36話 案内人
______まえがき(登場人物のおさらい)______
【佐藤 (Lv.4)】一人称は平仮名の『おれ』。職業は踊り子。爬虫類が大の苦手。
【トアタラ (Lv.5)】呪いによって人間に変えられてしまった少女。
【リリサ (Lv.29)】ロリっこフェイスの歌女。呪いによって体を男に変えられた。
【???】仮面をつけた案内人。
【シン先生 (Lv.99)】謎の占い師。Lv.99というのは自己申告のため怪しい。
荒くれ男たちには、2度と入村しないことを約束させた。彼らからぶんどった金品は、被害に遭った店主にすべて譲ってやった。
食後、大聖堂に向かった。トアタラが顔をのぞいてくる。
「佐藤、ご機嫌ですね」
「まあな」
そりゃそうだ。いまからステータスを確認しにいくところなのだ。絶対にレベルはあがっているはずだ。自信ならある。
何しろクラゲのような魔物を退治したんだし、さっきも大男のチンピラをやっつけてやったのだ。でも……クラゲのやつと闘ったときって、あまり活躍できなかったんだっけ? 大男との闘いの際も、一番おいしいところはトアタラに奪われたんだよな。
この村の大聖堂に到着。思っていたよりもずっと簡素で小さな木造建物だった。こんなところでステータスが確認できるのか、と不安になるほどだったが、中に入ってみるとちゃんと石板がおいてあった。
21歳のリリサに「年長者からどうぞ」と順番を譲ってやると、足を思いっきり踏みつけられた。実はその怒った顔が見たかったのだ。可愛い……。男だけど。
しかし彼女もとい彼は、レベルアップするような活躍は一切なかったということで、今回のステータス確認は見送りとするそうだ。
ではおれが……。
ああ、わくわくする。ますます気分が高揚してきた。早く結果を知りたい。
トアタラを横目にちらりと見た。そうだよな。レディーファーストとしようか。
はやる気持ちをぐっと抑え、トアタラに譲ることにした。
「いいえ。わたしは佐藤の次にします」
そうか、そうか。そういわれてしまっては仕方がない。おれが先か。
よし、いくぞ!
トアタラが笑みをこぼしている。
「いい結果がでてるといいですね」
「おう」
気合を入れて、石板に手をかざした。
あなたのステータスは以下のとおりです。
レベル 5
職業 踊り子
攻撃力 21 + 4 + ?
防御力 17 + 0
持久力 17 + 0
敏捷性 28 + 15
魔力 1 + 5
魔法 使える魔法はありません
特技 インド
所持金 84,614
装着品 盗賊の証 魔人のウルミ 小刀 炎の指輪
その他 特にありません
レベルが1つだけあがっていた。しかし攻撃力などの数値のあがり方は、相変わらず微妙だ。なんだかモヤモヤする。でもまあ、こんなもんか。
続いてトアタラの番だ。
あなたのステータスは以下のとおりです。
レベル 7
職業 愛玩動物
攻撃力 17 + 75
防御力 23 + 8
持久力 16 + 0
敏捷性 14 + 5
魔力 39 + 16
魔法 使える魔法はありません
特技 天気予報、暗視 物品鑑定
所持金 10,181マニー
装着品 白闇の鏡 仔龍の短剣 魔女のローブ 大地の靴
光の髪飾り 魔女のイヤリング 聖水の指輪
その他 呪われています。ただし満月の夜間のみ呪いが解かれます。
2つもレベルがあがっているではないか。魔力の数値も驚異的だ。
「すげえよ。順調じゃん」
「いいえ、運がよかっただけです」
今度は案内人が石板の前にやってきた。ステータスを確認するつもりなのだろう。
しかし首をかしげている。いままでステータスを確認したことがなかったのか?
手をかざせばいいのだと教えてやりたいが、シン先生からはこういわれている。
③案内に関すること以外で、この案内人とは口を利かないこと
だから手を前にだすジェスチャーをしてやった。
案内人はそれを見て、石板に手を向ける。
光の板が浮きでてきた。
あなたのステータスは以下のとおりです。
レベル 1
職業 サドゥヴィ
攻撃力 3 + 1
防御力 4
持久力 3
敏捷性 2
魔力 10 + 16
魔法 使える魔法はありません
特技 おねだり たかり ゆすり カツアゲ
所持金 0マニー
装着品 癒しの杖 僧侶の証
その他 特にありません
案内人は舌打ちした。ステータスの内容が気に入らなかったらしい。
ところで職業のサドゥヴィってなんだろう? 残念だが尋ねることはできない。
レベルについてはまだ1だ。子供だからか。全体的に各数値は低いが、魔力はそこそこ高い。
それからちょっとイヤな特技を具有している……。
あと何かを見落としているような気がするがなんだろう。
ああ、わかったぞ。これはすごい。
案内人の前に立つ。両手をその子の両肩に乗せた。
「いやあ、びっくりしたぜ。お前、呪われてないんだな!」
案内人はおれの両手を、汚らしそうにふり払った。
背後からリリサの声。
「あたりまえでしょ。呪われている人なんて、めったにいないのよ。それに案内人には口を利くなって、いわれてるんじゃなかった?」
「そうだった」
これでステータスの確認は終わった。
大聖堂の外へでようとしたところで、リリサが何かに気づいたようだ。
「変ねえ」
石板を見ている。というより、視線の先はその下にある台座板のさらに下側だ。何かがハミでている。上2枚の石板が少しずつズレているせいだ。
案内人も気になったようだ。ズレた石板を浮かせ、ハミでたものをひっぱった。
「駄目よ、勝手に動かしては」
リリサが注意した。
案内人には口を利いてはいけないことになっている。だがこの場合は仕方あるまい。シン先生もじゅうぶん理解してくれるはずだ。
しかし案内人はリリサを無視し、完全に抜きだしてしまった。
まったく勝手な人だ。
さて、案内人が抜きだしたのは紙のようなものだ。全部で5枚あった。
「あら、その羊皮紙、ビッシリと文字が書かれているわね」
リリサによると、紙ではなく羊皮紙というものらしい。
それはそうと、さっき他人に注意していたくせに、ずいぶんと興味深そうに見ているではないか。眉間に皺をよせちゃって。
「そんな考えこんで、どうしたんだ」
「読めないのよ。崩してあるっていうか、昔っぽい文字だから」
もとの世界でいう草書体のようなものか。
リリサに代わって目を通してみる。
おれには読めた。崩したような文字でも、おれには関係ないようだ。
「村の過去の記録だ」
「この文字が読めるなんてすごいじゃない」
リリサが感心しているが、おれが読めるのはチートみたいなもんだ。
終わりの部分を少し読んでみた。
※ちなみに案内人の職業『サドゥヴィ』とは、(現実世界の)インドで苦行僧とか修行僧とか乞食僧とか呼ばれているサドゥーの女性版です。




