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命の価値

翌日。





タケゾウは魔法が使えるようになったので

早速練習を始めようとした。





「ベル爺。

とりあえず魔法使えるように

なりたいんだけど

どうやって練習したらいいかな?」

「ふむ。

そうじゃのう。

その前にタケゾウ。

ワシと森にでも行かんか?」

「ん?森に行くのか?

まあ、いいけど?

何しに行くんだ?」

「まずは修行の前に

飯を確保しなくてはならんと思ってのう。

疲れたら飯食いたいじゃろ?」

「確かに!

じゃ俺も行くよ!

居候するんだし

飯取ってくるくらいは役に立ちたい!」

「うむ。

では行くとするかのう。」

ベル爺とタケゾウはゆっくりと森に進んでいった。









「まずは

食べられる植物を教えようかのう。」

「お願いしゃす!!」

色々な植物を取っては

説明しカゴに入れていくベル爺。

きのこのような植物や

巨大なきゅうりのような植物

玉ねぎが少し小さくなったような物が

芋のようにたくさん連なっている植物など

ベル爺はどんどん採取していく。

タケゾウがびっくりしたのは

明らかに毒きのこだろそれ

という見た目の物が食べれたり

これなら大丈夫だろという

みかんのような物が

食べられなかったりと

タケゾウの世界の価値観だけでは

通用しないということだった。

みかんに関しては

まさかの魔物で

危なく逆に食われるところだった。








「ふむ。

野菜はこんなもんでいいじゃろ。

次は何がいいかのう。」

そう言いながら森をさらに奥に進む二人。

「肉とか食いたいなー俺。」

「ほう。

肉のう。

何の肉が良いかのう。」

そう話していると

目の前にイノシシのような魔物が出てきた。

こちらに敵意むき出しである。

「おお。

こいつはいいのう。

こいつはノシンといって

肉食で獰猛な性格なのじゃが

あまり強くない。

そして肉は柔らかく

臭みがないから焼いて食うには最適じゃ。

飯はこいつにしようかのう。」

「あ、ああ。

こいつに…しよう。」

タケゾウは

今から起こるであろうことを

予想していた。

動物が好きなタケゾウは

もちろん自分で動物を殺したことはない。








『俺に…

こいつが殺せるだろうか…

食わなきゃ死ぬ…

かもしれないけど…

そこまで腹も今は減ってないし…

また今度でも…。』

タケゾウがそんなことを考えているのを

ベル爺は横目で観察するように見てた。








するとそこにノシンが突進をしてきた。

「ほれ、ぼーっとしとると怪我するぞ。」

そう言うとベル爺は

タケゾウを抱え

サっと飛び

ノシンを交わす。

「しょうがない奴じゃのう。

待っとれ。」

そう言うとベル爺は

ノシンとの距離を一瞬で詰め

軽く手刀を浴びせた。

ノシンはガクガクと震え

そのまま地面に倒れた。









「殺っ、殺したのか??」

「いや、気を失っただけなはずじゃ。

だが骨を砕いたから

もう助からんじゃろう。

タケゾウ。

お前さんがトドメを刺すんじゃ。」

ベル爺はタケゾウにナイフを手渡した。

「お、俺が…こいつに…。」

タケゾウは地面に膝をつき

ナイフを構えたが

どうしてもそのナイフを

振り下ろすことができない。

「まったく、仕方ないのう。」

ベル爺はそう言うと

タケゾウの手と一緒ナイフを掴み

一気に振り下ろす。

ノシンはビクっと一度体を震わせ

絶命した。








「あ、ああ、あああ…。」

タケゾウはノシンを見つめる。

精神がかなり不安定に

