文化祭といえば人付き合い
「で、どうだった?
聞くまでもないか?」
タケゾウとキヨトは開けた窓の
サッシに腕を乗せ
話し合いを始めた。
「そうだね。
今日のことを簡単に言うと
みんなが真剣に買い出しとか
話し合いをしている最中に
笑ったり、くだらないと
言ったそうだよ。
前にも何度も誘ったり
したそうだけど
全て断られて
何もしなかったそうだ。」
「そうか。
そりゃ確かに怒るわな。
じゃ、俺達の問題はこれを
どう解消するかだな。」
「そう…だね。
日数も少ない。」
「そうだな。
それで、何をどうするのが
最善だと思う?」
「最善はやっぱり仲直りと
作業への協力だろうね。」
「そりゃそうだな。
で、妥協案は?」
「うーん。
今からだと厳しいかもしれないが
班を変えるとか?」
「そうだな。
あとはもう班活動はさせない。
一人がいいなら一人で
できることを役割として
振るってのがいいんじゃねえか?」
「そんな!
一人でなんてきっと思っていないよ。
そんな文化祭寂しすぎる。」
「一人がいいってやつも
中にはいるさ。」
「そんなの間違ってる。」
「そうかもな。
さて。
結局本人に意思確認しないと
話なんて進まないから
本人に聞きに行くか?」
「…。
そうだね。
それが一番だ。
まずは本人にどう思ってるか聞いてからだね。」
「じゃそうしよう。」
「今日はさすがにもう遅いし
明日、聞いてみよう。」
「わかった。」
とりあえず話し合いは
本人の意思を尊重するという
よくある答えで落ち着いた。
そして翌日。
ショウジロウが
登校することはなかった。
そこでタケゾウとキヨトは
ショウジロウの自宅を訪ねてみたが
インターホンを鳴らすと
母親が出て来て
体調が優れないから
起き上がれないと
タケゾウとキヨトに伝えた。
お大事にと
二人は母親に声をかけると
その場を後にした。
『あいつ…。
もしかしてこのまま
文化祭終わるまで
出てこないつもりかもな。』
タケゾウは帰り道
そんなことを考えていると
キヨトが話し始めた。
「体調不良だったんだね。
もしかしたら学校に来たくないのかと
思ってたから
少し安心したよ。
あ、体調不良なんだから
安心したっていうのは間違いかな。
はは。」
そう言ったキヨトの顔を
なんとなくタケゾウは見た。
安心したという言葉とは裏腹に
とても心配そうな顔をしていた。
「そう…だな。
安心したは少し違うかもな。」
「はは。
そうだよね。」
「お前…。
ショウジロウのこと心配なのか?」
「そりゃそうだよ。
クラスメイトだからね。」
「ふーん。
…。
いい奴だな。」
「…。
そんなことないさ。」
キヨトは歩きながら
少し悲しそうな顔をして
空を見上げた。
「以前から…。
いつからかはわからないが
孤立しているのは知っていたんだ。
なのに何もしなかった。」
「そんなこと言い始めたら
俺だって気付いていたさ。」
「…。
もしかしたら
クラスの全員が気付いていたかもね。
それでも何もしなかった。」
「好きで独りでいる可能性も
あるだろうよ。」
「その通りだね。
でも結果がこれだ。
飾り付け班は言い争いになってしまった。」
「まさかそれがお前…キヨトのせいだとでも?」
「はは。
さすがにそこまでは思ってないよ。
でもこの結果を変えることが
できたかもしれない。」
「お前な…。
正義感強いにも程があるっての。」
タケゾウはキヨトの背中をポンと叩いた。
「そうだね。
いつも結果が出てから
後悔してしまうんだ。
こうしていれば、ああしていればって。」
「意外だな。
結構考え込む
タイプなんだな。
それにそんなこと
人にいうタイプじゃないと思ってたよ。」
「そうかもね。
…。
多分、対等に話してくれているからかな。」
「俺がか?」
「うん。
どうしてかはわからないけど
みんな特別扱いのような
何かを祀り上げるような
そんな話し方ばかりされる気がするんだ。」
「あー。
それは何となく見ていてわかるよ。
でもそれは
お前が努力したからじゃないのか?」
「努力?」
キヨトは全くわからないと言わんばかりに
タケゾウの方を向いた。
「ああ。
いつもそんな細かいこと悩んで
周りに気を使って
正義感が強くて妥協できなくてさ。
それに人を疑ったり
悪口を言わない。
普通そこまでできないもんなんだよ。
お前が努力したつもりが
無くても
周りにいる奴らは
それを努力しないとできないんだ。
それを考えれば
憧れとか尊敬とかで
周りがそんな話し方になるだろ?
さっきもそうだ。
母親が俺達に言ったこと
疑ったりしてないんだろ?」
「疑う?
具合が悪いってこと?」
「ああ。
あれは嘘だろうな。」
「そ、そんな!
