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アシルは恋を知る

俺とアクセルは街のはずれにあるクッキー屋へ向かった。


「てかなんでこんなところのクッキー屋に寄りたいの?」

そう俺はアクセルに問うと待ってましたと言わんばかりに話だす。

「ほら、今ミラ働き詰めだろ?この間から寝言で"シェ•ベルフルールに行きたい!"だの、"シェ•ベルフルールのクッキーを…"だの、"食べたいんですの〜!"と叫ぶものだからね。買ってってあげようかと」


あぁ〜…今ミラは仕事で缶詰め状態なのだ。少し前に近隣諸国の集まりがあった時にカメリア様のネイルを見たお偉いさんの夫人たちがこぞってミラにドレスと合わせたネイルチップが欲しいと頼み、あれよあれよとほぼ全ての夫人が頼んだんじゃねぇの?って数になって。


ここ2〜3ヶ月は工房に篭りっきり。いつもならアクセルの帰宅に合わせて出てくるのもそれも出てこれないくらい。


「あーそろそろ限界かもな…」

「だろ?」


などと言いながら俺たちはシェ•ベルフルールという名のクッキー屋に着いた。

「あれ…?」

お店に着くなり中から店員と思わしき人物がまさかの"close"の札を掛けようとしている。

「うわっまじかぁ…」

とせっかく着いたのにその札をみた俺は思わず大きな声を出してしまった。

「あっすみません…今日はもう…」


と俺の声を聞きこちらに振り向き言いかけた店員が俺の顔をみて驚いている。


「あっあの、もし人違いでしたらすみません。ミラ様の血縁者の方でしょうか…?」

「えっ妹を知っているの?」

「はい!ミラ様には本当にお世話になって…あっミラ様のご兄弟の方でしたか。そうしましたらこちらにどうぞ」



そう言って店員は俺たちを案内する。

「…全くミラは僕の知らないところで何やってるのかな」

うん、隣のイケメンは笑っているけどオーラが怖い。頑張れ妹よ…。


中にいたお客が帰った後、お店の中の端っこの席に案内される。

「で、ミラは君に何をしたの?」

とアクセルが話すので

「あっ、こちらミラの旦那。そんで俺はさっきも言ったんだけど、ミラの兄のアシルです」

と、慌てて話す。圧がこえーんだよアクセルさんよ。



「旦那様でしたか!すみません、髪の毛の色が違ったのですぐわからず…すみません」

と店員の女の子は頭を下げた。

そう、アクセルはここまで来るのに絡まれるのが嫌で髪の色も目の色も魔術を使って変えていたのだ。

「俺のことみたことあるの?」

「はい!ミラ様がいつもお写真を持ち歩かれていましたので、僭越ながら拝見させていただきました」

と言う途端にアクセルを纏う空気が薔薇色になった。わかりやすっ。


「で、ミラは一体何をしたの?」

と、俺が問うと店員の女の子がミラとの出会いを話し始めてくれた。


その店員の子、カロルと言うらしい。

カロルは4ヶ月前にこのクッキー屋をオープンしたものの閑古鳥が鳴いた状態が続いていた。場所的にも街外れ、でも味には絶対的な自信を持っていたからオープンしたものの、やはり認知度が低く…と、そんな時にミラが来店。あいつお菓子好きだから新店巡りとかよくするのよね。


「久しぶりのお客様で…嬉しくなったのと同時にミラ様にあろうことか不安を吐露してしまったんです。追い詰められていたんですね私。でもミラ様は親身になって話を聞いてくれて…」


うん、あいつ身分とか関係なく人に接するからなぁ。凄いよ。


「そしてミラ様の爪が目に入ったら……こんなに綺麗な物があるんだって思って、私も仕事やめてオシャレしたいですって言ったらなんとミラ様が、『じゃあクッキーにオシャレしちゃいましょうよ!』っておっしゃられて」


うん、言いそう。てかクッキーにオシャレってなんなん?


「そしてこちらの"アイシングクッキー"と言うものを教えてくださったんです!そしたらこれが大当たりで、ミラ様のおかげで大繁盛店になりました」

と、カロルは眩しい程の笑顔を見せる。



その瞬間だった。


俺の胸に何か刺さったのは。


ドキドキと動悸がする。心なしかカロルの周りだけキラキラしている様に見える。


なんだ?


なんだこれ?


今まで味わったことのない感情が心の中にある。

頭がぼーっとして、その後のカロルの話はよく覚えてない。



俺は気がついたらアクセルと家にいた。


「おかえりなさいっ!」

「ミラっ!!」


久しぶりに出迎えてくれた妹と熱いハグを交わすアクセル。


「……いいなぁ」

と、ボソッと呟くと2人が驚いた顔でこちらをみてきた。


「あっアクセル、聞きましたか?今まで完全スルーをかましてたアシルお兄様が羨ましいですって」

「あぁ、確かに聞いたぞ。アシルお前どうしたんだ?お店の途中からボーッとしてて」

「お店?」

「あぁ、ミラお土産だよ」

「まぁ!!シェ•ベルフルールのですか?嬉しいです〜!お店はどうでしたか?繁盛しておりましたか?」

「あぁ、かなりの繁盛店になっていたよ。本当は売切れだったんだけどミラの家族ってわかったら特別にこちらをいただいたんだ。彼女はずっとミラのことを待っていたみたいだよ」

「そうなんですね〜…彼女?」

「カロル、と言ったかな?ミラに凄く感謝していて、僕も鼻が高かったよ」

「あ、あぁ〜彼女は…」

とミラが言いかけたところでついに我慢出来なくなったアクセルに横抱きにされて『じゃ』と部屋へと戻って行った。


カロル。

その名前を聞くだけで胸がドキドキする。

見た目はミラと同じか少し下か?2つのおさげ髪で身長もそんなに高くない、手は細かったな。


あぁ思い出すだけでドキドキする。


彼女に会いたい。




こんな感情は初めてだ。



そして次の日から俺はシェ•ベルフルールに通い詰めるのだった。


すみません、まだ続きます!

お読みいただきありがとうございます!

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