さんって付けないで
翌朝。
「へ、へっくしゅん!!」
タケゾウはそのまま外で寝てしまい
寒さで目を覚ました。
「風邪…引く…ぶえくしゅん!!」
タケゾウはムクっと立ち上がると家に戻り
ベットにダイブし布団に体を包んだ。
「タケゾウ!いつまで寝とるんじゃ!
起きんか!」
「ん?んん…わかった。」
タケゾウはゆっくりと
起き上がるとそのまま外に出ようとした。
「おいタケゾウ?
どこに行くんじゃ?」
「え?修練を…しないと…。」
「寝ぼけてないでさっさと飯食わんか。
冷めてしまうぞ。」
「あ、ああ。
飯…大切に…食わないと。」
そう言って席に着いたタケゾウ。
ようやく目が覚めたのか
飯を食べ始めた。
「ごちそう様でした。」
「ふむ。
ではタケゾウ。
顔洗ったら今日も狩りに行くぞい。」
「ああ。わかった。」
二人は支度を済ませ
森に向かった。
「う、うぐ…うえぇぇぇええ!」
タケゾウは今日も盛大に嘔吐した。
意識を変えても
そう簡単に克服できるものではない。
だが、今日は自分で
下手くそなりに捌いた。
そして手を合わせ『頂きます。』と心で呟いた。
『ふむ。
思ったより成長したようじゃのう。』
「じゃが…こらタケゾウ!!
吐くなと言ったじゃろう!!
この吐いた物にも命があるんじゃぞ!!」
「す、すまんベル爺。
もう吐かない。」
こんなやりとりをしつつ、家に戻った。
昼食を済ませたタケゾウは
外に出て修練を始めた。
森から出るまでに
木の棒を数本拾ってきたので
それをナイフで整形し
木刀風にして素振りをしている。
そして夜が来て飯を食い
修練をし寝落ちし
寒さで起きて布団に包まり
ベル爺に起こされ狩りに行く。
そんな日々を繰り返し
気付けば異世界に来て一週間が過ぎていた。
「タケゾウ!
まったくまだ起きてこんのか。
夜中にも何やら
外で修練しているようじゃが…
まさかそのまま
外で寝てるなんてことはあるまいな…。
起こしてやってくれんかのう?」
「しょうがないな。」
「タケゾウさん?起きて!!
いつまで寝てるの?」
「あ、ああ。
あれ?ルーナさん?
おはよう。」
タケゾウはそう言うと
外に出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って。
ご飯食べないといけないでしょ!
どこ行くの?」
「ん?あ、ああ。
飯、食わないと。」
三人は飯を食べ終え
ルーナが久しぶりに来てくれたので
今日からタケゾウの修練を
本格的に始めることにした。
「では、ルーナ。
今日はタケゾウの修練に
付き合ってやってくれ。
基本的なことから始めるか
それかまずは力量を見てやるのも良いのう。」
「わかったわ。
せっかく来たからそのくらいは手伝うわ。
じゃまずは少し手合わせしようタケゾウさん。
この前から少しは修練したんでしょ?」
「…。」
「ちょっと。
タケゾウさん!
聞いてるの?」
「ん?ああ。
すまん。
少しボーっとしてた。
今日はよろしくお願いします。」
「まったくもう。
もう少ししっかりしてよね。
じゃ早速始めよう。」
二人は早速外に出て
手合わせをすることにした。
「タケゾウさんは何が得意なの?」
「剣術を使える程度かな。
今のところ魔法はまったく使ってない。」
「なるほど。
じゃその剣術をどう伸ばしていくだね。
その棒を削った物使っていいから。
それで手合わせしましょう。」
「わかった。
ルーナさんは何も使わないのか?」
「あたしは特に使わなくてもいいわ。
本気できてくれないと
実力がわからないから本気できてね。」
「わかった。
よろしくお願いしゃす!」
タケゾウは棒を構えた。
一拍置いて
タケゾウが打ち込む。
ルーナは自然体のまま
スっと横に動きかわした。
タケゾウはかわした先に
そのまま剣筋をかえ
追撃したがそれも難なくかわされた。
「く!速い!」
「まだ何もしてないよ。
タケゾウさんが遅いのよ。」
「ぐ…まだまだ!!」
タケゾウは必死に間合いを詰め
木の棒を打ち込むが飄々とルーナはかわす。
まるで子供が大人に挑んでいるようだ。
『はぁ、はぁ、はぁ。
まったく歯が立たない。
くっそ…。
カスリもしないなんて。
それに少しフラフラする。』
「もう諦めた?
