VSマリネ
更新遅くなってすみません。
「何を言ってるんだマリネさん……! 相手をするとはどういうことだ!?」
俺は困惑する。
マリネの顔からは一切の表情が消えていた。いつもにこやかな彼女の面影は一切無い。
一体どうしてしまったというのか。
マリネは背けていた顔をこちらへ向け、無表情のまま、だが睨むような目つきでこう言った。
「この顔を見てもまだ気付かないのか。マヌケめッ!!」
顔だと……!?
言われてみれば眼鏡を外したマリネの印象はいつもと若干違う。
そうだ。俺はこの顔に見覚えがある。
「ようやく気付いたようだな」
「お前……俺を轢いた女かッッッッ」
そう、マリネは元の世界で俺を轢いたトラック運転手の美少女だったのだ。
マリネは恨みがこもった目つきで俺を見続けている。
何故だ。轢き殺されたこっちが恨むならまだしも、なぜ彼女が俺を恨む。
「お前を轢いたせいで私は運転免許を取り上げられてしまった。おかげで運送業の仕事が出来なくなり収入はゼロ。全て貴様のせいだ!」
それは、逆恨みではないのか!
「復讐を誓った私は異世界転生術と時間逆行術を習得し、お前より先にこの世界に来たのだ。分かったら死ねっンガゴゴ!!」
言い終わるや否やマリネは渾身の右ストレートを放ってきた。
俺はそれを華麗に回避し、カウンターパンチを彼女の下腹部に叩き込む。
するとマリネは悶絶しその場にうずくまった。
「ぐふっ……私の負けだ。トドメを刺せ……」
「分からないな。お前の目的は俺への復讐だったはず。なのに何故この世界に来た俺を助けた?」
異世界転生直後、言葉すら分からない俺を助けてくれたのはマリネだ。
復讐だけが目的なら背後から大根で刺すなりすれば簡単かつ確実だったはず。
「ふ……」
小さく笑ってから、彼女はこう答えた。
「うっかりしてたのさ」
「そうか」
俺はマリネにトドメを刺し、ネリネリ・ネリーン高校を後にした。
正当防衛とはいえ人を殺めてしまった以上、もう俺は表の世界では生きていけない。
あいにく俺には元の世界で身に着けた狩りの技術があった。一人で生きていくことには慣れている。
「待てよ。俺も一緒に行くぜ」
ネリーン高校の校門から出ようとする俺に声をかけたのは根藤だった。
「根藤……いいのか? 二度と元の世界には戻れないぞ? 果てしなく続く苦行の日々を生き抜く覚悟はあるのか?」
俺の言葉を聞いた根藤はニッカリと、白い歯を見せて笑った。
「覚悟なんて無いさ。でも愛ならあるぜ」
「根藤……」
俺は根藤を抱きかかえ、そして熱い口づけをかわした。
これから俺達に待ち受けているのは地獄の日々かも知れない。
だが愛する男と一緒ならきっと乗り越えられる。俺はそう思った。
練馬に転生した男ンガガゴ・完
今回で完結です。長い間応援ありがとうございました。