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牢屋での再会と昔話

『ぐ…知らない天井…。

包帯?

治療はされてるみてえだな。

牢屋…か?』

タケゾウは意識を取り戻し

体を確認すると

起き上がらず

目で辺りを確認した。






『人の気配は…すぐ近くにはいないか?』

人の気配が近くに無いと

判断し、上体を起こした。






「やっぱ捕まってたか。

拘束は…されてるな一応。」

そこは定番の鉄格子と石造りの

牢屋のようなところだった。

ベットに寝かされていて

足かせがついており

長く伸びた鎖の先には

見たことのない色の丸い何かが

繋がっていた。









タケゾウは立ち上がり

檻の中を確認した。

刀などの装備品は

見当たらず

衣服だけはたたまれて置いてあった。








タケゾウはその衣服を着ると

鉄格子に近づいた。









『他に牢屋は無いのか。

ん?

通路の奥に…階段だな。』

通路には所々に明かりがあり

階段へと続いていた。







『誰か降りてきたな。』

タケゾウは階段に足音を感じ

警戒しつつ様子を伺った。







「あらあら。

目が覚めたようね。」

タケゾウの牢屋に現れたのは

例の女だった。

その女は黒い肩ほどの長さの髪に

垂れ目の少しおっとりした

印象を受ける目。

そんな印象とは裏腹に

何を考えているかわからない雰囲気を

漂わせている。

背はそこまで大きくはない。

鎧にローブという格好ではなく

タイトなスリットの入った黒、紫の

ワンピースに腰にククリ刀のような

形状の武器を装備している。









「自己紹介がまだだったわねタケゾウくん。

私はマリナ。

よろしくね。」

「はあ。

よろしくされる覚えはねえよ。

何がしてえんだ?

こんな拘束くらい簡単に…」

タケゾウは威嚇ついでに

火の魔法を使おうとしたが

集中した魔力が鎖を伝って

丸い物に流れていくのを感じた。






「そういうことか。

じゃ制限解除リミットリリース…」

「うふふ。

強がりは辞めたらどうかしら?

タケゾウくんはここでは

何の力も出せないわよ。」

マリナは口を手で隠し

クスクスと笑った。







「ちっ!

そうかよ。」

「ようやくお話ができそうね。

あの時はツレなかったものね。」

「知るかよ。

俺は洗脳されてるんだろ?

話なんかしても無駄だろうが。」

「まぁ。

そんな嘘を信じるほど

私は純粋じゃないわ。

そもそも洗脳ができる魔法なんて

聞いたこともないもの。」

女は手で口を隠し、クスリと笑った。







「な!

じゃ何が目的なんだよ。」

「目的?

目的ですって?

うふふ。

そうね…。

タケゾウくんに

魔王を殺してもらうがいいかしら?

それともタケゾウくんを

魔王の目の前で殺すのがいいかしら?

指を一つ一つ切り取って

送りつけて

最後に頭部でも送ってあげようかしら?

何が喜ぶのかしら魔王さんは?

ものすごくタケゾウくんのこと

大切に思っているようですからね。

それにこれならあの子も

相当苦しむだろうし…。

あらあら。

私ったらはしたない。」

また口を手で隠すと

タケゾウの前で女はクスクスと笑った。










「なるほどな。

どれでも効果的だと思うわ。

ルーナが俺を大切に思ってくれてるならな。

それで

他にも苦しめたい奴がいるのか?」

「そうなの。

困ったわ。

ところで全然動じないのね?」

「あ?

その気持ちと顔は俺も知ってる。

きっと俺もそんな風に笑ってたんだろうぜ。

アドアリスをぶっ殺したときにな。」

「それは初耳だわ。

すごいわねあの剣の神を殺すなんて。

あれは見かけ通りの良い人だったのよ。」

「そうか。

俺にとっては悪い人だったよ。

結局のところ

それだけなんだろうな。

まあいいさ。

それでいつ俺を殺すんだ?」

「それはまだ決めていないわ。」

マリナは少し呆気に取られた様子だった。

目の前の少年は自分を利用して

復讐しようとする

さらには拷問のように殺すことも

提案したにも関わらず

そんな人の話をまるで他人事のように

聞き流したからだ。









『…この子思ったより

ヤバい匂いがする子ね。

…かわ…』

「おい。」

そんなことをマリナが考えていると

タケゾウがマリナに声をかけた。







「何かしら?」

「まあ、わかってると思うが

俺も簡単に死のうとは思ってない。

殺すなら全力でこいよ。」

タケゾウはマリナを鉄格子ごしに見て

薄っすらと笑った。







『あらあら…。

鳥肌…寒気…。』

「あらあら。

怖いわねタケゾウくん。

まだ殺さないわ。

それにこの計画を決めるのは

あの方ですもの。

では私はこれで。」

そう言うとマリナは去っていった。










『ふう…。』

タケゾウはそのまま座り

謎の丸い物体を眺めた。








『刀はない。

魔法も何も使えない。

脱出方法もない。

どうすっかな。』

タケゾウは横になった。

そこにまた人が来た。










「お…キヨトか。」

タケゾウは上体を起こし

鉄格子の外を見た。








キヨトは牢屋の前に立つと

タケゾウを見下ろした。










「タケゾウくん。

久しぶりだね。」

「あれ以来だな。

少しは話する気になったかよ?」

「洗脳されている

タケゾウくんと

何の話をしても無駄だよ。」

「しつこいな。

洗脳なんてされてねえよ。」

「じゃ聞くが

なぜ先生を斬ったんだ?」

「それはそっちが何も聞かないからだろ。

そもそも襲われたのは俺の方だ。」

「斬る必要なんてなかっただろ!!」

キヨトが突如大声をあげた。








「…弟を奪い…父まで…父まで

奪うつもりなのかお前らは!!」

「…。」

「何とか言ったらどうなんだ?

