人族の王都
『そんなに警備は厳し…
見た目で判断してるみてえだな。
違う人種にはしっかり検問してるのか。』
翌朝、タケゾウは起床とともに
足早に王都を目指した。
大きな城壁に囲まれた門が見え
何列かに分かれ
検問されていた。
『なるほど…。
何となく並んだが
ここは人族の列か。
お…もう入れる。』
タケゾウは門を簡単に突破し
人族の王都に入った。
『なんだこりゃ…。』
そこはタケゾウの世界の侍なんかが生きていた
時代の物をさらに近代風にアレンジしたような街並みだった。
和モダンとでもいうのだろうか。
西洋と和の融合のような
古き良きを大切にしながらそこに新しいものを
取り込んだような
とてもお洒落な場所だった。
『おいおい…。
お洒落すぎんだろ。
色んな意味でファンタジーだけどさ。
にしても建てたばかりなのか?
新しい建物が多いな。』
タケゾウはあまりにも
お洒落すぎる街並みに驚きを隠せなかった。
そして道行く人がタケゾウを
見ていることにタケゾウは気付いた。
皆、和を少し取り入れた格好をして
いるのだが
タケゾウの格好があまりにも
ボロボロなために
皆が見ていたのだ。
『そういえば服ボロボロだな。
当たり前か。
何にしても仕事しないと金もねえ。
ギルドはどこにあんだ?』
タケゾウはギルドを探し
歩き始めた。
『お洒落すぎてどこが
ギルドかわかんねえ…。』
タケゾウはギルドっぽい建物を探したが
全然見当たらなかった。
『困ったな。』
タケゾウがウロウロと建物を見ながら
歩いているとようやく
ギルドだろう建物を発見した。
外に数人の武装した
冒険者のような格好をしてる者達が
いたからだ。
タケゾウはそのままその建物に入った。
『当たりかな?
看板くらい出しててくれりゃいいのにな。』
そう思いながら
タケゾウは掲示板に行き
依頼書を見た。
『ふむ…。
どれも何とも…。
ん?モーティアを捕らえるか。
生きたままってのはめんどくせえな。
ま、これでいいか。』
タケゾウはその依頼書を持っていった。
カウンターの中では男が忙しそうに駆け回っていた。
「これを頼む。」
「あ、はーい。
よろしくお願いします。」
男は忙しかったのかそのまま依頼書も見ず
タグも確認しないままハンコを押した。
そんなこんなで簡単に手続きできてしまった。
『俺のタグじゃ
無理だとか何とか言われそうだったけど…。
ま、いいか。
依頼は原則自由だったしな。
そういえばこの依頼…国から出てることに
なってんな。
モーティア…ってことはまあそういうことか。
戦争…か。
さっさと済ませるか。』
タケゾウはそのまま王都を出て
近くに見えた森を目指した。
『くそ。
近いつもりだったが
結構あるじゃねえか。』
タケゾウが森に着く頃には太陽が
空高く登り
まもなく落ち始めようという時間になっていた。
『さてどうやって探すかな…って
もういた。
ツイてんな。』
タケゾウは制限解除を強め
円もさらに使った。
それもそのはず。
目の前に現れたモーティアは
十頭以上いる団体様で
それを殺さずに捕まえるとなると
かなり気を使って倒す必要があった。
『怪我くらいはいいんだよな?
