ふんどしリーマン夫婦の成り上がり~嘘だろ。この状況で異世界に召喚だと!?~
注)この作品はあっきコタロウさまのフリーイラストを使用しております。
銘尾 友朗さまの「笑顔でいこう企画」参加。
ひらん。
目の前で四角い布が揺れる。
――ふんどしは究極のエコ&健康グッズらしいよ――。
鼻息も荒くそう主張する妻が、目の前でふんどしを広げている。
そいつは越中ふんどしという種類らしいが、正直俺にはふんどしに種類があったのか、という驚きしかない。
「いいから騙されたと思ってつけてみてよ」
愛する妻の(口に出したことはない)満面の笑みに勝てず、俺はふんどしに手を出した。
結論から言おう。ふんどし最高。
体の締め付けが全くないせいだろうか。
まず、二日酔いをしなくなった。
蒸れとはおさらばだ。
しかも良い感じに固定されて、なんとも言えない安心感がある。
おかげでなのかは知らないが、ゴルフの成績がそこはかとなく上がった。
その日から俺はふんどし愛好者となった。もちろん、妻もだ。ちなみに妻は花柄のもっこふんどし。
意外なことに女性のふんどし姿は非常に可愛らしい。
白状しよう。
萌えた。そして燃えた。
ゴホン。
まあとにかく俺たち夫婦はふんどしの虜になった。
当初の目的である節約と健康はもちろんだが、なによりも解放感と履き心地。これにやられた。
ビバ、ふんどし。
もうトランクスは考えられない。
ということで今日も俺はふんどしである。
ジャーッ、ゴポポポ。
会社のトイレで大の方の用を足し、俺はふんどしを締め直す。六尺ふんどしと違い、簡単なのも越後ふんどし愛用のポイントだった。と、そこへポケットの中のスマホが鳴る。
ズボンを上げる前に取り出して表示を見れば、妻からだった。
「どうした、何かあったのか」
『ああっ、吉平くん。急に変な光が現れたの! どうしよう」
「はあ? 変な光? 何の冗談だ」
スマホを耳に当てたまま、ふっと鼻で笑う俺の足元が明るくなった。
「うわっ」
「きゃーっ」
眩しくて目を開けていられない!
俺はぎゅっと目を瞑った。
しばらくして、もう一度目を開けると、そこは目にも眩しい青空の下。見慣れたビルと街路樹……までは普通なのだが。
ビルに混じって見たことのない建築様式の建物があるわ。
俺が立っている公園らしき広場にいるのは、比喩ではなくトカゲ頭の男?(勘)と耳を生やした鎧を着た女だとか、明らかに人間じゃないやつらがいるわ。
挙句の果てに、中央にいるのは――。
「召喚成功だ! やあやあ、おめでとう! 単刀直入に言おう。勇者と聖女に君たち夫婦が選ばれてね。ちょこっとこの世界を救ってほしいんだよ」
きゃぴっ。と効果音が出そうなウィンクをかましてきた、背中に羽を生やした金髪碧眼のイケメン。
――が、やはりスマホを耳に当てて床にへたりこんだ妻の肩を抱いていた。
「そうかそうか。異世界召喚か。……ところで」
背広の上着を肩にかけ、スマホを耳に当てた状態の俺は、冷たくそいつを見下ろして、はっ、と鼻から息を吐いた。
光る風が俺の髪とネクタイ、ワイシャツを巻き上げ、さわやかに剥き出しの肌とふんどしを撫でていく。
ふわりと宙にはためくふんどしが、きらりと光を反射した。
「俺の妻に何してくれとんじゃ、ボケェエエッ!」
メキョオォッ!
俺の渾身の右ストレートが金髪イケメンど阿呆の顔にめりこんだ。
これは異世界に召喚されたふんどしリーマン夫婦が、世界を救い、ふんどしを流行させる物語。
続……かねぇよ!!
裏設定。
召喚された時の恰好に女神のチート加護が付与。この恰好を崩すと大幅な能力ダウンw
結果、ふんどしは異世界勇者の象徴! 銅像も作られ、吟遊詩人も歌うw
そしてふんどし大流行!ヾ(≧▽≦)ノ
2021年5月【追記】
有沢真尋さまの、「ステラマリスが聞こえる」とふんどしリーマンのコラボSSを書いています。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/828137/blogkey/2791510/
ステラマリスが聞こえる
https://ncode.syosetu.com/n7310fx/