やっとスタート地点に
「私の前世の記憶はこれです」
そう言って描き溜めしたネイルの絵を見せる。そしてネイリストと言うものがどう言ったものなのか?この世界でどんな役割を果たしそうなのか?プレゼン資料を持ち出し家族に説明する。そして何より私はこのネイリストとして働きたいという事、その思いを強く伝えた。
「うんうん、ミラ、実現するように頑張りましょう。母は応援するわ」
「もちろん僕も父としてできることはなんでもするよ」
「僕も僕も!めちゃくちゃ面白そうじゃん!」
皆が認めてくれる…ん?あれ?1人だけ言葉を発しないな。ま、まさか反対?プレゼン資料作り直した方がいいのかしら?!
「リュ、リュカお兄様は反対ですか…?」
家族の視線がリュカに集まる。
そして顔を上げるリュカ。
「いや、全く反対なんかしないよ。実現させるために何をすればいいのか考えていただけさ。お母様、今すぐ伯父様に連絡して。お父様このために予算がどれくらい割けるか計算してくれる?アシルお前はあとで相談があるから僕の部屋に来なさい。そしてミラ」
凄まじい速さでテキパキと指示をするリュカお兄様。さすがレニエ伯爵の頭脳。アシルお兄様だけなんか震えてるけど。
「は、はい」
「君は少し休みなさい。色々あって疲れただろう?もうなんの心配もいらないんだから」
そう言ってお兄様は優しい笑顔を向けてくれる。魔王かと思っていたが、きちんと優しいお兄様だったんだ。
「ミラお母様と一緒にお部屋に行きましょう。休息も必要よ?」
侍女に伯父様への言付けを頼んだお母様と私は部屋に向かう。
「…はい!」
なんだか色々ありすぎた1週間だったけどこれからが楽しみだ。
「おやすみ、ミラ」
久しぶりに母の温もりに触れながら眠る。
この時の私は安心しきっていた。胸のつかえがなくなり、全て解決したのだと。
まさかリュカお兄様がとんでもない考えをしていたことなどこの時の私は知るヨシも無かったのだ。
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