ところで制限解除もまだ使えないの?」
「はぁ、はぁ…まだ…やったことがない。」
「そう。
じゃやってみたら?」
「どうやってやるもんなんだ?」
「うーん。
あたしの場合は戦闘態勢に入ると
勝手になる感じだからな。
心の中で呟いてみれば?」
「わかった。」
『制限解除』
タケゾウがそう心で呟くと
突如体が軽くなった。
「おお、なんだこりゃ。
これなら少しは…。」
「できたみたいね。
じゃまた来てみて。」
「わかった!」
タケゾウは足にグっと込めた力を
大地に放ち
ルーナとの間合いを詰めた。
「お!?おお!!」
いきなりの体の軽さに思った以上に
前に飛んで行ってしまい
ルーナに突進をした形になったが
ルーナはさらりとかわした。
タケゾウは受け身をとったが
ゴロゴロと少し転がってしまった。
「う、うう。
加減が全然わかんね。
それにもう体軽くないし。」
「なるほど。
じゃまだしっかり意識してないと
維持はできないみたいね。
もう一度やってみて。
今度は…いや。
体全体を意識してやってみて。」
「わかった。
制限解除!」
そうやって何度か試したところで
タケゾウの体に異変が起きた。
「ぐ…体が重い。
しかも…これは筋肉痛…?
ぐ…まともに動かない。」
「なるほど。
これが今のタケゾウさんの
限界といったところね。
思っていたよりは良いかな。
じゃタケゾウさん。
もう今日は…」
「制限解除!」
「ちょ!人の話聞いてた?
今日はもうやめ…」
「まだ、手を合わせてすらいない!
まだ…まだいける!
このまま引き下がるわけにはいかない!
ルーナさん!
もう少し付き合ってくれ!」
「この男は…まったく…
いいわ。
じゃもう立ち上がれないように
今度はこっちから行くよ!!」
ルーナは一瞬で間合いを詰め
タケゾウの腹に軽く拳を突き出した。
その拳はタケゾウの腹に触れるや否や
ものすごい衝撃をタケゾウの腹に届けた。
そしてその衝撃によりタケゾウは
数メートルほど後方に体をくの字に折られ
飛ばされた。
「そ、そん、な…
こんなにも…
力の差があるのか…。」
タケゾウは腹を抑え
立ち上がったが
ダメージは色濃く出ていた。
そんなタケゾウに
ルーナは悠然と歩み寄ってくる。
『ち、からの、さが…大き…い。
け、れどせ、めて一太刀…。
くそ…それにフラフラす…る。
意識が…。
嫌だ。負けたくない…。こんなんで終わりたくない。
一太刀、一太刀だ。
集中だ。
集中…………。』
タケゾウは飛ばされながらも
なんとか手にしていた
木の棒を構え
瞑想し始めた。
『飛び込むには少しでも…
速く…速く。』
タケゾウは半身になり
左手に木の棒を構える。
そして右足、腹筋、左腕と
力を集中させる。
『制限解除!』
『タケゾウさんすごく
集中してるみたいね。
ん…?なんか体の周りに…霧?
というかあれは…魔力…?
薄っすらとしか見えないけど…見える?
もしかして魔法?
どこかに魔獣か敵が?!』
ルーナはタケゾウの周りにかかる薄い霧が
どこかからの攻撃だと思い、辺りを見回した。
『薄すぎてわからない!
けど今のタケゾウさんじゃ
あの程度でももしかしたら
致命傷になるかもしれない!
すぐやめて戻らないと!』
『集中…
こんなんじゃ足りない!
もっと、もっとだ!
制限解除!
制限解除!
制限解除!』
『あれ?タケゾウさんの周りにあったのが無くなってる…?
