ショウジロウとタケゾウの過去
『どいつもこいつも
生きてる価値のない奴ばかりだな。』
ショウジロウは当時
他人を否定し
自分の存在意義を
無理矢理自分で作り出していた。
中学二年の同じクラスには
キヨト、サヤ、タケゾウがいた。
キヨトは運動神経抜群、成績優秀
優しく人望も厚い
まさに正統派リーダーのような存在だった。
サヤはそれの女子版といったところで
皆から頼られる
姉御的存在だった。
対してタケゾウはサヤの存在のおかげで
目立ってはいたが
特に誰かと親しくしている様子は無く
一人でいるわけではないのだが
一匹狼的な存在に
ショウジロウには見えていた。
ショウジロウはというと
クラスにもしヒエラルキーをつけるのであれば
ショウジロウ的には最下層の
人間達と共にいた。
勉強ができるわけでもなく
人付き合いがうまいわけでもなく
スポーツができるわけでもない。
ショウジロウからすれば
選ばれていない側の人間とでもいうのだろうか。
『俺はこんなクズ共と
同じじゃない。』
ショウジロウは常にその周りにいてくれている
人間達を馬鹿にしていた。
そんなタケゾウとショウジロウ達の
中学二年の少し昔の話。
「ショウジロウくん。
いつも僕たちといても面白くなさそうだよね。」
「そ、そんなことないよ。
いつもみんなでいるの楽しいよ。」
ショウジロウは心の中とは
裏腹にいつもおどおどしながら
人と話をしていた。
「ってもショウジロウはいつも
キヨト達かサヤ達のこと見てるよな。」
「あのグループは
やっぱ花があるもんねぇ。
それに比べて…ぷぷ。
あいつ一人で寝たフリでもしてんのかな?」
ショウジロウのグループの一人が
タケゾウを見て笑った。
「サヤ達のグループにいるくせに
いつも会話に混ざろうとしないし
協調性のカケラも無さそうだよな。」
「そうだよね。
けど…あれは本当に寝てるんじゃないかな?」
「ぼ、僕もそう思うよ。
タケゾウくんは余計な馴れ合いとか
しないだけだよきっと。
そ、それにタケゾウくん体育の時とか
僕達なんかにも
パスくれるじゃん。」
『お前らはごときがあっちの住人を
よりにもよってタケゾウくんを
馬鹿にしてんじゃねぇよ。』
ショウジロウは一匹狼風なタケゾウに
密かに憧れを抱いていた。
「あー。
僕も思ったんだけど
結構気にかけてくれたりするよね。
ぷぷ。
ということは僕らみたいなコミュ障なんじゃない?」
『それはお前だろ。』
ショウジロウはいつものように
相手を馬鹿にしながら
昼食を取っていた。
「もうタケゾー!
いい加減起きないと
お弁当食べちゃうぞ!」
「う…それは…ダメ…だ。」
それを聞いていた周りからは
自然と笑い声が溢れた。
『あぁ。
サヤ…ほんといい子で笑顔が可愛い。』
ショウジロウはそんなサヤを
いつも目で追っていた。
『あ、目が…。』
ショウジロウは慌てて目を逸らした。
サヤと偶然目が合ってしまったのだ。
恐る恐る顔を上げると
まだサヤがこちらを
見ていた。
『あ、あはは。』
ぎこちない笑顔を
返すとサヤはショウジロウにニコっと
笑いかけ、またタケゾウに
話始めた。
「ほら!
シャンとして!
ショウジロウくん達にも笑われてるよ!」
「ぐ…いただきます。
食ったら修練しねえとな。」
「それもまずは食べてからだよ!」
「だから食ったらって言ったろ。
うるせえなまったく。」
「あー。
そんなこと言うと
修練付き合ってあげないんだから。」
「いいよ。
一人で。」
「えー!
何でそんな冷たいこと言うのよ。」
「まったく漫才みたいだな二人とも。」
そこにキヨトもさりげなく加わってきた。
そんな光景を
ショウジロウは夢見心地で見ていた。
『サヤが笑ってくれた!
きっと俺のこと好きなんだろ!』
「なぁなぁ!
