悪魔の声
雇い主「お前クビ。」
六郎「・・え?」
突然仕事をクビになった。
何が悪かったのだろうか。真面目に働いていたつもりだったけど・・
・・
・・・・
同僚「よお、大変だったな。」
六郎「大変というか、なにがなんだかわからないんだけど。」
同僚「あれだよ。」
六郎「あれ?」
同僚が窓を指差すので覗いてみる。
中では、僕をクビにした雇い主が見知らぬ女の子と談笑していた。
同僚「愛人みたいだぞ。手元に置きたいからって縁故採用だ。」
六郎「え、まさか僕がクビになったのって・・」
同僚「あの子を雇うために空きを作ったってわけだ。」
そ、そんな・・
同僚「運が悪かったな。」
同僚はそう言って去って行った。
頭の中が真っ白になった。
僕は今までがんばって働いていたのに。
・・
・・・・
彼女「え?仕事やめたの?」
六郎「やめたというか、クビになった。」
彼女「それで、これからどうするの?」
六郎「どうしようかな。ははは・・」
彼女「はぁ・・なら別れましょう。」
六郎「ええ!?し、仕事ならすぐ見つけるよ!」
彼女「悪いから言わないでいたけど、他に好きな人ができたの。」
六郎「え・・?」
彼女「さようなら。」
彼女は去って行った。
そんな・・そんな・・
・・
・・・・
住んでいるアパートに戻ると、轟々と燃えていた。
消火活動が始まっていて、遠巻きに近所の人が見ていた。
六郎「あの、あの、火事って・・」
近所の人「あらアパートの・・大変ねぇ。」
大変ですけど!
結局アパートは完全燃焼した。いや焦げ跡はかなーり残っているけど住むのは無理っぽい。
僕の私物もほぼ燃えた・・
警察「もしもし、アパートの方ですか?」
六郎「あ、はい。これからどうしたらいいか・・」
警察「火事の件ですが、少しお話を聞きたいので署までお越しいただけませんか?」
六郎「は、はい、いいですよ。」
僕はパトカーに乗り、アパートを後にした。
・・
・・・・
六郎「えーと・・」
警察「あれは放火だ。お前が火をつけたんだろう!」
六郎「つけてません!自分の住んでいるところに火をつけたら自分が困るでしょ!?」
警察「なら他の放火はお前がやったんだな。」
六郎「する意味がないです!」
警察「ここにお前のことを調べた資料がある。」
警察「仕事をクビになり、彼女にふられ、仮性包茎という三重苦。」
警察「辛かっただろうなぁ。精神に異常をきたしても仕方ないというもんだ。」
最後のはどうやって調べたんだろう。
警察「かつ丼食うか?」
六郎「自腹なんでしょ?いらないです。というか僕は何もしていません!」
警察「呼吸は?」
六郎「してます。」
警察「まばたきは?」
六郎「してます。」
警察「放火は?」
六郎「してません。」
警察「ちっ、しぶといな。」
誘導した自白は証拠になりませんよ?
・・
・・・・
証拠不十分で釈放はされた。
でも、警察に連れてかれたことで、みんな僕を疑うようになった。
住む場所も失った。仕事もない。
住む場所は必要なので、不動産屋さんへ行った。
不動産屋「大家さんが契約してくれるかねぇ。放火した疑いがあるんでしょ?」
不動産屋「それに無職だそうじゃないか。そんな人には誰も貸したがらないよ。」
六郎「・・」
僕は今、公園にいる。
はぁ・・どうすりゃいいんだ・・誰も所有していない土地なんてあるわけがない。
だとすると、どこか買うか借りるかしないといけない。
買うほどの金はない。で、借りるのは断れる。
買うお金を稼ごうにも、働くには住所が必要になる。
住む場所が必要だから働きたいのに、働くには住所が必要という。
どうすりゃいいっちゅうねん!
