『逆さ虹の森』を描こう! チコちゃんのはほはほはっほ~大作戦!
「チコちゃん。ボーっとしてちゃダメですよ?」
元気いっぱいでいつもお母さんに叱られているチコちゃん。今もずっと降り続いていた雨が上がって、空を見上げてボーっとしていました。
「はーーい!!」
うふうふ笑いながら、お母さんの言う事を聞いているのかいないのか。そんな事は今はどうでもよいみたいです。
ばしゃばしゃ ばしゃばしゃ
「きゃ~~っ!!」
公園にできた大きな水たまりに駆け込んでいくチコちゃん。雨合羽を着て長靴を履いているとは言え、そんなにはしゃいだら全身びちゃびちゃです。
ばしゃばしゃ ばしゃばしゃ
「はほはほはっほ~~っ!!」
でもそんなの関係ありません。ここぞとばかりにジャンプして水たまりと戯れます。嬉しくて仕方ないのです。
おかっぱ頭にピンクのワンピース。まだまだ成長途中の小さな体の割に大きな頭をした5歳の女の子。大きな目がくりっとしていて、少し鼻にこもった声をしたチコちゃんです。
ぴちゃぴちゃと雨合羽から水滴が落ちていくのも楽しくて仕方ありません。
「うふふ~~」
いつもの事なのでお母さんも少しあきらめています。元気が1番。元気があれば何でもできる?
そんな時でした。チコちゃんが大きな水たまりに映るキレイな色を見つけました。
「わああ~~!」
目を輝かせて驚くチコちゃん。雨合羽から落ちる水滴に合わせて水たまりに波紋が広がります。するとそこに映るキレイな色もそれに合わせてキレイな彩りを広げてくれました。
「わあ、わあ、わあ~~!!」
あんなにはしゃいでいたチコちゃんがピタリと動きを止め、身動きもせずに水たまりを見つめています。
「あら、どうしたのチコちゃん? 何がそんなに嬉しいの?」
不思議に思ったお母さんがチコちゃんに話しかけます。
「うふふ~~」
満面の笑顔で水たまりを見つめ続けるチコちゃん。お母さんの言葉は聞こえていません。キレイな色の束が波打つのに夢中です。
「あら? 虹が出てたのね? 知らなかったわ」
お空の虹が水たまりに映っているのを発見したお母さん。空を見上げる機会が少なくなっていた事を思い出し、忙し過ぎて心に余裕を持てていなかったんだなあと、少し悲しい気持ちになりながらも空を見上げます。
「まあ、キレイな虹。しかも逆さまの虹なんて珍しいわね」
くっきりとキレイな彩りを示す逆さまの虹。なかなか見られない貴重な虹がそこにはありました。
「うふふ。今日は何か良い事があるのかしら?」
お母さんも初めて見た逆さまの虹。ぱっと見た印象から良いイメージしか浮かんでこないようです。
なかには何か『不吉』な事が起こるのではないかと考えてしまう人もいるみたいですが、それは自分の心を映し出す鏡のようなものですよ?
お母さんもチコちゃんもキレイな彩りの虹を見て嬉しくなり、あたたかい気持ちの笑顔でいられるようです。
今日はお母さんとのお買い物でお出かけでした。これもいい機会だからチコちゃんに傘を買っておこうと思うお母さん。チコちゃんにとっては、さっそく良い事があったみたいですね。
デパートの傘売り場にやって来たチコちゃん。たくさん並んだ傘の山を見て、目がキラキラ輝いています。
「わあ、わあ、わあ~~!!」
「うふふ。この中からチコちゃんが気に入った傘を1つ選んでいいわよ?」
「はーーい!!」
そんなお母さんの言葉はしっかり聞いて嬉しくなるチコちゃん。ぽてぽてゆっくり歩きながら、傘を1つ1つ見て回ります。
「わああ~~!」
すると、たくさん並んだ傘の山の中から虹のようなカラフルな模様の傘を見つけました。さっき見た虹にも似てるキレイな傘です。チコちゃんはこの傘を見てるだけでも元気になれると思ったようです。
「あら? キレイな色の傘を見つけたのね。うふふ。さっきの虹にそっくりね? いいわよ。じゃあその傘をチコちゃんの傘にしましょうか?」
「はーーい!!」
この傘を持っていれば雨の時でも元気いっぱい。もうこれでチコちゃんは、雨でも晴れでもいつでも元気いっぱいでいられます。そう思ったチコちゃんは、もう嬉しくて仕方ありません。さっきからずっとニコニコです。
「うふふ~~」
お母さんに買ってもらった傘を大事そうに両手に抱えて歩くチコちゃん。キレイな虹を手に入れられた気がして嬉しくなりました。
少しだけ大人になったチコちゃんは帰り道では水たまりに駆け込むなんて事はしませんでした。傘が汚れてしまうのがイヤだったのかな? それとも本当に少しだけ大人になったのかな?
