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第62話:オーク再来

「頭痛いです」


 あー、はいはい。

 水、置いときますね。


 ジャッキーさんを起こしにいったら、客間のベッドで呻いていた。

 この人、本当に偉い神様なんだよね?

 あっ、偉いとは聞いてないから、ただの神様か。


「失礼ですねー」


 うん、二日酔いでぐったりしてる状態で、偉いも何もあったもんじゃないと思う。


「ゴブ美に、シジミの味噌汁作らせときますね。あとこれ、飲むウコン置いときます」

「吞む前に出してほしかったです」


 しかし、状態異常無効とかないのかな?

 絶賛、状態異常(二日酔い)中のジャッキーさんを見て、首を傾げる。


「二日酔いまで含めて、良いお酒です」


 そうですか。

 何か、譲れない矜持でもあるのかもしれない。

 楽になったら、降りて来て。


 昼過ぎまでグダグダしたあと、リビングのソファで迎え酒といってビール飲んでる狼を見て溜息。

 ファンタジーな人たちが、リアルすぎてどうリアクションを取ったものか。

 それはさておき。


「久しぶりですけど、何の用ですか?」


 外で来客対応。

 オークの長とその娘のユリアンが、部族の者たちを引き連れてやってきた。

 最初は何事かと思って構えていたけど、ゴブマルが一人でもどうこうできると豪語していたので少し落ち着く。

 いやいや……オークの集団を単体でどうにかできるゴブリンとか。

 それが、たくさんいる。

 うん、問題ない。

 

 アスマさんが来た辺りから、一時交流が途絶えていたし。

 聞けば、冬支度で色々と忙しかったらしい。


 用向きを確認。


「最近、森の魔物達が減ったせいか、冒険者共のオーク狩りが激しくてな。流石に集落の危険を感じて、全員で匿ってもらおうかと思って」


 頼む側の態度じゃないな。

 初めて会った時から、態度を変えないオークの長に奥歯に物が挟まったような感情を覚える。

 だめだな。

 これは俺が相手を見下しているから、そう思うんだ。

 少し傲慢な感情だ。

 そうなんだけど、相手がこっちを見下してきているから。

 ある意味で、対等なのかな?


「パパは、誰に対してもこうだから……申し訳ありません」


 いや、誰に対してもこうだから、どうなんだ?


「その、若い時から長老とかに対してもこんな感じで、常に先輩オークや戦士オークの人達に絞められていたって」

「き……鍛えてもらっていただけだ」


 口は災いの元というが。

 性分なのだろう。

 いや?

 何か、拗らせるようなことでもあったのかもしれない。

 偉い人相手でも態度を変えないことを、かっこいいと思えるような。

 そんな出来事。


「ふふ、パパもママも小さい時に、ママが年上のオークに虐められてるのを見て、強気な姿勢でガンガンは向かって行ったパパにかっこいいって言ったのが原因みたいですよ!」

「ユ……ユリアン! よ……余計なことを言うな!」


 めっちゃ動揺してる。

 思わず、こっちもニヨニヨ……するわけがない。

 猪よりの豚のそんな幼い時の甘酸っぱい思い出話をされたところで、何も響かない。

 なんだろう。

 ゴブリン達と付き合っていくうちに、そういった部分に対して寛容になったと思っていたが。

 気のせいだったようだ。


「ママの好きなパパでいたいんだよね」

「……もう、お前は少し黙れ」


 照れてはにかんでるおっさんオークって、誰得だ?

 少なくとも、俺には何も響かなかった。


「まあ、それなりの対価を頂けるなら。前向きに検討してもいいですけどね」

「た……対価? む……娘か?」


 いや、なんでそこでオークの娘が出てくるんだ?