家無し「あ、放火犯!出てけ!オレたちの家まで燃やされたらたまらん!」
六郎「放火犯じゃないです!」
家無し「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ」
家無し「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ」
家無し「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ」
家無し「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ」
家無し「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ」
公園にもいられない・・どこへ行けばいいんだ・・
・・
・・・・
あてもなく道を歩く。
だけど疲れるだけ。
周りを見ると、誰もが日常を過ごしている。
なぜ僕はこんなにも苦しいのだろうか。
「社会が悪いのよ。あなたは悪くない。」
だとしても、僕にはどうすることもできない。
選挙もまだだし。あっても僕を助けてくれる人なんていない。
出馬するお金もない。
そもそも家が無いと投票用紙を受け取ることもできない。
「復讐しましょう。」
復讐?
「正しいのはあなた。悪い社会は倒さないといけないわ。」
でも、社会って形じゃなくて概念的なものじゃないの?
言ってみれば、すべてが社会の一部。
「そう。だから何をしてもいい。」
「憎い相手はいない?殺してしまいましょう。」
憎い相手ねぇ・・特にいないなぁ。
「あなたをクビにした雇い主は?」
別に憎いとまでは・・
「あなたをふった女の子は?」
別に憎いとまでは・・
「あなたを放火魔だと決めつけた面々は?」
別に憎いとまでは・・
「あなた、バカでしょ?」
何考えているかわからないとはよく言われます。
「なら手っ取り早く、すぐそこの家でも放火しましょう。」
でも捕まったら、”やっぱり住んでたアパートも放火したんだ”って言われそうだし・・
「ならそこのカップルを襲いましょう。あなたの苦しみを味合わせてあげて。」
楽しそうだし邪魔しちゃ悪いよ。
いつまでも仲良くできればいいのに・・泣けてきた。
「なら入門証ぶら下げて歩いている人を狙いましょう。」
「仕事のできない体にしちゃおう♪」
仕事・・続けたかったなぁ・・はぁ・・
ポカッ!
「いいから社会に復讐しなさい!あなたにはその権利があるのよ!」
殴られた?あれ?周りを見ても誰もいない。
「線路に置き石!嫌なら私があなたを殺しちゃうから!」
あーはいはいわかりましたぁ。
それくらいならできるかな・・
・・
・・・・
夜。
静かな線路の上。
六郎「静かで暗くて、なんか怖いなぁ。」
石ってどれくらいのを置けばいいんだろう。
ネットで調べてみる。
”線路 置き石 サイズ”
・・え?置き石って重罪なの?
「電車は多ければ100人以上が乗ってるの。その人たちを死の危険に追いやる恐れがあるんだけど?」
言われてみれば、結構被害出そう・・
「あなたの復讐にぴったりでしょ?さ、石を置きなさい。」
これで本物の犯罪者か・・
僕はその辺の石を線路の上に置いた。
「もうちょっと左ね。」
こうですか?
「うん。じゃあ駅に行きなさい。」
駅?
「この近くの駅には24時間開放されている待合室があるから、そこで夜を明かせるわ。」
便利だ。
この辺に住んでいたのに知らなかった。
「大抵の人は夜中の駅には行かないでしょ。なら知らなくても普通。」
・・ところで僕の頭に直接話しかけて来るあなたはどちら様ですか?
悪魔さん?
「なら悪魔でいいわ。」
悪魔が実在しているのもびっくりだけど、まぁ話し相手がいてちょっと嬉しいや。
それも声の感じからして美少女っぽい。
「ありがと♪」
僕は駅へ向かった。
・・
・・・・
駅の待合室には、旅行者とおぼしき人や僕と同じような人が何人かいた。
人が少ないからか、横になっている人もいた。
・・お布団で寝たいな。
そう思いながら、僕はシートに座って眠りについた。
・・
・・・・
アナウンス「脱線による死傷者はなく、乗客の怪我も軽傷程度で済んだと発表がありました。」
ん・・あ!構内放送やってる!
