嫌よ嫌よも好きのうち
そんなこんなで気がつくと私は3日も侯爵家に滞在していた。
何故かって?
あの辱めを受けた朝食の後に帰り支度をしてたら、仕事の用意をしているアクセル様に『僕が責任を持って送っていくんだから、ミラは僕の次の休みまで是非侯爵家でゆっくり過ごしていてほしいんだけど』と、圧をかけられたので、そのままあれよあれよと過ごしている。
とは言え、侍女達にネイルを教えたりクラリス様のドレスに合わせたデザインを考えたりで意外と楽しい。なんなら侍女が私にネイルしてくれるし、どんどんデザインとアイデアが浮かんでくる。
でも楽しそうにすればするほど、仕事から帰ってきたアクセル様の溺愛が半端ない。なぜ。
そして私はサロンにて、今日もアクセル様の膝の上で今日あった出来事を報告している。
「ふぅん。ミラは僕が居なくても今日もとっても楽しかったみたいだね?」
うん、笑顔が怖い。
「…アクセル様のご配慮のおかげで私は楽しく過ごせていますわ。いつも感謝です」
と引き攣りスマイルを返す。
そうするとまるで尻尾が生えましたかね?と言わんばかりに嬉しそうに抱きしめられる。
例えお世辞が入ってたとしても、アクセル様はこんな風に言えば大概喜んでくれる。チョロいもんだぜ(ほほほ)
「ミラ、明日やっと休みだからどこか行きたいところある?」
とアクセル様に聞かれる。
え………伯爵家?
いやいや、そんな事言ったら更に滞在時間が伸びそうだわ。(ガクブル)
「アクセル様の行きたいところに行ってみたいです!」
だって下手に言ってご機嫌損ねたら大変だわ。ついうっかり家に帰りたいって口が滑りそうだもの。
「ミラは優しいねぇ。大丈夫だよ、心配しなくても明日はきちんと送っていくから」
あら、心のうちは読まれてたのね。
「じゃあ明日はデートしようか(ニッコリ)」
わわわわわ!腹黒スマイルじゃなくて眼福スマイルきたー!!
「デートかぁ…」
「え、嫌なの?」
「ちちちち、違いますっ生まれてこの方デートなんてしたことないから、初めてのデートだなぁって…えへへ」
私だって年頃の娘。そりゃデートの一つや二つ経験したかったけど…色んな事情により未だそんな経験もなく。と思ったらなんだか急にワクワクしてきてつい笑みが溢れてしまった。
ん?あれ?反応が無いぞ?とアクセル様を見ると私を抱きしめながら顔に手を当て悶えていた。
クッソ可愛すぎるだろ……あぁ無理、ほんと我慢とかむりなどとゴニョゴニョ言っているのはいつも通りスルーで。
「アクセル様!楽しみにしてますね!」
と言うと、可愛すぎる!!と窒息寸前まで抱きしめられ本日もこれにておひらき。
なんだろう、人って慣れるんだね。
アクセル様に大切にしてもらってるのが、当たり前に感じてきた。だからこそ、気がつかなかったのかもしれない。1番大切なことに。
溺愛と見せかけてヤンデレ