とにかく戻らないと。』
辺りを見回しながら
タケゾウに近づくルーナ。
「タケゾウさ…」
それはルーナが横を向きながら
タケゾウに話かけ
タケゾウのほうを
向こうとした瞬間におきた。
ルーナの頬にふわっと風が過ぎると
頭に何かの感触がした。
前を向いたときには
眼前にいたはずのタケゾウがいない。
「え!?嘘!?」
そう言って振り返ると
そこにはタケゾウが立っていた。
タケゾウの足は付け根から折れてしまい
歩くことができずその場に座り込んだ。
ルーナが慌てて歩み寄る。
「い、今のタケゾウさんが…?」
「へへ。
ようやく一本取れた。」
「すごいタケゾウさん!
けど…足折れてるじゃない。
もう少し力を調整しないと…。」
ルーナはそう言いながら
タケゾウに再生を施した。
「はは。
無理でもなんでもしないと
ルーナさんには
触れることもできなかったからさ。
けどようやく届いたよ。」
タケゾウはボロボロの体が悲鳴をあげ
動くこともままならない中で下手くそに笑った。
『この人…結構頑張り屋さんなんだ…。
てか…変な顔。
ふふ…なんか…可愛い。』
「……ふ、ふん。
少し油断しただけだし。
あんまり調子に乗らないでよね。
今日の教訓になるように
折れた所以外は再生しないから
この痛みが無くなるか
タケゾウさんの再生で治るまで
少し修練はお休みしてね。」
「あ、ああ。
けど俺に休ん…あれ?
なんか疲れが一気にきた…か?
フラフラ…する…。」
タケゾウは折れた足を再生してもらい
とりあえず立とうとしたが
突如として立ちくらみを起こした。
ルーナが抱きとめる。
「タ、タケゾウさん?
大丈夫?」
「あ、ああ。
ご…め…。」
言いかけてタケゾウは
意識を失った。
「タケゾウさん!
しっかりして!
タケゾウさん!!」
ルーナはタケゾウを背負い
家に戻った。
「ベル爺!!
タケゾウが!!
大変なの!!」
「どうしたんじゃそんなに慌てて。」
「ふむ。
あれほど夜は冷えると言ったのにのう。」
「ベル爺!
タケゾウは大丈夫なの?!」
「ただの風邪じゃろうて。
こやつ最近、朝方まで修練して
そのまま外で寝ていたんじゃろうて。
全く何をしとるんじゃか。
ルーナ。
すまんが看病手伝ってくれかのう?」
「か、風邪か。
いきなり倒れたから何かと思った。
けどなんでまたそんな
たくさん修練しているの?
昼間もやっているんでしょ?」
「さあのう?
誰かさんに怒られたのが原因かものう?」
ベル爺はニヤっと笑い、部屋を後にした。
「あ、あたし…別に
ここまでやれなんて言ってないもん!」
頬を膨らまし
タケゾウを見るルーナ。
タケゾウはベットで
少し苦しそうに呼吸しつつ眠っている。
ベル爺が木の桶に
水と濡らした布を持って戻って来た。
「じゃルーナ。
頼んだぞい。」
「わかった。
ベル爺は狩りに行くの?」
「そうじゃ。
こやつに食わせる物を探してくるわい。」
「そう。
気をつけてね。」
ベル爺は支度を済ませ
森に向かった。
ルーナは布を絞り
額に乗せ
再生で少し症状を緩和しつつ
看病に勤めた。
「う、うぅ。
なんか冷たい…。
これは…布?
あれ?ルーナさん?」
「ん…あ!!
あたし…
いつの間に寝てたの?!
ごめんタケゾウさん!
重かったよね!」
夕方、タケゾウは目を覚ますと
そこにはルーナが椅子に座り
ベットに眠るタケゾウの腹部にもたれかかり
眠っていた。
「これ…ありがと。
俺…確か倒れて…
そんで看病してもらったんだな。
気を使わせた。
すまん。」
「あのねタケゾウさん!
あたしは何も倒れるまで
やれなんて言ってないからね!
具合悪いなら
最初に言ってくれればいいのに!