アナウンス「今も警察の調査中ですが、脱線の原因は置き石の可能性があるようです。」
アナウンス「置き石による脱線は非常に珍しく、偶然か故意なのかまだわかっていないようです。」
珍しいの?
「過去の例が殆どないわ。列車の重量とスピードで大抵の石は砕けるから。」
「人間が飛び込んでも脱線しないでしょ?あのサイズでも脱線は難しいのよ。」
でも昨日置いた石はずっとずっと小さかったけど・・
片手でも持てる程度。
「だから私が場所を指示したんじゃない。」
さすが悪魔さん。
「日も昇ったわね。早速次の復讐するわよ。」
座って寝たからか、あまり疲れがとれないです。
お布団で寝たい・・
「なら・・お金を奪いに行きましょう♪」
ごくっ・・強盗?
僕は緊張しながら駅を出た。
・・
・・・・
アナウンス「〇〇発××行の列車で乗客を人質にした乗っ取り事件が発生しました。」
アナウンス「犯人たちはテログループと見られており、仲間の解放を要求。」
アナウンス「これに対し警視庁は特別警戒態勢をとり対応にあたっていました。」
アナウンス「・・が、列車は突然脱線し、柵を擦りながら停車。」
アナウンス「犯人グループは脱線の衝撃で気絶、まもなく全員逮捕されました。」
アナウンス「脱線による死傷者はなく、乗客の怪我も軽傷程度で済んだと発表がありました。」
アナウンス「今も警察の調査中ですが、脱線の原因は置き石の可能性があるようです。」
アナウンス「置き石による脱線は非常に珍しく、偶然か故意なのかまだわかっていないようです。」
・・
・・・・
「お金を払えば賃貸の保証人になってくれるサービスもあるわ。」
お金が必要ですよね。
「そういうこと。幸せな人からちょっとお金をいただきましょう。どうせ汚い金よ。」
汚いお金かはともかく、どうすればいいんですか?
「年寄りがいたら持ち物奪って逃げれば簡単♪」
・・お年寄りから奪うのはちょっと気が咎めるなぁ。
「この悪しき社会を作った元凶じゃない。根こそぎ奪えばいいのよ。」
うーん・・でもなんか申し訳ないなぁ。
「なら暴力団員から奪いましょう。」
いーやーだー。一般人!そう、一般人から奪おう!
「お年寄りは一般人じゃないとでも?」
そんなことないです!
えっと、ほらなんというか、大人の男性?
「ふふ、あなたがまさに大人の男性ね。」
「みんなそうやって大人の男性に犠牲を強いるのよ。その結果があなた・・」
「本当の弱者って誰なのかしらね。」
・・何も言い返せなかった。
「まぁいいわ。社会への復讐・・その究極は人類の絶滅よね。どうせみんな死ぬならどこから始めても同じ・・」
え?僕も死ぬんじゃないそれ?
「あなたが最後の人類になるのよ。私が導いてあげる♪」
「みんな平等に死ぬの。例外は許さないわ。」
なんか着地点がやばい。
「大人相手なら逃げ方を考えなくちゃね。」
罠を仕掛けるとか?
「簡単な罠が向こうにあるわ。」
悪魔さんがいると楽でいいな。
これは堕落しちゃう。
・・
・・・・
六郎「・・踏切?」
列車強盗でもするの?
「電車が来る直前に奪って逃げるの。電車が来たら追いかけて来れないでしょ?」
それって僕が電車に引かれるフラグっぽい!
「行き当たりばったりでやればそうかもね。ちゃんと練習しましょ。」
練習?
「奪ってから踏切を超えるまでの時間を計るの。ああ、遮断機は下りてる前提で走ってね。」
言われた通り走って時間を計った。
「実際は奪った荷物があるから、その時間より多少かかると思いなさい。」
は、はい!