なっているように見える。

ベル爺はタケゾウの正面にまわり

両肩に手を置いた。









「これが

お前さんの言った

肉を食べるということじゃ。

つまり、生きるということじゃ。」

「う、うううわああぁあぁぁぁ!!」

タケゾウは悲鳴とともに

後ろにバタバタとみっともなく下がった。

汗が滝のように吹き出している。

「タケゾウ。

逃げずに見るんじゃ。

これが生きるということじゃ。

生きるということは必ず

何かの命を犠牲にしている。

この取ってきた植物にも命がある。

それを食べてワシらは生きておるのじゃ。

これからノシンを捌いて持って帰る。

それはお前さんの仕事じゃタケゾウ。

これ以上

命を粗末に扱わず

しっかりと食えるとこ全て食う。

それが命に対するお礼じゃ。

逃げるな、タケゾウ。」

ベル爺はそう言うと

タケゾウにまたナイフを手渡した。

タケゾウは吹き出した汗を拭い

ノシンを見る。

手は震え

呼吸は荒い。









「では教えようかのう。

手を握りながらやるから体で覚えるんじゃぞ。」

ベル爺はナイフを首に入れた。

途端にタケゾウは立ち上がり

木の陰まで走って行き

盛大に嘔吐した。








「タケゾウ!何しとるんじゃ。

早くこっちに来んか!」

ベル爺が

四つん這いになって嘔吐しているタケゾウの

首根っこを掴み引きずりながらノシンの元に戻る。








「次はここから皮を剥いで…。」

ベリベリと皮を剥ぐベル爺。

タケゾウはたまらずまた嘔吐する。

すでに胃の中は空っぽで

胃液しか出て来ない。

タケゾウの顔面は涙とよだれと鼻水で

ぐしゃぐしゃであった。

その後も腹の中を見ては吐き

頭を切り落としては吐きと

すでに体液全てを外に出したタケゾウ。

目は一応ノシンに向けているが

まともに見れてはいない。








ノシンを捌き終わり、二人は家に戻った。








「おかえり二人とも。

ってどうしたのタケゾウさん?

すごい顔してる…。」

「ルーナ。

実はのう…。」

「そう。

皆通る道とはいえこれは結構堪えるよね。

とりあえずご飯にしよう。」

タケゾウは静かに頷き、席に着いた。

焼いた香ばしい匂いがリビングに届く。







「できたよ。

さ、食べましょう。」

ルーナは皿にノシンと

先ほど取った食材を一緒に炒めたものを出した。

タケゾウは一口食べようと

木のスプーンでノシンの肉をすくった。

「う…うっぐ…ぐ…ひぐ…。」

「タケゾウ。

この飯を決して吐くことは許さん。

そして決して忘れるでないぞ。

この命がワシらを生かしてくれていることを。」

タケゾウは涙を堪えたが

次から次と溢れてきた。

そしてノシンを一口食べた。

さらに一口、また一口。

感謝し、感謝し、感謝しながら

一口、一口噛み締めた。

皿に残った油すら綺麗に舐めとり

しっかりと完食した。







「ん…うっぐ…ひぐ…ごじぞうざまでした!!」

しっかりと手を合わせ

皿に向かってお辞儀をした。







昼食を済ませたタケゾウは

外に出て横になっていた。

思い出しては吐きそうになり

涙が溢れた。








そんなタケゾウを見兼ねたルーナが

タケゾウが横になっている隣に座る。

「タケゾウさん。

いつまでそうやって泣いているつもり?

タケゾウさんには

やらなきゃいけないことが

他にもたくさんあるんじゃないの?」

「…ああ。

わかってる…。

けど今は…。」

「そうやってウジウジしていれば

何か解決するの?

泣いているだけで

タケゾウさんの目的は達することができるの?」

「けど…今は辛くて…さ。」

「辛いの?