刀じゃ斬り殺しちまうからな。
あ、再生使えばいいじゃん。
ま、でも素手で行くか。』
タケゾウはその団体モーティアの団体に
早速攻撃を仕掛けた。
ゆっくりと移動しているモーティアの
前方に人の子供くらいの大きさの岩を投げ
意識を前方に向かわせ
そのうちに後方から攻撃を仕掛けた。
素早い身のこなしで
後方にいた二体の足をへし折った。
倒れたモーティアに駆け寄った
モーティアの足をさらにへし折ると
そのまま前に進む。
「ぐごがぁああぁぁ!!!」
群のボスと思われる
モーティアがタケゾウに向かい突っ込んできた。
タケゾウは怯むことなく
飛び上がり
顔面を思い切り殴った。
モーティアは吹っ飛び
木を押し倒しながら
地に伏した。
残っていたモーティアも
あっという間に戦闘不能にし
勝負がついた。
「寝ててもらったほうが運びやすいだろうけど
さすがにな…。」
タケゾウは計十二体のモーティアを倒した。
だがその全てを運ぶのはかなりの時間と体力が必要だった。
「うーん…。
考えても仕方ないし運ぶか。」
タケゾウは木を一本へし折ると
モーティアの手足を縛り
吊るし上げ運ぶことにした。
「これで最後だ。」
ドサっという音とともに
ギルドにモーティアが運ばれた。
ギルドの中にいる者達は
皆こぞってタケゾウを見ながら何か話している。
「は、はい。
本当に十二体も…。
あなた一体何者なんですか?
一体目を運んできたとき、タグは見せてもらいましたが
星はなかったはず…。」
「ん?
まあ…あれだ。
罠がうまくできただけだ。」
「それにしても一日で一人で
これだけのモーティアを運んでくるなんて。
すごすぎます!!
あ、これが受領書になります。
後で代金をお支払いします。
少し時間がかかりますが
こちらで待ちますか?」
「そうだな。
その辺で座ってるよ。
腹減ってるから早めに頼むわ。」
「はい!」
カウンターの男はキラキラした目で
タケゾウを見ながら言った。
おそらく尊敬とかそんな眼差しだろう。
タケゾウはあれから一日半ほどかけ
モーティアをギルドまで運んだ。
さすがにタケゾウも疲れたのか
ギルドの広間にある椅子に座ると
寝息を立て始めた。
「…ません。」
「…きて…ません!」
「ん?ああ?」
「すいません!起きてください!」
「あ、ああ。
すまん。
準備できたのか?」
「はい。
カウンターにどうぞ。」
タケゾウは男とカウンターに歩いていった。
「これが今回の報酬です。
ありがとうございました。」
タケゾウはその報酬がなぜか
木箱に入っていて驚いた。
「なんだこれ?」
「報酬が多い時はこれになるんですよ。
今回のモーティアは群れでの捕獲に加え
状態としては完璧。
そして何と言ってもボス級がいたので
報酬はかなりのものになりました。」
『そりゃ再生使って無傷にしたからな…。
にしてもいくらあるんだ…?』
タケゾウは大金を持って歩くのはどうかと思った。
そんなことを考えていると男が言った。
「今すぐ全て必要ではないのであれば
ギルドに預けることもできますよ?」
「そうなのか。
じゃ少しもらって後は全部
預けるよ。
どこのギルドでも引き出せるのか?」
「はい。
…本当に星なしなんですね。
本当に驚きです。
では区切りよくこれをどうぞ。」
男は木箱の蓋を開け
帯で区切られた札束をタケゾウに渡した。
「では他は預かりますので
タグをお預かりします。」
「あ、ああ。」
タケゾウは少し戸惑いながら
タグを渡した。
少しして男は戻ってきた。
「こちらになります。
魔法を使って裏側を見ると
金額が表示されるので
後でやって見てください。
…あのそれで…。」
「ん?