失敗したら死ぬからなぁ・・自然と緊張する。
「そろそろ電車が来る時間ね。」
じゃあ持ち物を奪う相手を決めなきゃ!
「その前に、警報が鳴ってから電車が来るまでの実時間を計りなさい。」
「タイミングを間違えると、奪われた相手が踏切超えて追いかけて来るわ。」
それもそうだ。
遮断機が下りても電車って中々来なかったりするんだよね。
時間わからないとタイミング間違えて僕が電車に引かれるかもしれないし。
「完璧な準備をしてなお足りないものよ。一分たりとも油断しないように。」
はい!
犯罪って仕事より大変そう。
僕は警報が鳴ってから電車が来るまでの時間も計った。
「誤差は絶対起こるわ。その値は参考程度・・過信はしないように。」
は、はい!
でもこれなら信号機でもできるんじゃ・・?
「青から赤に変わった直後だと追いかけて来るわ。赤信号で車が走っていないとダメだけど、その場合はあなたが引かれるわ。」
・・電車の方がマシかぁ。
なんか、普通に働いた方がマシな気がする。
・・
・・・・
準備は万端、後はタイミングよく人が来てくれたらだけど・・
「走ってる人がいいわね。適度に疲れてるから逃げやすいわ。」
そんな都合よくいかないと思います。
あ・・向こうからカバン持って走って来る男の人が。
警報が鳴りだした。
都合よい人!?
「やったね♪」
正直、心の準備はまだだけど、こんな機会そうは起こらないだろう。
ええい覚悟を決めろ僕!
・・どうやって奪えばいいんだろう?
「体当たりでもすれば?」
よ、よし。
男の人は後ろを気にしているようだ。
僕のことはあまり注意していない。
ドンッ!
真横に来たところでタックルした。
男「え?」
カバンを奪って逃げる。
逃げる逃げる逃げる!
遮断機の下りた踏切に入る・・電車は・・こちらに向かっているけどギリギリか?
踏切を超えたところで後ろを振り返る。
男は追いかけて来ない。そして電車が来た。
完璧だ!!!
悪魔さんの完璧な指示通りでうまくいった!
今のうちに距離を稼ごう。
老人「おお、ありがとうありがとう!」
六郎「え?」
なんかいきなりお礼言われた。
老人「ワシのカバンを取り返してくれてありがとう!」
・・は?
「同業だったみたいね。」
男の人が後ろを気にしてたのって・・追いかけて来ないか気にしてた?
おおい!ひったくりするなら自転車かバイク使えよ!!!
「あなたも走ったくせに。」
老人「ありがとうありがとう。そうじゃなにかお礼を・・」
六郎「い、いえ急いでますので。えっと・・良かったですね。」
老人「本当にありがとう。おかげで助かったよ。」
僕は逃げ出した。
・・
・・・・
六郎「はぁ~・・」
駅に戻ってひとり溜息。
「悪いことしたつもりなのに感謝されても喜べないし、カバンは返しちゃったし、罪悪感だけ残ったって感じ?」
うん。
こんな感覚初めて。
「くよくよせず再チャレンジ!逮捕されなければ何度でもチャンスはある!」
今はなんかやる気でない~。
「じゃあ夜まで休憩しましょ。」
夜になんかあるの?
「盗みに入るのよ。貯め込んでるお金を頂戴しましょ♪」
社会への復讐とか関係なく、ただの泥棒な気がする。
「いいのよ。あなたは何をしても許される。」
「悪いのはこの世の中。すべての土地に所有者を決めて、法を押し付けた。」
「あなたはそのルールを守った上で不幸になった。なら間違っているのは世の中の方。」
「あなたを不幸にする法なんて守る必要ないわ。」
うーん、そうなのかなぁ・・?
