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剣の神

「どこから話すか…。

まあ…少しは知ってんだろ?

アドアリス達と戦って

俺は気付いたら森にいた。

そこは獣人族の領地でな。

まあ…色々あった。

そんで助けてくれたやつのとこで

少し面倒を見てもらっていたときに

買い物に出掛けたやつが

血だらけで帰ってきた。

そして森に行き

アドアリスにまた会った。

…あいつも彷徨っていたんだろう。

俺が会った時はすでに言葉も

話せない状況だった。

誰彼構わず攻撃を仕掛けてくるような

そんな状況だった。

そして俺があいつを殺した。

この刀で。

だからあいつはもう生きて戻って来ない。

諦めろ。」

「……。」

「…どうした?

仇なら目の前だ。

殺せよ。

憎いだろ?」

「…すまなかった。」

「さっきからそればかりだな。

お前にとってアドアリスはどんな存在だったんだ?」

「アドは…私にとって師であり

兄のような存在だった…。」

「そうか。

じゃ尚更憎いだろ。」

「一つ聞きたい。」

「なんだ?」

女は下げていた頭をようやく上げると

タケゾウの目をまっすぐ見つめ言った。






「その森は幻想の森のことなのだろう。

アドはすでに正気ではなかったのだな?」

「ああ。

極めたはずの剣の腕も

大したことなかったからな。」

「そう…か。

ありがとう。

我が師を救ってくれて。」

「は?

綺麗事はよせよ。

殺さなくてもよかったかもしれないんだ。」

「苦しんでいたのは確かだ。

死が救いになった。

それは紛れもない事実だ。」

タケゾウは頭をかくと

ため息をついた。







「あっそ。

じゃもう用は済んだろ?

さっさと消えろ。」

「まだ済んではいない。

私は貴様の大切な者達をここに

連れてきた者の一人だ。

決して許されることではない。

私一つの命では到底償うことなど

できないほどのことをした…。」

「じゃ償いで今すぐ死ね。

それで許してやるから。」

「それは…今すぐはできない。

私が死んでは民が路頭に迷ってしまう…。」

「お前らは有無を言わさず

俺から奪い、剣を向けてきたのにか?

それは筋が通らないだろ?」

「…その通りだ。

今は何を言っても説得力などないだろう。

だが…この戦争が終わった後

この命、貴様に捧げると誓おう。

我らが太陽の神に誓って。」

「はあ…そもそもなんでそんな上からなんだ。

お前に選択権なんて最初からねえんだよ。

わかってんのか?」

「…わかっている…。

だが…頼む。」

「…まあ…いいか。

何にしても今は誰かと戦う気なんて

起きないしな。

少しイライラはしたが…。

じゃがんばれよ。

俺が殺すまで死ぬなよ。

わかったらどっか行け。」

「…すまない…。

名は…名はなんと言うんだ?」

「…タケゾウ。」

「タケゾウ…。

この命、タケゾウの物だ。

そしてタケゾウ。

私は皆のいるところに

タケゾウを案内することができる。

もしよければ…」

「いい。

今は誰とも関わるつもりはねえ。

もういいからどっか行け。

殺すぞ。」

「…わかった。

では…また。

師の礼についてはまた今度

させて欲しい。」

「いらねえ。」

女は立ち上がり

タケゾウに一礼するとその場を去って行った。








『あのくそ白髪め。

わざと話しやがったな。

にしてもあの女…。

アレースみてーに前向いてるんだな。

普通…怨むだろうに。

女はみんな強えんだな…。』

タケゾウはそんなことを考えながら

乾いた衣類に袖を通した。

そして焚き火を消すと

移動を開始した。








『ここに留まっていても

いいことは無さそうだしな。

あの女に誰か付き添いがいた可能性もあるし。

今はめんどくせえのははごめんだ。』

タケゾウは村には入らず

そのまま進んだ。









「ここまでくれば…

大丈夫かな?」

ふうと一息つくとタケゾウは腰を下ろした。

そこは見渡す限り

平地の隠れるところが

あまりない広い原っぱだった。







『ここなら見通しも悪くないな。

はあ。』

タケゾウは横になり空を見上げた。

雲ひとつない綺麗な夜空に

月がふんわりと輝いていた。







『…どいつもこいつも…。

つよ…ちっ。』

タケゾウは思った気持ちをぐっと拳とともに

握りつぶした。






『あの白髪オールバックの言う通り

人族がこんなことしなきゃ

今頃…。

そもそもあいつらが…。

いや…それでもあの女は…。

それに引き換え俺は…。

昔からそうだな…。

たったひとつうまくいかないだけで

全てがダメになった気でいる。

目の前のこと以外何も見えなくなる。

サクヤとの約束だって

大切なことなのにな。

前がわかんねえ?

進むほうが前だろうが。

どう動くかなんて

自分が決めることだろうに…。

悲劇の何とか気取りだな。

笑えるわ。

サヤのこともなんで諦めてんだ?

諦める必要なんて何もねえ。

アレースのこともそうだ。

まだ何も終わってねえ。

くそ!

もっと…強く…なりてえな。

腕っ節だけじゃダメだ…。

もっと…。』

タケゾウは月を見上げ

考えていた。








その思考は以前より少し力あるものだった。

壊し、奪い、怨み

それだけで進んだ道の先に

ようやく芽生えた気持ち。

光明とでも言うような

明るい気持ちだった。

それはタケゾウ自身に

深い闇があったからこそ

光ったのかもしれない。









『いつまでも

めんどくせえな。

一番最初に壊さなきゃいけないのは

俺自身だったんだ。

まずは人族の王都みてえなとこ目指すか。

今日はもう遅いから

明るくなったら出発だ。』

タケゾウは広い原っぱに横になると

そのまま眠りについた。








眠りについたタケゾウを

月はいつものように

優しく包み込むように輝いていた。





読んでいただきありがとうございます。

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