なんだ?」
「今、国の兵士の方が
来ているのですが
会わせて欲しいと…。」
「いや、いい。
俺はもう行く。」
「あ、ちょっと…」
タケゾウは男を振り切ると
足早に外に出た。
そこでは荷台につけた檻にモーティアを
入れている兵士がたくさんいた。
タケゾウはその脇を気配を消して
スっと歩いて抜けた。
『とりあえず大丈夫そうだな。
さて、まずは服でも…。
にしても…金の価値は国で違うんだよな?』
タケゾウは再生を使い
タグの裏を見て見た。
『ゼロがすげーな…。
金の価値がもしこの世界共通なら…。』
タケゾウは一旦服を買いにいった。
「これをくれ。」
「あいよ。
あんた黒ばっかじゃないかい。
今は少し和を強めに混ぜたほうが
流行ってるけど
こんな地味でいいのか?」
「問題ない。
このまま着て帰りたいんだが…。」
「それならそこを使っていいぞ。」
「ありがとう。」
タケゾウは黒い丈の長い
パーカーのようなフード付きのものに
タイトな黒いパンツ
黒い頭陀袋のようなカバンを購入した。
そして数日分の下着も購入した。
着替えを終えると
タケゾウは着ていた服と
お金を店主の男に渡し
処分を頼んだ。
「こんなにいらねーよあんた。」
「いや、いいよ。」
「仕方ねえ。
これ、持ってきな。
夜はまだ冷えるからな。」
店主は黒い着物のようなコートを
タケゾウに渡した。
裾から足にかかる部分には
桜の木のような綺麗な刺繍がしてあった。
「…悪いな…。」
「いいってことよ。
それで粋な人族って感じだ。」
「ありがとう。」
タケゾウはそれを羽織り
カバンを背負いフードをかぶると
店を後にした。
『…通過の価値は一緒だ。
ってことは一千五百万と手持ちで九十五万ってことか。
国も出し過ぎだ…。
とりあえず当面の金は稼いだ。
…後で金返しにいかないとな…。
これも約束か…。
さて、何するにしてもまず宿だな。
もう日が暮れそうだ。』
タケゾウは宿を探し、歩き始めた。
夜はこのお洒落な街が一層お洒落に見えた。
煌びやかな提灯などの明かりに
出店や屋台の明かり
そして何と言っても桜のような木が綺麗だった。
和モダンな街によく似合っていた。
『…桜みたいこの木が綺麗なもんだな。
街に合ってる。
それに活気があって、とても戦争中とは思えない。
いい国…なんだろうな。
だが…こいつらは…サヤを奪った奴らと…』
タケゾウの思考が少し暗くなると
目の前に十歳ほどの少年が立ちふさがった。
「お兄さん…宿、お探しですか?」
「ん?ああ。
どっか紹介してくれんのか?」
「は、はい!」
少年は目を輝かせながら
タケゾウの袖を引っ張り
こっちこっちと
宿に案内した。
「かあちゃん!
一名様!」
「あいよ!
ようこそ。
ごめんね。
強引に引っ張られたろう?」
「いや。
探していたからいいんだ。」
「一泊、四千円で二食付きだよ。」
「ああわかったよ坊主。
じゃ十日分頼む。」
タケゾウは十日分の料金を支払った。
「気前のいいあんちゃんだね。
ご飯はそのまま食堂で頼んでおくれ。
うちのご飯はなかなかにうまいって評判だから
期待してくんな!」
「ああ。
じゃ早速飯にするよ。
ありがとうな坊主。」
「うん!
なんかあったら言ってね!」
「ああ。」
タケゾウの少し暗くなった気持ちが
少し元に戻ったような気がした。
そして久しぶりの普通の飯にありついた。
米に味噌汁に漬物に焼き魚と
タケゾウの故郷の味にそっくりな料理が
テーブルに並んだ。
タケゾウはあっという間にそれを食べた。
食べ終えると食後のお茶が出てきたので
それをゆっくりとしみじみと飲んだ。
久しぶりのゆっくりとした時間だった。
『さて…宿も衣服も金も揃った。
うまくいきすぎだな…あとが怖いわ。
さて…次は神とサヤ達の情報収集だ。
捕まるのとサヤ達に会うのは今は避けよう。
あのとき、サヤは俺の言うことに
耳を貸すような状態に見えなかった。
おそらく変なこと吹き込まれてんだろうな。
となるとやっぱ神か。
そいつのこと調べるか。』
タケゾウは考えをまとめ
宿を出た。
『まずは城がどんなもんか見てみるか。』
賑わいを背にタケゾウは城を目指すのであった。
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