「あなたの苦しみ、それは罰よ。でも罪は犯していない。」
「罪を犯せば罰があるように、罰に応じた罪を犯すの。」
「あなたが苦しんだ分だけ社会を壊せばいい。それで公平になるわ。」
難しくてよくわからない。
罪と罰をイコールにするんだよね?
でも罪に対する罰を与える権利って国が持ってるんじゃないの?
国が罰を与えるから、私刑はやめてねって話だったような。
「そう。でも罰に対する罪は定義されていない。」
「罪と罰の総量を公平にするなら、罰を受けた者は罪を犯さないといけない。」
「あなたは罰を受けたわ。これからは罪を犯しなさい。」
んーまだわからないや。
罪を犯したら罰を受けるのはわかる。
罰を受けたら罪を犯すってのがちょっと・・
「罪を犯しなさい。そうすればわかるわ。」
よくわからないから、まぁとりあえずその通りやるか。
・・
・・・・
その夜。
六郎「盗みかぁ・・どういうところが狙い目なんだろう?」
泥棒初心者の僕にはさっぱり。
「外から中が見えにくい方がやりやすいわね。塀や垣根で1階が覆われている家を探しなさい。」
ええと・・あった。
あるようでなくて、ないようであるね。
「外から見れない家は危険だって何度も紹介されているの。」
「それでも対策しないのはその程度の防犯意識ってこと。」
純粋ってことだと思う。
ワラ夫さん家か。
・・そんなところから盗んでいいのかな。
心が荒んだり・・
「バカは死ねばいいのよ。」
そんな><
「冗談♪みんな死ねばいいのよね。」
それもどうかと。
えーと、とりあえず電気ついていないし、こっそり忍び込めばいいのかな。
「そうね。でもこそこそする方が怪しいから堂々としなさい。」
はい。
門から入って・・玄関は鍵かかってる。
庭に回って窓から入ろう!
・・
・・・・
庭へ行くとカーテンがなびいてる・・あ、ガラス戸が開いてるんだ!
わーいラッキー。
男「・・か?」
男「いや・・・・ぞ。」
あれ?家人いるじゃん。
それにしては電気もつけずにどうしたんだろう?
そこで僕は気付いてしまった。
ガラス戸に丸い穴が空いている・・
つまりこれって・・・・泥棒だ!
「はぁ・・また同業?」
たーいーへーんーだー!
六郎「泥棒だ!泥棒!ワラ夫さん家に泥棒がいる!!!」
僕は叫びながら走りまくった。
六郎「ワラ夫さん家に泥棒がいまーす!!!!!」
・・
・・・・
駅に戻って椅子に座り、天井を見る。
六郎「・・怖かった・・」
泥棒がいるなら看板でもつけといてよ。
「根性なし。あの泥棒に罪を着せるとかできないわけ?」
どどどどうやればそんな!
「泥棒を気絶させてその間に盗む。で、通報。罪は全部かぶってもらうの。」
なんという極悪人。
あ、悪魔だっけ。
「悪魔で~す♪」
軽いなぁ。
結局今日もここで夜明かしかぁ・・お風呂入りたい。
「タオル濡らしてトイレで体でも拭けば?あと顔洗うとか。」
そうします。
顔を洗い、トイレで体を拭いた。
ちょっとすっきり。
「もっとスッキリしたくない?」
お風呂入れるの?
「そうじゃなくて、シモの方♪」
えっと・・それってつまり・・エッチなこと?
それこそお風呂入らないといけない気がするけど。病気とか怖いし。
「いいのよそんなこと気にしないで。これも社会への復讐よ。」
「好きなことを好きなようにすればいいの。」
かわいい子とラブラブなエッチがしたいです。
「できると思う?」
無理だと思います。
「ええ。だから・・レイプするのよ。」
な、な、な、そんなひどい!
「気を遣いながらエッチするとか面倒よねぇ。欲望のままエッチするのって最高に楽しいわよ。」
い、いやでも、そんな残酷じゃ・・
「あなたが受けた罰はこの程度じゃ済まないわ。もっと罪を犯しても許されるわ。」
そ、そう?