 

「た……確かに、この子は凄い美人ではあるが。ゴブリンとオークの、道ならぬ恋というのは……」


 うん、言い方。

 道ならぬ恋ってのは、不倫とかをさす言葉だから。

 マジーン翻訳機能、たまにポンコツだな。

 種を超えた愛とか……いや、その気はないから考えるだけ無駄だな。


「なぜそんな感情を殺した目をしておるのだ? よもや、我が娘に不満があるわけではあるまいな?」


 不満しかない。

 あと、不安しかない。

 おたくの娘さんじゃ、対価になりえないから却下で。


「確かに、それだとこちらが譲りすぎだったな」


 そうじゃない。

 その自信はどこからくる?


「そ……それと、アスマ殿を紹介していただければと」


 アスマさん悪名名高いくせに、人気もあるんだよなー。

 なんでだ?


「はあ……わしの悪口を広めるのは、敵対した相手のみじゃ。わしは殴りかかってきた者は殴り返し、語り掛けてきた者には語り返し、好意を受けたら好意で返しておる。恩を受けたら、義を返すくらいの心意気はもっておる」


 鏡みたいな骸骨ってことか?

 どうりで、敵味方が多いわけか。

 現状、俺がかなり与えている側だけど。

 これも返ってくるのかな?

 あー、でもちょいちょい手伝ってもらってることもあるし。

 うん、それでいつも手助けしてくれるのか。


「そんなドライなもんじゃないぞ? 友に頼られて、またそれを出来る力を持っておるなら応えてやるのが世の常であろう?」


 なんだろう。

 友って俺のことかな。

 まあ、確かにこの世界で一番仲がいい人かもしれないけど。

 でもこの際だから、ハッキリ言っておこう。


 俺は、友相手でも対価は求めるタイプだ。

 感謝の言葉でもいいが、物質的な物ならそれに見合った見返りを求める。

 対等であるために、どちらかが与えすぎたり貰いすぎるってのは健全ではない。


「寂しい奴じゃのう」


 うん……良い事を言ったからといって、貸しをチャラにしたりはしないぞ。

 家を建てた労力や現在進行形で色々と買い与えているのを、当たり前のように享受しようとするのはどうなんだ?

 それらは、仲良くなる前に与えたものだしな。

 しかもそこまで手を掛けて建てた家を放置して、うちに入り浸ってるとか


「もしかして、家をあまり使わないことを根に持っておるのか?」


 少しな。

 

「ここまで心許せる友は、片手で足りるほどしかおらんのじゃ。居心地が良すぎてついのう……うむ、あの家は正式にエルハザードに譲るとしよう!」


 いやそうじゃない。

 そういうことを言ってるわけじゃない。

 まあ、うちもだいぶ増築してるから、もうここに住むことに対して何も言うつもりはないが。

 自分の我がままで建ててもらった家に対して義理立てしないのは、さっきの言葉に反する行動じゃないのか?


「お主は、こういう知恵だけはよく回る。知識ではわしの方が上じゃと自負しておるが、人の嫌がるところを的確に突いてくるところは適わんな」


 まあ、とりあえずジニー達もこっちにいるし、別にもう良いけどさ。

 ゴブサクやゴブオ達には謝っておくように。


「分かったわい」


 そう言って、アスマさんが家から出ていったけど。

 オークに紹介するのが先だったんだけど。

 まあ、良いか。


 オーク達には、少しだけくつろいでもらっておこう。

 

 ゴブリン達が食肉を見る目になっているけど。


「この時期のオークはあまり動かないので、脂がのって……」


 だから、乱獲されるのか。

 うちのゴブリン達は大丈夫だろうけど。


 そういえばジニー達で思い出したけど、ゴブエモンとギイとガードが今度街に行くっていってたな。

 他にはゴブエルとロイ……イッヌのところについていったゴブリンだな……を連れていけたら、連れて行くらしい。

 なんでもイッヌの父親から身分証をもらったから、ゴブエモンが冒険者登録してみるつもりらしい。

 ゴブエルとロイは、興味があればと。

 誘ってみるが、無理強いはしないとのこと。

 うーん、良いんじゃないかな?

 よくわかんないけど。

 

 村を出る前に、身分証を見せてもらおう。

 種族名ゴブリンとか書いてあったら、トラブルしか起きる予感がしないし。


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