魔王とイケメン
アクセル目線です
ミラが出て行ってこの男と2人きりになった俺は先程から背中に嫌な汗が垂れ続けている。
「で、アクセル君。今回の報酬なんだけれども、なにか望むものがある?」
ニコニコ笑っているが背中からはドス黒いオーラが満載で。
最初はそれなりの報酬と、今後魔石ネイルを割安で供給してもらおうかと思っていたのだが今は訳が違う。どうしても欲しいものが出来てしまった。
多分俺が望むものをこの人はわかっている。だからこそ最初から金額で聞いてきていない。策士だよマジで。
「……ゴホン、今回の報酬ですが…その…あの…」
なんかわかんないけどめちゃくちゃ笑顔が怖すぎてその先の言葉が出てこない。
「ん?何かな?あぁ具体的な金額が出た方がいいかな?」
くそ、わかって言ってやがる。
「あぁもう!俺の望む報酬はミラだ!ミラと婚約したい」
「……あれ、あんなちんちくりん好きにならないんじゃなかったんだっけ?」
グフゥそれを言われると瀕死のダメージ喰らうんですけど。しかもニコニコしやがって。
「…付き合いをしていく中で気持ちが変わったので。ミラを妻に迎えたい」
「うーんそっかぁ〜ミラねぇ。ミラかぁ。でもなぁ〜うちの妹まだやってほしい事があるから今すぐ婚約はねぇ。タダでさえ君が王都からいなくなるし、その前に婚約発表なんかされたらうちの妹どうなっちゃうかな?」
そうだった。俺は今から2年間は王都に帰ってこれない。今婚約発表なんてしても虐めの的にしかならないのは目に見えている。それでも、だからこそミラを俺のものとして確立させてから行きたかった。そうしないと手紙のやりとりもできなくなるし。
何も言えずに俺は俯いてしまった。
「わかった。じゃあこう言うのはどうだい?君が王都に帰ってくるまで妹に婚約者はおろか男も近づけさせないと約束しよう。もし君が2年間で気持ちが変わったとしても婚約してなければ妹にダメージも無いし。どうだろう?」
俺のミラへの気持ちが変わるなんて有り得ない。だからこそ今すぐ婚約したいがそうするとミラに降りかかる悪意から守ってあげられない。そうなるとこの男が言う事が1番最善なんだと思う。
「それで…お願いします… 」
「ヨシ!じゃあそれで僕と君で内密に契約を結ぼう。あ、あと別で僕からお願いがあるんだけど?」
「なんすか?」
「君の、侯爵家の侍女を何人か貸してほしい。理由はミラが作ったネイルを女性に広めたい。それにはまず宣伝塔が必要だ。君の母上は社交界でも指折りの美人だからね。侯爵夫人がしているものなら良質だとお墨付きになるだろう。それに将来の義理の娘が作ったものならば、その第一人者になるのは嬉しいよね?」
くそっ全部こうなることを予測してたのかこの男は…まじで敵に回したくない。それにさっきの義理の娘って……良い響きすぎる。はぁミラを抱きしめたい。
結局俺はリュカの言うこと全てに賛同し、内密に契約を交わした。その後母にネイルを説明すると二つ返事でOKになり、侍女はミラにネイルを叩き込まれ母は社交界でネイルを広めることに成功したのだった。
魔王はかなりの策士ですが家族思いです