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気づいた思い

あの後アクセル様の元にも夜会の招待が来たとアシルお兄様が教えてくれた。アクセル様は私にはあまり詳細は話してくれなかったのだが『何があっても信じて欲しい』とだけ言われた。


そしてその日はやって来た。


あまり警戒するとバレてしまうかもしれない、とのことで私は阿保を装う。

「お待たせいたしました。アクセル様はお仕事で?」

「あ、あぁ…」


あなたねぇ、何か隠してるってバレバレじゃないの!やるならもっと上手くやりなさいよ。こっちも顔が引き攣るじゃないの。


特にエスコートもされずそのまま馬車へと乗り込む。もちろん馬車の中は無言でドルー家へと向かう。因みに万が一に備え後ろからアシルお兄様がついて来ている。…大丈夫かしら。



心配を他所に無事にドルー家へと着いた。

そしてまたまたエスコートもされないので1人で気を付けて降りる。


「…兄様が来るまで部屋で待っていて欲しいとのことだ」

と言われ、案内された部屋で待つ。


案内された部屋は、まぁ普通の客室って感じのところで。私1人だけ案内したところで何かあるのかしら?


すると話し声が聞こえてくる。

「…ル様、どうしてあんな娘と婚約したんですか?!私と結婚してくれるって言ったじゃないですか!」


んん?なんだなんだ?どこから聞こえてくるんだろう?

私は声のする方を探す。どうやら隣に通じる部屋のドアが少し開いてるようで、そこから声が漏れてきたらしい。息を押し殺し、声が聞こえる位置に移動する。


「エヴァ、僕だって君が好きだ。だけど僕達が結婚できないのはわかるだろう?もう君だって子どもじゃないんだから」


この声は、アクセル様…?


「でもっ……あの娘の隣に貴方がいるのは辛過ぎる…。この間だって2人で街を歩いていたでしょう?私のこと好きならそんな姿見せないでほしいわ!」

「エヴァ…」


チラッと覗くとなんと2人は抱き合っていた。

私は息を呑む。

男性はアクセル様だ。アクセル様が抱きしめている御令嬢は私とは違う、とても華奢で綺麗な人だった。



そして、アクセル様はハッキリ好きって言った。




どう言うこと…?




アクセル様は『何があっても信じて欲しい』と言っていた。でも私たちの間に信じるだけの何かがあるのかな…。

そんなことを考えているとまた声が聞こえてきた。


「アクセル様?もうキスはされたんですか?!どうなんですか?!」

「えっ……あ、ま、まだ…していないが…」

「そうなんですね!エヴァは嬉しいですわ!アクセル様の初めてをいただけるのですね!」




心臓が飛び出るかと思った。




そうだ。あれだけアクセル様に好きと言われても、抱きしめられても、キスはした事ない。




なんだ。全てはカモフラージュだったのか。

結婚出来ないけど思い人がいて。

信じて欲しいっていうのも、これが見られてるって知らないから言えたのか。そっか。





そっか、私アクセル様のことが好きなんだ。





手で口を隠し、声を押し殺して涙を流す。




こんな事でアクセル様への思いを気が付きたくなかった。気が付かなければ傷つかないでさようならもできたのに。




時すでに…

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