嘘じゃないだろ。」
「その可能性もある。
ただ、タイミングを考えろよ。
このタイミングで起き上がれないほど
具合悪くなるのか?
風邪じゃないのは間違いないよな?
起き上がれないんだから。
そんな風邪はインフルエンザとか
何かだろ?
それを考えると
母親から何か違う言葉が出るはずだ。
移るかもしれないとか
インフルエンザだとかな。」
「そ、それは確かに。」
「曖昧すぎだろあの説明。
つまり、会いたくないから帰れと
そういう意味にも取れるってことだ。」
「で、でもそうやって
最初から疑うなんて…」
「俺は可能性の話をしたんだ。
本当かもしれないしな。」
「本当だよ。
子供のことで親が
嘘をつくはずない。」
「ははは。
ほんと真面目だな。
良いことだ。
そういうところが
きっとみんなを惹きつけるんだろうよ。
良いことだ。
将来、詐欺にあわないかは
心配だけどな。
ははは。」
キヨトは少しムっとした顔をしたが
タケゾウが自分を笑ってるのを見て
肩の力が抜けて同じく笑った。
「ははは。
詐欺には気を付けるよ。
こんなにはっきり言ってもらえることも
ないだろうしね。」
「俺は人の気持ちに鈍感だから
俺が思ったことしか言えないよ。
ちなみに俺も結構まっすぐなつもりだけど
お前には負けるよ。
ははは。」
「ははは。
じゃ勝ちだね。」
「あ?
他では俺の勝ちだろ。
総合的に俺の勝ちだ。」
「はは。
負けず嫌いんだね。
でもそれは一緒だよ。」
「へえ。
じゃ学校の教室までどっちが速く戻れるか
勝負しようや。」
「いいよ。
絶対に負けない。」
「行くぞ!
よーいどん!」
二人は無邪気に必死に走り始めた。
息を切
互いの顔を見る余裕も無く
学校まで全力で。
「二人ともまだかな?」
「そうだね。
もうそろそろ戻ってきても良い頃
だとは思うけど…。」
教室ではサヤとハルがタケゾウとキヨトの
帰りをグランドを見ながら待っていた。
グランドでは後輩達が部活動に勤しみ
校舎の中では吹奏楽部の
練習の音が響いていた。
文化祭の準備は順調に進んでおり
今日の分を終えた者達は既に帰宅していた。
「もうみんな帰っちゃったし
もう少し待って帰って来なかったら
私達も帰ろっか。」
「そうだね…
ってあれ?
なんか制服で走ってる人いない?」
「え?
ほんとだ…。
っていうかあれタケゾー達じゃない?」
ハルが何と無くグランドの先の
歩道に目をやると
そこには制服で走る
タケゾウとキヨトの姿があった。
「ぷぷ。
あの二人競争してない?」
「あはは。
なんでまたそんなことしてるんだろね。」
「男の子は負けず嫌いだからね。」
学校の外周をランニングしている
後輩達を抜き去り
走るったら走る二人。
「どっちが先にここまで来るかな?」
ハルはワクワクしている様子で
サヤに聞いた。
「どっちだろ?
楽しみだね。
ふふふ。」
サヤも同様にワクワクしているようで
二人は教室のドアを開け
タケゾウとキヨトを待った。
「「うおぉおおおらぁぁぁ!」」
教室のドアを二人は
同時に潜った。
「はぁはぁはぁ…。」
「はぁはぁはぁ…俺の勝ちだな。
つま先が俺の方が速く入った。」
「はは。
それは違うよ。
つま先が先に入ったのは…」
「俺だ。」
「いいや。
僕だね。」
「俺だって。」
「僕だ。」
「そもそもお前廊下走って良いのかよ?
ルール違反じゃないのか?」
「あ!
それは…。
はは。
たまには破るのもいいさ。
勝負だったしね。」
「あはは。
とはいえ俺の勝ちだけどな。」
「いいや。
それは…」
「「ぷぷ…あはははははは」」
そのやりとりを見ていた
サヤとハルが盛大に笑った。
「タケゾー。
もう…ムキになりずぎ。
ぷぷ。」
「あははは。
二人とも面白すぎ。
そんな汗だくになって
なんでそんなことで張り合ってるの。
あははは。」
「男の勝負だからな。
てか見てただろ?
どっちが速かった?」
「うーん?
どっちもどっちかな?
ね、ハル。」
「ははは。
そうだね。
どっちもどっちかな。
ふふ。」
「なんだよそれ。
仕方ねえ。
勝負はおあずけだ。
次は俺が勝つからな。」
「ははは。
それはこっちのセリフだよ。」
タケゾウとキヨトは顔を見合わせ
少し笑った。
そして四人は
笑い、話しながら
それそれの家路についたのであった。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価お願いします。
楽しんでいただければ幸いです。