風邪引いてたんでしょ?」
「ごめん。
なんかフラフラするなと
思ったんだけど…
風邪だったんだな、俺…。
あれ?でもベル爺かルーナさんなら
風邪も再生で治せるんじゃないの?」
「あのね。
魔法は万能じゃないの。
再生はあくまで再生させる魔法で
毒とか病気みたいな症状は
ゆっくりととしか治せないの。
神様達が言うには
体の中にいる菌?とかいうのが
再生を邪魔してるんだろうって言ってたけど…
とにかく!
もう無理するのは禁止!
わかった?」
「ああ。
わかった。
心配してくれてありがとなルーナさん。」
「別に心配はしてないわよ。
死なれたら責任…感じるじゃん。」
「そっか。
けど…ありがとな。」
タケゾウはルーナにお礼を言うと
立ち上がり外に出る準備を始めた。
「ちょ!!
何してるの!?」
「何って今から狩りに行かないと…
飯、みんなで食えないよ?
それに修練もしないと。」
「あ・の・ね。
人の話聞いてた?
今日はしっかり寝てなさーーーい!!」
ルーナの怒号が家に響き渡る。
そこにベル爺が入ってきた。
「なんじゃ騒々しい。
タケゾウ。
具合はもう良いのか?
あれほど夜は冷えると言っておいたろうに。」
「ごめんベル爺。
修練して
気付いたら外で寝ててさ。
面目ない。」
「まったく何をしとるんじゃ。
体調を崩しては
何の意味もないじゃろう。
食事はここまで運んでやるから
暖かくして食べるんじゃな。
ルーナ。
すまんがタケゾウに食わせてやってくれ。」
「わかった。
タケゾウさん。
大人しくそこで待っていて!!」
二人はそう言うと料理を運び始めた。
「二人とも…ごめん。
ありがとう。」
「困ったときはお互い様じゃ。
これに懲りてしっかりと部屋で寝るんじゃな。
さて、これでいいかのう。
じゃルーナ。頼んだぞ。」
ベル爺はそのまま部屋を後にした。
「じゃタケゾウさん。
何から食べたい?」
テーブルには
消化に良さそうなものが並んでいる。
おそらくおかゆだろうそれを
タケゾウは指差し
「これが食いたい。」
とルーナにお願いした。
ルーナは木のスプーンですくい
タケゾウに差し出す。
「はい。
えーと…どうぞ。」
「あ、ああ。
頂きます。
…ルーナさん?
あれなら皿ごとくれれば自分で…」
「い、い、いいから!!
べ、別に恥ずかしいなんて思ってないし!
気にしないで食べて!!」
ルーナが持っているスプーンは
タケゾウが食べるには
少し遠い位置でプルプル震えていた。
そして顔は緊張しているのか
目を逸らした上に
思い切り閉じている。
タケゾウは体を少し倒し
スプーンをパクっと口に入れる。
「ああ。
優しい味だ。
なんか体に染み渡るようだな。
もう一口食べたいな。」
「わ、わわ、わかった!
待ってて!」
ルーナはなんとか持ち堪えているが
相当恥ずかしいのだろう。
おかゆのような物に
添えられている梅干しのような物より
耳が赤い。
顔は依然として逸らしているため
確認できないが
おそらく真っ赤になっているのだろう。
そんなこんなでルーナが
恥ずかしそうにタケゾウに
飯を食べさせてあげるという行為は無事?終了した。
「ありがとルーナさん。
もうお腹いっぱいだ。
今日一日
色々とほんとありがとう。
こんなに付き合わせた
俺が言うのもあれだけど
王様の仕事とかは大丈夫?」
「大丈夫。
いつもしっかりやってるし。
タケゾウさんもこの一週間
体調悪くするくらいしっかりやったみたいね。」
「ああ
ルーナさんに言われてようやくだけどね。
あんなに呆れられたら
俺じゃなくてもこのくらいはやるよ。」
「べ、別にそんなつもりは…。」
「いーや。
あれは完全に怒る通り越して
軽蔑の類だったね。」
「そ、そんなつもりは…。」
「けど、おかげで歩みを止めなくて済んだ。
ありがとな。」
「あの…あの時は…ちょっと言いすぎた…かも。」
「そんなことないよ。
それにそんなしおらしいの似合わないよ。」
「な!あたしだって…。」
そういって顔をあげたルーナに
タケゾウはいたずらっ子のように笑いかけた。
『あ…また…。
なんか変。
ドキドキする。』
「…ふ、ふん。
気にしてなんてないし
別にしおらしくなんてしてないんだから。
それにあたしだって
一応乙女なんだからね!
