魔王はいつでも爆弾を抱えている
「あれ、リュカお兄様アクセル様は?」
「あぁ彼なら話が纏まったから帰ってもらったよ」
「あ、そうなんですね」
相変わらずその仮面の下には何を隠してるのかわからないリュカお兄様。頭のキレは良いし、因みに3人の中だと顔も抜群に良い。いったい誰に似たのかしら?
てかアクセル様にどんだけ報酬支払ったんだろう…。あ、でも成功報酬とかかな?まだ売れてないし。とは言え練習段階からアクセル様とリュカお兄様が騎士学校に頼んで実験的に魔石ネイルを使用してるから、このまま商品化すれば結構売れるのは間違いないから心配ないのか(既に欲しいとの依頼も貰ってるし)
こうして私は転生後の"ネイリスト"になりたいと言う夢を踏み出すための土台作りを終えた。
5年かぁ〜0から作るから正直もっとかかると思ってたけど、持つべき者は優秀な身内ね。リュカお兄様も伯父様もツテと知識が凄いもの。あの2人が居なければきっと5年でなんて完成しなかったことだろう。
あとはノアイユ侯爵家のアクセル様。彼が居なければ確実に魔石ネイルは完成しなかったし、また布教活動にも一躍買って貰ったからかなりスムーズに魔石ネイルは広まりそう。
「となると、今後ネイルをどう広めていくかよね…」
私は兄と伯父がいるのもスッカリ忘れて自分の世界に入り込んで大きな独り言を言ってしまった。
「あぁ、それならそこもなんとかなると思うよ」
「え?」
「さっきアクセル君と話をして、アクセル君の母君に社交界で広めてもらう約束を取り付けたからね。侯爵家の侍女を何人か貸してもらう予定だから、ミラがネイルを叩き込んであげなさい」
お、おぅさすが魔王やることが違うな。既に約束を取り付けてくるとは…やはり何かが流行る時って影響力のある人がやった方が絶対流行るのよね。私がネイルしてたとて何の影響もないだろうし、真似する人もいないだろうし。
「あ、あと僕の婚約者にも広めてもらおう。若い世代と母親世代でデザインも違うだろうし、多方面から攻めるに越したことはないし」
は?
は?
「ハァ??!!リュカお兄様、いつ婚約なんかしたの?私全然知らなかったんですけど!!え、お相手はどこの誰なんですか?!」
思わず興奮して立ちあがっちゃったよ。婚約って普通家と家の顔合わせあるんじゃないの?全然知らないんだけども。まさか私だけ仲間はずれ?!!
「あぁ、まだ世間には公表してないんだけど、父と母と僕と、婚約者とその両親とは顔合わせしたよ。でもほら、ミラもネイル開発で忙しかったし何よりお城に行くのなんて嫌だろ?昔から堅苦しいところ嫌いじゃないかミラは特に」
ん?城?お城っつったこの人。
「お、お兄様、お城とは…」
「あ、僕の婚約者はこの国の第三王女のカメリアだよ」
なんですとーーー!!!!!!
リュカお兄様主席で卒業して宰相補佐やってるとは知ってたけど、まさか王女様と結婚するんかーーーい!
「ま、カメリアは第三王女だし、僕のうちに嫁ぐのにもなんの問題もないから心配しなくていいよ⭐︎」
なんて言ってるけどいや軽すぎお兄様。
「因みに恋愛結婚だから」
って親指立ててベロ出さんでもいい。
そんな今日一の笑顔向けないで。
「カメリアには前々から言ってあって、今か今かと楽しみにしてるんだ。よかったらミラが直接塗ってあげてよ。未来の義姉なんだし」
「は、はぁ。頑張ります…」
「で、ここからは真面目な話なんだけど侍女がネイルを出来るようになる講習会でもひらく?」
「リュカお兄様、それについては考えがありまして。伯父様の商会から"ネイルスクール"と言うものを作ったらどうかしら?侍女1人につき講習費を10万金貨〜30万金貨で、初級、中級、上級とクラスを分けて、最終的に商会認定証みたいなのを出して、それの1年間のディプロマ代で5万金貨、でもディプロマ持っていればネイルの道具を通常より安く買えて、更に年に数回無料の講習付き。また駆け出しの子たちは平民街にもお店を出して練習がてらかなり安い値段、庶民にも全然手が出せる値段で提供するっていうのはどうかしら?」
私は前世の知識フル活用で兄に話す。
「うん、今後真似する者が出てきたとしてもディプロマがあればウチだって証明できるしな。それに年会費で取れば永久契約のようなものだし…よし、それでいこう」
こうしてネイルを布教してくれる人、ネイリストとなる侍女を育成するための機関が整った。いよいよ私はこの世界でネイリストデビューを果たす時が来るのね!
そして2ヶ月後。
サクサク進みます。