「好みのタイプとかある?」
えっと・・恥ずかしいんだけど、女子高生とか好きです!女子中学生も大人びた子ならあり!
「そう、素直になっていいの。あなたを苦しめる法なんて無視していい。」
「本能の赴くまま楽しいことをすればいい。誰もが幸せを求める権利があるのだから。」
よ、よーし。
それでどうすればいいですか?
「あなたはどうしたい?」
どうって・・え?エッチなことにやり方とかあるんですか?
「これだから童貞は・・」
うわーん関係ないでしょ!
・・いやあるのか?
「そうねぇ・・抵抗する女の子がいい?それとも従順な女の子がいい?」
従順な子がいいです!
「これだから童貞は・・」
えええ?関係あるの?
「早く脱童貞すれば?答えがわかるわよ。」
さすがに相手がいないと・・
「・・彼女いたんじゃないの?」
彼女がいてもエッチするとは限らないわけで・・
まぁ・・その・・で、どうすればいい?
「女の子を従順にさせるなら簡単。ふたり誘拐するの。」
ふたり?
「片方に言うこと聞かないと殺すと言うの。あなたのバカ面だと女の子は反発するから、その子を殺す。」
・・え?殺す?
「すると残った方の女の子はいいなりになる。ハッピーエンド。」
あの・・殺さないとダメ?
「人間の想像力は貧困・・曖昧にしかイメージできないの。殺すと脅しても本気にしないこともある。」
「でも目の前で殺せば現実を理解する。視覚情報って強いわ。」
なんて残酷。さすが悪魔さん。
でも女の子を殺すのか・・できるかなぁ・・
「すべてを憎むのよ。残酷であればあるほどあなたの苦しみを癒してくれる。」
もし癒されなかったら?
「あなたの頭がおかしいのよ。」
そうなの・・かな・・?
よくわからない。
・・
・・・・
「あなたの貧相な体じゃ女の子でも本気で抵抗したら捕まえられない。」
六郎「・・」
「武器を用意しましょう。」
あの・・やっぱりやりたくない・・
やりたくないよ。
「そう?ならあなたの末路は野垂れ死に。ごくろうさん♪」
僕は幸せになりたい。でも、他人を不幸にしたいわけじゃない。
それじゃダメなの?
「ええ、ダメ。他人と競争して、他人を蹴落とし、他人を不幸にしてやっと幸せになれるの。」
「それがこの世界。あなたたち人間の選んだ道。嫌なら死になさい。」
生きたいよ。みんなが幸せな世界はダメなの?
雇い主「おや?なんか臭いのがいるぞ。」
六郎「あ。」
僕をクビにした社長・・
雇い主「うっわ汚ぇ!お前風呂入ってるか?」
六郎「いえ・・アパートが火事になって・・」
雇い主「お前が火をつけたのか?」
六郎「まさか!」
雇い主「どうだか。前からお前気持ち悪かったんだよ。」
六郎「・・」
雇い主「お前をクビにして職場が明るくなったわ。ははははは。」
社長は楽しそうに去って行った。
六郎「・・」
なんでかな。
苦しい。
「あなたは罰を受けたわ。それに見合う罪を犯すのよ。」
なら・・さぁ・・
社長を殺せばいいかな?
「いいえ。女子高生で気持ちよくなりなさい。」
無関係な人を狙うのはおかしいんじゃない?
