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逃げません。本質を見極めるまでは


当然昨日の事は夢でもなんでもなく。

しっかりと現実が待っていた。


アクセル様が言った通り午前中に手紙が届いたようで、私は侍女に叩き起こされサロンへと向かう。


サロンには両親とアシルお兄様と、え?

「リュ、リュカお兄様なんでいらっしゃるの?」

「…ほら、突っ立てないで座りなさい」


はい来ました完全スルー!

リュカお兄様が無駄にいい笑顔の時は反抗しても仕方ないわ…とほほ


私が椅子に座ったところでお父様が話し出す。

「ミラ、ノアイユ侯爵家から正式に婚約の申し出がきたよ。いやー!良かった良かった!良かったねぇ」

「本当ねぇ!素敵じゃない初恋が実るのね、素敵だわ!」


きゃっきゃきゃっきゃと両親が話し出す。

は、はつこい?だれの?


「ちょ、ちょっと待って!全然話が見えないんだけど」

私は慌てて両親に抗議をする。

「僕から説明するよ」

と、リュカお兄様。


「ミラ、君には伝えていなかったけど、アクセル君から言われた魔石ネイルの開発の報酬ってミラだったんだよね」


は?!わたし?!

驚きすぎて声も出ない私を他所にお兄様は話を続けていく。


「でもさ、あのタイミングでミラとアクセル君が婚約したとしても、その後ミラに向けられる悪意からは守れないだろう?だから僕が提案したんだよ。アクセル君が任務に行っている間、ミラには婚約者はおろか男を誰一人として近づけないってことを」


な、なんですとーー!!!

だから婚約の話もなければ学校で男子から微妙に距離を置かれてたのか。てか学校の子にも手を回すってどんだけなのよリュカお兄様。


「で、ミラに婚約の話がでても困るから父と母には言っておいたってわけ。でもミラには内緒でって言う約束だから、今日の今日までミラは知らなかったんだよね〜(笑顔)」


いやいや、だよね〜(笑顔)じゃないのよマジで。


「なんで、教えてくれなかったの…?」

「僕にとってミラは可愛い妹だ。だから中途半端な婚約もさせなかったし、3年間で彼の気持ちが変わったらミラが傷ついてしまうだろう?そんな姿はみたくないからね」


なるほど。お兄様なりの優しさだったね。


「でもアクセル君は3年間気持ちが変わらなかった。寧ろ行く前よりもミラの方が大切になっているみたいだからね、1()0()0()()()()を差し出すくらいだし。だったら僕は反対する理由はないかな」


おおぅ、なんで()()を知ってるねん。


「でも…私お断りしようかと思ってて」

家族全員びっくりした顔でこちらを見る。リュカお兄様以外。

「理由を聞いても?」


「私、ぽっちゃりで地味だし、特に秀でたものもないし。アクセル様は侯爵家の嫡男で、肩書きも凄いし、あの容姿で女の子なんて引く手数多だろうし。あの人の隣にいるのは、可愛くて頭が良くて家柄も良い、淑女の鑑のような人がいるべきだと思う…」


だから私なんて。


「ふぅん。じゃあミラはミラの隣にいる人はどんな人がいいと思うの?」

「え、私の隣?う、うーーーん、今は特に考えられないかなぁ。浮気しない人とか?あ、ギャンブル好きとかもちょっと…」


急に言われても今まで婚約のことなんて考えた事がないから自分の隣にいる人が全く想像できない。


「僕は兄としてミラの隣にいるのは…そうだなぁ、浮気しない、はいいね。あとギャンブルもダメだ。あとは顔はそうだなぁ可もなく不可もなし?家柄は…ミラの財産目当てじゃない男がいいかもしれない。嫁に行っても苦労しないように次男あたりがいいかな。あとは…」

「ちょ、ちょっと待ってよ。なんでリュカお兄様がそんなに具体的に決めるの?私のパートナーなんだから私が決めるよ」


「うん、そうだよね。自分のパートナーなんだから()()()()()()よね?」

「え、えぇ。まぁ貴族だから多少なりとも政略結婚も仕方ないとは思いますけど…リュカお兄様の様に恋愛結婚も憧れるわ。でも最終的にはきちんと自分の目で見て決めたい」


「うんうん。()()()()()()()()()()()よね?」


もう、さっきからリュカお兄様なんなの?

「そうよ、自分の目で決めたいの。他の人がどうこう言っても一緒にいるのは私だもの」



「じゃあ何でミラはアクセル君の婚約者を()()()()()()んだい?」



そう言われてハッとした。そうだ、私は散々自分で決めたいと言っておきながらアクセル様の婚約者像を勝手に作っていた。そしてそれに当てはまらない自分はダメなんだ、と思っていた。


「…矛盾…してますわ…」

「そうだよね。それにミラはまだアクセル君のこと、きちんと知らないだろう?別にすぐ結婚ではないんだから、知る機会があってもいいんじゃないか?」


確かにそうだ。

結局私もアクセル様の取り巻きと同じだったのかもしれない。

興味ないフリして、容姿しか見てなかった。彼の本質を知ろうとしなかった。

未来なんてわからない、この先どうなるかもわからない、でもわからないのと知ろうとしないのは別物だ。



彼が私に好意を向けてくれているのは紛れもない事実で。


「アクセル様との婚約……いたします」

家族から優しい笑顔を向けられる。

友達や知り合いではない関係でしっかりアクセル様と向き合おう。少なくとも彼は優しいし誠実だ。でもそれ以外はまだよく知らない。


「もしもミラがさ、今後どこかにネイルを広めに行ったとしよう。でも現物のネイルも見ずに断られたら理不尽だと思わないかい?話すら聞かずに良し悪しの判断するのってとっても愚かだと思うんだよね僕は」


確かにそうだ。私もアクセル様と向き合う前にアクセル様を決めつけるのは、それは失礼だ。



「ありがとう、リュカお兄様」



覚悟?を決めた私がそう言うと、リュカお兄様は今日一日の笑顔で




「だってよ!!!良かったね、アクセル君!!」



と叫びやがった。


みんな魔王の掌で踊らされる

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