さっき俺のこと見てサヤが笑ってくれた!」
「ぷぷ。
それはないない。」
「そうだよ。
あれは僕のこと見てくれてたんだよ!」
「そ、そうなのかな…。
勘違いじゃない?」
「あ、ショウジロウ。
お前さっき名前呼ばれたから
内心俺だって思ってるんだろ?」
「そ、そんなことないよ!」
『俺に決まってるだろカスが。』
「けどいいよなタケゾウって。」
「な、何が?」
「あんな可愛いと美人が同居してるような
姉ちゃんいて。
しかも血は繋がってないとか
夢すぎる。」
「そ、そうだね。」
「ぷぷ。
家では一緒にお風呂とか
してるのかな?」
「僕なら入っちゃうな。」
「「「あはははは。」」」
「は、ははは…。」
『低俗な。
あぁ。
俺のサヤ…。』
周りの者を馬鹿にしつつ
ショウジロウの瞳にはサヤが
天女のように輝いて
見え始めていた。
そんな中、修学旅行の季節がやってきた。
「ほら席につけ。
さて…では修学旅行についての
班を決める。
三人一班だ。
あとは自由に決めていいからさっさと
決めろよ。」
「サヤ!!」
「キヨト!!」
先生がそう言った途端
クラスの者達は
一斉にサヤとキヨトの元に
向かった。
「あ、え、えーっと
タケゾーと一緒にって決めてるから…」
「み、みんな落ち着いて。」
そんな人混みが二人に集中し
諦めた者から班が続々と決まっていった。
「ほら早くしろよ。」
先生が決まっていない者達に
そう言った時、教室のドアが開いた。
ショウジロウが遅れて登校してきたのだ。
「ったくショウジロウ。
お前はまた遅刻してきたのか?」
この当時、ショウジロウは少し人と違ったことを
することがかっこいいと
ステータスだと思う所があったのだが
クラスで大々的に違うことをする勇気は
無く、遅刻という
人と違った行為で
自分をアピールするようになっていた。
「す、すいません。
寝坊してしまって…。」
「そんなんじゃ大人になってから困るんだぞ?
それに今日は修学旅行の班を決めているんだ。
早くしないと
仲間に入りそびれてしまうぞ。」
「え、ええ!」
ショウジロウにとってそれは誤算だった。
席に行くと
いつものメンバーはすでに班を決めていたのだ。
『く…し、失敗した!
ど、どうしよう!
このままじゃ…。』
「あ、あの…。」
ショウジロウはいつものメンツに声を
かけようとしてみたが
三人ともショウジロウを見て
苦笑いし、目を逸らした。
『あ、ああ…どうしよう
どうしよう!』
周りからの視線が
ショウジロウには
槍のごとく突き刺さった。
『そ、そんな憐れんだ目で
俺を見るな!
俺はお前らとは違う!
やめろ!
そんな目で俺を見るな!』
ショウジロウはうつむき
周りの視線を必死に避けようと
していた。
「なあ。
聞こえてっか?」
「…めろ…。」
「はい?
いやだからさ…」
「僕を…憐れむな。」
ショウジロウは声をかけてきた
人物に咄嗟に言った。
「何、言ってんだお前?
そうじゃなくて…。」
「もうタケゾー。
何してるのよ。」
「いや、だって話を…ぐ!」
話かけて来ていたのはタケゾウだった。
そしてそれを押し退けるように
今度はサヤがショウジロウに話かけてきた。
「ねぇ、ショウジロウくん!
よかったら私達と班にならない?」
「え、え!?」
ショウジロウはあまりの展開に
まだ、状況を把握出来ていない。
「私達、一人足りないんだ!
よかったらどうかな?」
「ってももう俺達しかいね…ごふっ!」
タケゾウがいらない一言を言おうとしていたので
サヤがさりげなくタケゾウの腹に
肘打ちをした。
「ごほ…ごほ!
…ま、そういうことだから
一緒に班になろうぜ。」
「う、うん!
うん!」
『あ…ああ…
あはははははははは!!!
ついに、ついに俺が
ヒエラルキー頂点になる時がきた!!』
ショウジロウは外面のいい笑顔で
いつものメンツを見た。
そのいつものメンツは苦笑いをしていた。
『あはははははは!
負け惜しみか!
ついにお前らなんかとは
違う世界の住人になったんだ!
見たか!
クラスの三下共め!
あはははははははは!!』
「あ、あの…ありがとうございます。
よろしくお願いします。」
「もう、敬語なんて使わないでよ。
よろしくねショウジロウくん!」
「よろしくな。」
『あははは。
サヤが…サヤがついに。
ああ…これを機に俺に
近ずいておきたいのか。
可愛い奴め。
くくく。
ああ。
堪えなくては。
ここでボロを出すわけにはいかないしな。』
ショウジロウは抑えきれない
興奮感をなんとかごまかしながら
笑った。
それはもう幸せそうに
至福な優越感に浸りながら。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価お願いします。
過去の話に少し触れていきます。
お付き合いいただければ幸いです。




