ミラの浮気騒動〜後編〜
「あ……ミラ…」
と、俺は足が動かなかった。
するとミラが駆け寄ってきた。
「どうしてここに?今日はお仕事のはずじゃ…」
「…ミラは俺が仕事だったから今日を選んだのかい?」
「えっ」
俯いた顔からなんともドスの利いた声が出る。思わず俺はって言っちゃったし。
「ミラは…ミラはもう俺が嫌いなのか?」
なんとも情けない声が出る。
「アっアクセルさ…「ミラ、嫌なところがあるなら直すから。俺にダメなところがあるならきちんと言って。俺はミラしかいない。君が俺の世界から消えたら俺はもう生きていけないよ!」
とミラの両腕を掴み泣きそうな声でミラに話す。
そして2人の間に沈黙が…
「ぷっ…うっくくく」
流れず聞こえてきたのは
「あっははははははは!!我慢できない!これがあのアクセル様?ゔぐっわっ、笑いが止まらないうくくくくく」
と男からの盛大な笑い声だった。
は?何笑ってんだよ。お前のせいで…と言いかけたところで
「ちょ、ちょっとオリヴィエ!そんなに笑わないでよっ!」
「だって……あっはははははこれ笑わずになんかいられないよひーおかしい」
は?オリヴィエ?
「すみません、申し遅れました。私ミラの学友のオリヴィエ•ロアンです。今は訳あってこんな格好していますがれっきとした女です」
とスカートをもつ仕草をして美しいカーテシーを見せる。
「ごめんなさいアクセル様ちゃんと説明しなくて。まさか今日お会いするなんて思わなかったので…」
と、ミラが俺の腕を掴み上目遣いでそう話す。
俺は頭が混乱する。
オリヴィエ?男装?女?
「オリヴィエは華塚劇団に所属しているんです。今度男役のオーディションがあって、男の人の研究がしたいって。オリヴィエはお姉様しかいないし、リュカお兄様も忙しいしアシルお兄様ではイメージ違うし。本当はアクセル様のイメージが1番適任だったんですが中々お時間も取れないから…」
「だから実際に私が男装をしてデートをして、"アクセル様"だったらやりそうなことや言いそうなことをミラに指導してもらっていたんです」
あぁ、だからこの間のデートとほぼ同じだったのか…
「ミラがこの間のデートが凄く楽しくて幸せだったからと言うのと、ノアイユ様のことを1番知っているのは私だからと言うので、この間のデートの再現をさせていただいてました」
「おっオリヴィエ内緒にしてって言ったじゃない!」
とミラが真っ赤になりオリヴィエ嬢に抗議している。
俺はミラに向き合い聞く。
「ミラ…僕のことが嫌いになったんじゃないの…?」
「ノアイユ様、ミラが貴方の事を嫌いなんて有り得ないですよ。寧ろ、『アクセル様にいつも貰ってばかり。こんなに幸せでいいのだろうか?こんな可愛くもないし何も無い私なんて嫌われちゃうかもしれない。なにがアクセル様にお返しできるだろう?』と、会えばいつも貴方のことばかりです。ミラ、こーーーんなに愛されてるなら何も心配いらないじゃない!うん、あれね、こうやって好きな人には一途に重たいくらいの愛が萌えるのね!!!」
と、オリヴィエ嬢は斜め上の考えに至ったらしい。いや、あながち間違えでは無い。
「なんかイメージ掴めそう!家に帰って纏めてみるわ!今日はありがとうミラ。ノアイユ様もまた改めてご挨拶させていただきますわ!」
と俺とミラの手を取りブンブン振ると、オリヴィエ嬢は颯爽と去って行った。
そしてここに残された俺とミラ。結構な声で話してたので注目を浴びだしたので俺は急いで転移魔法を使い俺たちの家へと帰る。
家に着いてそのままミラをお姫様抱っこで持ち上げ2人の寝室にむかう。
ソファに着くなり
「「あのっ」」
と、お互い同時に話し始める。
「あ、アクセル様からどうぞ…」
「いや、ミラから…」
こんなやりとりを何回かしてミラが口を開いた。
「あの、護衛の方には伝えてあったのです。決して勘違いしないで欲しい、今日一緒にいるのはオリヴィエだから、と。護衛の方はオリヴィエを見たことがあったので特に何も思わなかったみたいですが…まさかアクセル様が居るとは思わず、勘違いをさせてしまってごめんなさい」
そう言うとミラはしょんぼりと下を向く。
「…ううん、ミラを信じられないとかそう言うことじゃなくて。朝…何となくいつもオリヴィエ嬢と出かける時と雰囲気が違った気がして…勝手に後をつけてごめんなさい」
「そんなっアクセル様は何も悪くないです!朝、あの、浮き足立っていたのは……この間のデートが本当に楽しくて、その事を思い出していたからで…」
とミラは真っ赤になりながら、最後は聞こえなくなるくらい小さな声になり小さくなってしまった。
そんな俺は自分も顔が真っ赤になるのがわかった。ミラが、こんなにも俺のことを大切に思い、思い出も大切にしていてくれて。それにオリヴィエ嬢の言っていた言葉も思い出す。
浮気なんて疑った自分が馬鹿みたいだ。本当にあの時の自分を殴りたい(リターンズ)
「ミラ、今度は3人で会おう。オリヴィエ嬢に普段の僕の姿を見てもらわなくちゃ、ね?」
と俺はミラを抱きしめる。
「……はいっ!」
ミラも抱きしめ返してくれる。
そして優しいキスをかわす。
何度も何度も。
何度も…何度も…
「ぷはっ、あっアクセル様…あのお仕事は…」
「事情を話したら優しい優しい義兄が代わってくれて」
とニッコリ話す。
そしてまたキスをする。それはそれは濃厚な。
そしてここからはいつも通り、お天道様のみぞ知る。
そんなノアイユ家の日常。
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