職人いろいろ
町人とは武士や百姓いがいの職人と商人をさす。では、江戸時代の職人とはどういったものがあったのであろう。
まず、職人は専門的な技術があり、いろいろな物をつくり、加工する者のことだ。大別すると、道具をもって外へ出かけて仕事をする「出職」と、自分の住居で仕事をする「居職」があった。
「出職」では、建物の建築・修理をおこなう大工、壁をぬる左官、木材を用材に加工する木挽き、船をつくる船大工、井戸を掘る井戸掘師、屋根職、植木屋、看板屋、鋳掛師、釜戸直し、渋塗、貸本屋、荷担、雪駄直し、羅宇すげかえ、などがある。
「居職」では、桶や家具をつくる指物職人、屋根を葺く瓦職、畳をつくる畳屋、石材を墓石や灯籠などに加工した石工職、武士の刀をつくる刀鍛冶、刀を研ぐ研師、鞘師、弓職、鎧職、提灯屋、傘張り、炭団屋、機織り(はたおり)、紺屋、扇屋、車職、笊職、葛籠細工人、墨師、押絵師、蒔絵師、塗物師などがあった。
江戸は世界一のリサイクル社会でもあり、リサイクルに関する職人も多かった。
傘は骨に油紙ではられていて、穴が開いたら油紙をはって修理している。不要になった油紙は、鮮魚や漬物などの包装紙としてつかった。いらなくなった着物は古着屋に売り、道具は古道具屋に売っている。
道ばたに落ちていた紙くずは「紙屑拾い」が背負いカゴに集めて浅草紙(今でいうトイレットペーパー)にリサイクルしていた。割れた食器を修理する「鋳掛屋」があり、古いホウキをタワシにする商売もあった。
出職は朝から夕方まで、休憩時間を加味して一日おおよそ十時間ほど働いた。屋外での仕事のため、雨や強風の日など天候が悪い日が休みである。その点、居職は室内の仕事のため、天気に関係なく仕事のスケジュールがとれた。
職人の多くは家賃をはらって長屋に住んでいた。長屋とは一棟の細長い建物を数戸の部屋にくぎったものである。押し入れがなく、部屋がせまいため、家財道具は少ない。せまい土間のすみに台所が設けられていた。
井戸とトイレはほかの住民たちと共同スペースでつかっていた。また、江戸の民は信心深くて、部屋の上部に神棚を祀り、長屋の近くに小さな稲荷社がよくあったものだ。