そんな強い人みたいな言い方しないでよね!」
ルーナは頬を膨らまし
怒って見せたがタケゾウは
そんなルーナを見てさらに笑った。
「そういえばルーナさんのが歳上だし
俺にさんとか付けなくていいよ。」
「そ、そういえばそうね。
じゃこれからはそうするね………
…………タケ…ゾウ。
…………じ…じゃ!
これ洗ってくる!」
ルーナは食べ終わった
食器を手に取り
素早く部屋を後にしようとし
「アイタっ」とドアに
頭をぶつけ
部屋を後にした。
「くく。
変なルーナさんだな。
強くて優しくて美人で可愛くて
そして魔族の王で人気者で。
ほんとすげー人だな。
少しサヤに似てるな。
みんな今頃どうしてるかな…。
無事でいてくれ…。」
タケゾウは窓の外に浮かぶ月を見ながら呟いた。
『変、おかしい。
名前呼んだだけなのに…
なんでこんなにドキドキするの。』
急いで台所にきたルーナは
食器を流しに置き
洗い始めた。
「ルーナ。
どうしたんじゃそんなに慌てて。」
『なんなの。
こんなに胸が…』
「おい。
ルーナや。
これも一緒に洗ってくれんか。」
『一緒…
なんかもう少しタケゾウと話…したいな。
って何思ってんの!』
「じゃからルーナ。
これも一緒に…」
「べ、別に一緒になんていたくないんだから!」
「トゥゲダーっ!!」
ベル爺はまさかの右ストレートをくらい
窓から外に飛んでいった。
「なんかすげー音したけど、大丈夫?」
タケゾウが心配して部屋から出てきた。
「な、なんでもないよ。
そんなことより
部屋で寝てなきゃ…タケゾウ。」
「ルーナさん…
窓がないけど…
ベル爺はもしかして…」
「そ、そう。
いきなり窓破って出て行ったよ。
きっと何か急ぎの用があるんだよ。
そ、そんなことよりタケゾウ。
あたしのことも…
その…呼び捨てでいいよ。」
「こ、こんなに急いで…一体何が…
てか呼び捨てはできないよ。
ルーナさん歳上だし。」
『あ、なんだろう…すごくモヤっとした。』
「そんなの気にしないでいいよ。
これからたくさん呼ばれるだろうし。
だから呼んでいいよ。」
「うーん。
じゃ呼べたらね。
ところでこの窓…どうする?」
『流された!
タケゾウ…
嫌なのかな…
なんだろう…
すごくモヤモヤする…。』
「ルーナさん?」
「あ、ああ!窓ね。
これはベル爺に
責任持って直してもらうから大丈夫。
そんなことよりタケゾウ!
さん付けないで。」
「え?いやほら。
なんかそう言われると
恥ずかしいしさ。
呼べたら呼ぶからさ。」
『なんでここにそんなこだわるんだ?
窓壊れたままじゃ、夜冷えるんじゃ…』
『あーもう!
だんだんイライラしてきた!
こうなったら意地でも呼ばせてみせる!』
「タケゾウ。
恥ずかしいなら練習してみよ?
ほら。試しに呼んでみて。」
「い、いや…
あの…
ルーナ…」
「そう!それ!」
「さん…。
やっぱ恥ずかしいからそのうちね。
やべ…なんか
フラフラしてきたから寝るわ。
片付けありがとね。
じゃおやすみルーナさん。」
タケゾウは逃げるように部屋に戻っていった。
『ぐぬぬぬぬ。
あのまま呼び捨てにしてくれたらいいのに。
てかなんでこんなことにこだわるんだろうあたし…
モヤモヤしたり…
イライラしたり…
タケゾウが男らしくないからかな?
なんでだろ?』
ルーナは台所で一人
無くなった窓から
見える月を見上げ考えた。
月はルーナの疑問に答えるでもなく
微笑むように月明かりを運ぶのであった。
コツコツ投稿していきます。読んで頂ければ幸いです。