんの招待状でプロミーさんがエンドさんやパズルさん達と離れるように計算して決めました。地理的にはあっていると思います。この旅の道が白の攻め手の方々に良い条件となってくれたらいいのですが……」