イケメンの精一杯
「アクセル様、お忙しいところお呼びだてしてすみません。来てくださりありがとうございます」
私はあろうことか卒業を控えたアクセル様を呼び出していた。正直断られるだろうと思っていたのだがリュカお兄様に相談したところ、『絶対来るから呼んでみな』と言われダメ元でお手紙を出したらその週の週末には来てくださったのだ。
案外暇なのかしら。
「あ、いや。他でもないミラの頼みだから…」
なによ、私ってそんな怖いキャラなの?
「それで話って?」
「あ、はい。これが出来ましたので…」
そう言って私はペンシルタイプの魔石ネイルを30本ほど箱に入れてアクセル様の前に出す。
「…ついに完成したんだな」
アクセル様はその一本を手に取り眺めている。
イケメンって何しても絵になるわぁ〜眼福。
「こちら全てお持ちになってください。2年では足りないかもしれないのですが、今はこれが精一杯で…」
「えっこんなに?貰えないよ、買い取らせてくれ」
「いえいえ、兄から報酬の話があったかとは思いますが、これは私からの気持ちです。どうか受け取ってください!」
兄からの報酬と言った途端、アクセル様の体がビクンとはねた。
「き、きみはリュカ殿から報酬の話を聞いているのか?」
「へ?いえ、なにも。この間報酬の話をすると言っていたので」
するとあからさまに安心した様な顔をする。
なんなの?謎なんだけど。
「ではこちらは包ませていただきますね」
と箱を持ちヨイショっと立ち上がる。するとなんと。
「…え」
後ろからアクセル様に抱きしめられてしまった。
えええ。なになになに。どしたん?
私は頭の中がパニックになる。え、もしかして骨折られるの?怖いいいい。
すると頭から落ちてきたのは酷く優しい声で。
「ミラ、最初は酷いこと言ってごめん。2年間君が直向きに頑張っている姿はとても印象的だった。俺も力になれて嬉しいよ。ミラと出会えて良かった」
アクセル様はそう言うと私の腕から箱を取り部屋から出て行ってしまった。
呆然と立ち尽くす私。
「国一番のイケメンて…こんなちんちくりんに凄いリップサービスするのねぇ…」
そしてアクセル様とアシルお兄様は無事卒業し、2年間の討伐任務に行ってしまった。
報われないイケメンと激ニブ少女