「無関係な人を狙わないなんて、社会の常識よね。」
「あなたはこの社会に復讐するの。だから逆よ。無関係な人を狙いなさい。弱者を狙いなさい。」
「社会のルールを守って不幸になった。これからあなたは社会のルールを破ることで幸せになる。」
・・悪魔さんの言ってることは理にかなっている気もする。
でも、社会のルールを破っても幸せになれるとは限らない。
「何もしないで誰かがあなたを助けてくれる?」
ううん。
「社会のルールを守ってあなたは不幸になった。」
「何もしないで幸せになんかなれない。」
「あなたに残された選択肢は?」
・・社会のルールを破ること・・
「それが自然よ。さ、かわいい女子高生で幸せになろう♪」
うん・・
「必要なのは?」
武器。
辺りを見る・・鉄パイプがあった。
鉄パイプを拾い上げた。
「女の子を監禁する場所が必要ね。人の来なさそうなところを探しましょう。」
人の来なさそうな場所・・できれば建物の中がいいな。
こういう営業していない倉庫とか・・中に入れないかな。
敷地に入ってみた。
・・
・・・・
うーん、突然持ち主が来るかもしれないし、こういう場所は安心できないなぁ。
・・絶対安全安心な場所なんて無さそう。
世の中の悪人はどうやってるんだろう?
男「・・な!?」
六郎「・・え!?」
曲がり角で人と出会ってしまった!
不法侵入で咎められる!
男「誰だ!」
男は・・拳銃をこちらに向けた。
「鉄パイプで応戦」
言われるまま鉄パイプで男を叩いた。
男は・・血を流して倒れた。
なんで拳銃なんか・・でも・・
やった・・
やってしまった・・
「いい感じ♪その調子で残り人類を0にしよっ♪」
死んだの?
「ええ。ちょうどいいからみんな殺しちゃって。」
ぼ、僕とんでもないことを・・
「窓から倉庫の中をこっそり見てみて。」
窓?
言われた通りこっそり見てみる。
・・中では、男たちと縛られた女の子たちがいた。
「また同業(笑)」
これって・・誘拐?
「わざわざ女の子を捕まえる手間が省けたね♪」
「男は残り3人。ひとり見回りしてるから待ち伏せして倒そう♪」
う、うん。
曲がり角で待つ。
あ、男が持ってた拳銃使う方が楽じゃない?
「銃は訓練しないと使いこなせないわ。鉄パイプで十分。」
そっか・・
男の足音が聞こえる。
僕は・・鉄パイプを振り上げた。
男「!?」
ゴン!
鉄パイプは男の頭に命中して鈍い音を奏でた。
男は倒れ鉄パイプに新たな血をつけた。
「あはは、お上手♪」
心臓がバクバクいってる。
手が震える。足が震える。
「残り2人。2対1は勝てないから絶対にタイマンで戦うよーに!」
どうすればいいですか?
「待っていればひとり様子を見に来る。持久戦ね。」
ごくり・・
あれ・・あ、目が乾燥すると思ったらまばたきしてなかった。
これが夢ならいいのに。
死体をふたつ見ながらそう思った。
・・
・・・・
待ち時間は長かった。と思ったけど5分くらいだった。
3つ目の死体を見下ろしながら感覚がマヒしてきたのかなと思った。
「あっとひっとり♪」
「倉庫の入口に潜んでいれば残りが顔を出すわ。あとは鉄パイプアタックで攻略!」
あなたは・・本物の悪魔だ。
「ありがとう♪」
僕さ、もしかしたら二重人格になったんじゃないかなーってちょっと思ってたんだよね。
でも違った。僕はこんなに頭よくないから・・
「解離性同一性障害ってやつね。滅多にないから安心していいよ。」
はぁ・・まぁ悪魔さんが安心していいって言うならそうなのだろう。
倉庫の入口へ行くと、男の怒鳴り声が聞こえて来る。
男「あいつら揃いも揃ってなんで帰って来ない!」
男「サツか?いやまさか・・くそったれ!!!」
カツ、カツと男の足音が近づいてくる。
「鉄パイプを振り上げて~」
鉄パイプを振り上げる。
「はい振り下ろす。」
ゴンッ!