辛ければやらなくていいの?」

「いや…そうじゃないけど…。」

「さっきから言い訳ばっかり。

そういうのあまり好きじゃないのあたし。

さっさと起きて

魔法の修練でも始めたら?」

ルーナは冷たく

イライラしながらそう言うと家に戻って行った。

「魔法…か。

再生であの命も救えたのかな…。

いや…そうじゃない。

ノシンは俺が殺した。

生きるために。

どんな綺麗に言おうと

殺したことに変わりはない。

きっとこれは

これから俺が戦ったり

守ろうとするたびに起こる問題で

サヤやハルを守ろうとして

誰かを殺すかもしれない。

生きるために、守るために。

けどどんな理由をつけても

結局自分のために命を奪うんだ。

覚悟ってこんな大変なのか。

俺に…殺せるだろうか…。」

タケゾウはブツブツと独り言を喋った。

自分と会話しようとしているのだろう。











タケゾウは答えが出ないまま夜を迎えた。

殺すことは悪。

命は尊い。

どんな理由でも

これがタケゾウの頭から離れない。

これは元々住んでいた

世界での価値観ではあるが

その世界でも肉を食べていたことによる矛盾。

家畜がもし人間なら。

マグロの解体ショーがもし人間なら。

明日売られるために

捌かれる肉がもし自分なら。

そんなことばかりが頭を巡る。









「タケゾウ。

いくら暖かいといっても

夜は冷えるぞ。

家に入って休め。」

ベル爺がタケゾウに声をかけて二人は家に戻る。









「あれ?ルーナさんは?」

「ルーナはあれで忙しいのじゃ。

仕事をしに城に戻ったぞい。」

「そっか。忙しいのに気にかけてくれたんだな。

今日、怒らせちゃってさ。

悪いことしたな。」

「ふむ。

まあ、ルーナは環境が悩むことを

許してくれなかったところがあるからのう。

タケゾウのように悩んでいるのが

羨ましいんじゃよ。

ルーナも初めての狩りの後は

どうやら泣いていたようじゃが

我々には気付かせんように

泣いたようじゃ。

これもルーナはまわりに

弱いところを見せてはいけないという

環境がそうさせたのかものう。」

「そうだったんだ。

そりゃウジウジしてんの見たら怒るわな。

ルーナさんのまわりは

ほんと厳しい環境だったんだな。」

「あの目のせいでな。

ワシにもわからんところで

よく虐げられていたようじゃ。」

「そっか。」

「うむ。

さて、寝るとしようかのう。」

「ああ。

今日はありがとな、ベル爺。」

「どういたしましてじゃ。

おやすみタケゾウ。」

「ああ。おやすみ。」










タケゾウはベットに横になり

ルーナのことを考えた。

迫害はきっと

ひどいものだったんだろうとか

弱みを家族に見せられないという辛さ。

目を見られるたびに

向けられる嫌悪感。

生きるのが地獄だと

思うこともあったんじゃないだろうかとか

恨むことも憎むことも

あったんじゃないだろうかなど

頭をぐるぐると考えが巡る。

けれど、ルーナは魔王をしている。

それは逃げ出さなかった証拠である。

悩んでも悩んでも

その歩みを止めることをしなかったのであろう。








「そりゃ、怒るわな。ははは…。」

タケゾウは今の自分の

ダメさ加減に少し呆れた。

『命を奪うことは…やっぱダメだな。

命だもんな。

それは変えられない。

もし、奪うなら食う時だけだ。

そして残すのもダメ。

ちゃんと手を合わせよう。

あ、いただきますってこういうことか。

初めてわかったな。

こんな簡単なことにも

気づかず生活してたんだな。

あとは…守るために殺す。

これは…わかんねーな…。

俺より強い奴が相手だとして…

そんなこと考える余裕なんてないだろうし…。

ん?待てよ。

あ、そうか!

じゃ一番強くなればいいんじゃないか?

そうすれば奪わなくても

無力化できるかもしんねーし。

うん、そうしよう。

一番、強くなろう。

んじゃま…最強になるとしますか。』










「うん。すっきりした。

これで目標が決まったな。

最強か…。

よし!!今からやろう!!」







タケゾウはそう呟くと

外に出て修練を始めた。

そうして夜が過ぎていった。








コツコツと投稿していきます。読んで頂ければ幸いです。

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