そんな水たまりに見向きもしないチコちゃんを見たお母さんは、我が子の成長を感じられ、また嬉しくなるのでした。
「うふふ。チコちゃんたら、さっきはあんなに楽しそうに水たまりで遊んでいたのに、もうびちゃびちゃになるのはいいのね? 今は傘の方が大切なのね?」
そんなお母さんの気持ちも知らないチコちゃんは、ニコニコ笑顔で水たまりを避けながら歩きます。
遠くの森の上には、まだ逆さまの虹が見えています。
お家に帰って手洗いとうがいを済ませたチコちゃんは、お母さんから話しかけられました。
「それじゃあ、さっき買ってきたチコちゃんの傘に『お名前』を書いておきましょうか?」
ぽてんとお母さんを見上げるチコちゃん。少し考えて元気なお返事で返します。
「はーーい!!」
でも少しだけ大人になったチコちゃんは、ただではお返事じしませんでした。
「えっ? チコちゃんが自分で書くの? 書きたいの?」
傘を持ったままお母さんからペンを受け取るチコちゃん。
「はーーい!!」
「あら。まあ、これもいい機会ね。うふふ。じゃあ『お名前』はチコちゃんにお任せしようかしら?」
「はほはほはっほ~~っ!!」
かきかき かきかき
夢中になって『名札シール』に自分の名前を書き込むチコちゃん。もう名札しか見ていません。凄い集中力です。
「きゃ~~っ!!」
もうできたようです。少しだけ大人になったチコちゃんは、あれからずっと笑顔のままですね。
「こら、チコちゃん。名前を逆さまに書いちゃダメでしょ? でも、よく書けたわね? そっちの方が凄いと思うわよ?
逆さに字の『もり』を書いちゃうなんて。漢字の『森』なら左右反対に書いても『森』だけど?」
「うふふ~」
水たまりに映った虹を見たチコちゃんは、自分のお名前までも逆さまに書いてみたのでした。凄いです。『もり』って左右反対に書いてあります。
これは、今日1日いっしょに過ごしたお母さんとチコちゃんには分かるお話です。いっしょにいないと気がつきません。ただイタズラ書きしたのかと思ってしまうかもしれません。
これにも我が子の成長を感じられたお母さんは、またまた嬉しくなりチコちゃんの頭を撫でながら笑うのでした。
「うふふ。よくできたわね? でもこれはお外で書いちゃダメよ? これはお母さんとチコちゃんのヒミツのお名前よ?」
「はーーい!!」
今日もチコちゃんは元気いっぱいニコニコです。
『逆さ虹の森』を描こう!
さ、傘に字の『もり』を書こう!
本名『森 知子』ちゃん。そんなチコちゃんのとある1日のお話でした。
皆さんも心に余裕を持って受け止めて下さいね?
そして、たまにはゆっくり空を見上げてみて下さい。なにか良い事があるかもしれませんよ? UFO(未確認飛行物体)を発見しちゃったりして?
もしかしたら大人のチコちゃんに叱られちゃうかもしれませんよ?
『ボーっと生きてんじゃねーよ!』
失礼しました。 m(_ _)m