男は白目をむいて倒れた。
「もう大丈夫。中に入って。」
倉庫の中には縛られた女の子が6人いた。
手足を縛られ、目隠しをされ、さるぐつわを付けられていた。
目隠しで目は見えないけど、若い娘だってことはわかった。
「今ならやってもバレない♪誘拐犯に感謝!」
「好みの子を襲っちゃえ!あ、恥ずかしいなら後ろ向いてるね♪」
声だけなのに後ろとかあるのかな。
なんでこんな悪いことが、すんなりうまくいくんだろう。
この世界は・・やっぱり間違ってるよ。
六郎「僕・・もう無理・・」
泣きながら、携帯を取り出して110番した。
「あーあ。ゲームオーバー。」
・・
・・・・
まもなく警察がやって来て、女の子たちは救助された。
僕は・・殺人の容疑で逮捕された。
取り調べでも、裁判でも僕はありのままを話した。
だけど悪魔さんのことは信じてもらえなかった。
そして僕は、死刑判決を受けた。
・・
・・・・
朝9時、僕の死刑が執行されると連絡が来た。
すぐ違う部屋へ連れて行かれ、僅かながら最後の時間を過ごした。
お祈りは事前に断っている。
僕は神を信じない。
執行の時間が来た。
僕は白装束に着替えさせられ、死刑部屋へ連れて行かれた。
最後に言いたいことはあるか聞かれた。
六郎「悪魔さんに、期待に沿えなくてすみませんでした。って言いたいです。」
そして僕の死刑が執行された。
END.
あとがき。
いつもはあとがきを別ファイルにしていますが、短い話なのでまとめます。
まずは読んでくださってありがとうございます。
この話はふたつの要素で構成されています。
”悪を欲して善を成す”
”罰を受けた者が罪を犯す”
前者はゲーテさんのファウストが元ネタです。
ただ、見たことないんですよね私。
なんで知っているかっていうと、よく使われるネタだから。
解釈も色々ですが、今回はふたつの解釈を使用。
”悪いことをやったら結果いいことになった”
”悪いことを勧められ、それを拒否することで正しい道を進もうとする”
正しい道かと言えば、死刑ルートなので違うとは思いますが。
電車脱線しているし人を殺しているし全部いい結果というわけでも・・
まぁ、イメージ程度です。
後者はエロゲが元ネタです。
実はこっちも未プレイ。
ソフトは買いました。ゲームを開始できない素敵なバグゲーでした。
パッチを当てたら始めることはできましたが、とてもまともにプレイできなかったです。
20年くらい前に発売したゲームです。私が買ったのはもう少し経ってからでしたが。
あまりにも昔なのでソフト名すら忘れました。実家帰ればわかるかもしれません。
ええと、いじめ被害に遭って入院した女の子がいて、主人公はその子の代わりにいじめっ子へ復讐する話・・だったはず。
その入院した女の子のセリフがこんな感じでした。
”私、罰を受けたわ。これからは罪を犯すの。”
つまりいじめという罰を受けたから、復讐という罪を犯すということ。
なお検索してもヒットしなかったので、実際のセリフは違うかと。資料が手元になくて・・すみません。
罪を犯したら罰を受けるのは普通ですよね。
罰を受けたら罪を犯していい・・なんてことはありません。
どれだけ罰を受けようが、罪を犯したら裁かれます。
全年齢向けに書いたので、その方向で終わりを書きました。
殺人という罪を犯したから主人公は死刑です。
※あ、殺人の描写があるので15禁になりました。全年齢向けって難しいですね。
もし18禁なら、誘拐犯は気絶止まり。助けた人たちから主人公も助けられ、
助けた女の子たちからモテモテなハーレム路線になったでしょう。
・・全年齢向けの方が残酷という謎現象。あれ?
なんか・・ですが、罪を犯すことを肯定するような話は全年齢向けにふさわしくないかなーと。
それだけの話です。
2018年5月13日
書いた人:おぺ