おい!

何とか言えよタケゾウ!」

「仮に今俺が何か言って

お前は聞くのか?

聞くつもりなんてねえだろ。

今の自分の顔

鏡があんなら見てこいよ。」

「うるせぇ!!

お前らは何が目的なんだ!!」

「平和。」

「嘘をつくなこの悪人め!」

「おいおい。

悪って何だよ。」

「お前ら魔族が悪その物じゃないか!」

「どこをどうしたら

魔族が悪なんだよ。」

「善良な人を簡単に殺し

命を奪ったじゃないか!」

「それはデンジ達のことか?」

「そうだ!」

「へえ。

じゃデンジ達は武装してなかったんだな?」

「武装はしていたさ。

いつ襲われるかわからないんだからな。」

「ふーん。

じゃ仮にその武装をしている時に

魔族…仮にお前らの言う悪ってのが

目の前に現れたとするよな?

その時、お前らはどうするんだ?」

「もちろん戦う。

剣を抜き、相手を倒すだろ。」

「なぜだ?」

「それが悪だからだ。」

「じゃ魔族にとってお前らはなんだ?

通りがかったのが魔族で

それをお前らは斬るんだろ?

その魔族が何したって言うんだ?

話はしないのか?

そもそも暴力を振るった

お前らは悪じゃないと言い切れるのか?」

「そ…そうだ!

俺たちは悪じゃない!」

「じゃ魔族が悪だって言うなら

女、子供も斬るんだな?」

「そ…それは…。」

「なんだ?

悪なんだろ?

悪は斬るだろ?

差別すんなよ。」

「う、うるさい!」

「なぜそんなに声を荒げるんだ。

いい加減気付いたらどうだ?

魔族はお前にとって都合が悪いから

殺すんだろ?

復讐したいだけだろうが。」

「うるさいうるさいうるさい!!!」

「認めろよ。

お前はそれに信念や正義っていう

都合のいい名前をつけて

やってるだけだ。」

その瞬間、キヨトは腰につけていた

剣を抜き、鉄格子を切り裂いた。









「うるさい!

お前に何がわかるっていうんだ!」

「困ったら暴力かよ。

ほんとは気付いてんだろ?

知らないフリしてるだけなんだろ?

認めろよ。

復讐したいだけだって。

お前らは俺にとって都合が悪いから

死んでくれって

顔に書いてんぞ。」

キヨトはその剣をタケゾウ目掛け

振り下ろした。








キンっという金属音が

牢屋に響いた。







「キ、キヨト!

やめようよ。

僕らはみんな仲間じゃないか!

タケゾウくんは洗脳されている

だけなんだから!」

間に入り、剣撃を止めたのは

ショウジロウだった。








「ぐ…。

もういい!」

キヨトは剣を納めると

タケゾウをキっと睨みつけ

その場を足早に後にした。








「ご、ごめんね。

キヨト…ずっと荒れてて…。」

「はっ。

そりゃそうだろ。

家族が一人死んだんだろ?」

ショウジロウはタケゾウの前に

座り、タケゾウに詫びた。








「そうだよね…。

それに先生まで倒れたら…。」

「それはあっちが攻めてきたんだ。

俺は被害者だ。

それに死なないように

倒したんだ。

何か言われる覚えはねえよ。」

「それは…そうだよね。

ごめん。

責めるつもりはないんだ。」

「じゃ何しに来たんだ。

あの時のこと忘れたとは…」

「忘れてない!」

ショウジロウはタケゾウの

目をまっすぐ見て言った。







「忘れてなんかいない。

あの時のことはほんとごめん!」

ショウジロウは石畳に額をつけて

タケゾウに謝罪した。








「…。

謝る相手がちげえだろうが。」

「サヤにも同じように謝ったよ。

二人にはほんとどうやっても

許してもらえることじゃないのは

わかってるんだ。

それでもごめん。」

ショウジロウは泣いているのか

少し声がうわずっていた。









「…とりあえず頭上げろよ。」

「う、うん…。」

ショウジロウはゆっくりと頭を上げると

手で目をこすった。

少しの沈黙が

牢屋を包んだ。







「…こ、ここに来たのは

キヨトがマリナさんに言って

入っていくのが見えたからなのも

あるんだけど…。

みんなのことを

タケゾウくんに伝えようと思ったんだ。」

「それは願ったり叶ったりだな。

ただ俺は今のところ洗脳されてて

敵なんだろ?

そんな俺に話したら

お前タダじゃ…」

「タケゾウくんは仲間だよ。

洗脳…されてないんでしょ?」

「お前…。」

ショウジロウはタケゾウの目をまっすぐ見ていた。

タケゾウは少し気恥ずかしくなったのか

目をそらし、軽い舌打ちをした。








「やっぱり。

タケゾウくんは…確かに見た目も

雰囲気も変わったけど…

本質はあの頃のままだなって…。

中学で出会ったあの頃の…。」











ショウジロウはゆっくりとタケゾウに話始めた。

静かな牢屋には

ショウジロウの声が優しく響いた。



読んでいただきありがとうごいます。

ブックマーク、評価お願いします。

ここから過去の話を少し書きます。

お付き合いいただければ幸いです。

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