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雨上がり

『止んだか。』

タケゾウは雨が止んだことを確認すると

ローブを脱いだ。





『さっきのやつなんか言ってたな…。

…どうでもいいか。

でもこれはありがたかったな。

ふう。

寒い…な。

どこかで乾かすか…。』

タケゾウが歩を進め、少し小高い丘を越えたその先に

村が見えた。







『ちょうどいいな。

今日はどこかに泊ま…金がねえな。

仕方ねえ。

ギルドがあれば仕事でもするか。』








タケゾウはその少し大きな村に

入ることにした。








『…変な気分だな。

俺と同じ人種のやつがたくさんいる。

人族ってやつか。

それに前の大きな街にいた

小さいやつらも結構いる。

…にしても軽くではあるが

どいつもこいつも武器片手に

歩いてやがる。

戦争…か。』

タケゾウは辺りを少し見て歩くと

ギルドを探し始めた。









『もしかしてデカイ街にしかねえのか?

色んなとこにあるみたいに

言ってた気がしたんだが…。

仕方ねえか。

外に出て火でも起こすか。』

タケゾウは村を一通り見て歩いたが

ギルドらしい物を発見することが

できなかったため

村の外で野宿することにした。








村の外に出るころには

すっかり夜になってしまっていた。

タケゾウは村の明かりが届かない

川辺で野宿することにした。







適当な石を円に組み

流れ着いただろう

流木を数本拾い

火を起こした。







流木を地面に突き刺し

濡れた衣服を川ですすぐと

その流木に引っ掛け

乾かした。






タケゾウはその間

大きめな石に座り

ゆらゆらと燃える火を見ていた。






何を考えるでもなく

ただ、ただ眺めていた。






そんな時、タケゾウ後方の茂みが

ガサガサと音を立てた。

タケゾウはその音のほうに振り返った。








「夜分にすまぬ。

少し尋ね…

きゃあーーー!!!」

その茂みから出て来たのは

タケゾウにローブを手渡した

女だった。









「…うるさい。」

タケゾウは女の叫び声に耐えかねて

つい本心を口にしてしまった。








「だ、だ、だって!

うほん!

貴様!

何という格好をしているのだ!」

「それなら見なければいいのではないでしょうか?」

タケゾウはめんどくさくなったのか

また火に目を戻した。








「う…それは確かにその通り…。

ごめんなさい。

ってそうじゃない!

その首にしている飾りを見せなさい!」

「ほらよ。」

タケゾウは首飾りを外すと

女のほうに投げた。








「わ!

っと。

これは…やっぱり…やっぱり!!

これをどこで手に入れた!!」

女はその首飾りを見ると

タケゾウに詰め寄り

少し大きな声で聞いた。







「だからうるさいって。

もらったんだ。

変なおっさんに。」

「どこで!どこでもらったの!?

どんな人にもらったの?」

タケゾウはため息をついた。

どう答えてもめんどくさくなりそうだったからだ。









「もう覚えてないよ。

森の近くであった商人風の

変なおっさんだよ。」

タケゾウは適当な嘘をついた。

「あんたのなら

それは返すよ。

これでいいだろ。

もう用は…」

「その森に案内して!!!」

口付けでもするんじゃないかと言わんばかりに

女はタケゾウに迫って言った。







「ち、近い!

うるさい!

そんなめんどくさいことできるかよ。

ローブ借りたくらいで

そこまでしてやる義理はねえよ。

ほら。

借りたローブは洗っておいたから

その首飾りも持ってどっか行けよ。」

そうタケゾウが言ったところで

またも、ガサガサと

物音がした。








「おや?

先客のようだね。」

「…お前は…何しに来たんだ。」

「随分じゃないか。

死んでしまったのかと心配していたんだよ。」

そこには白髪のオールバックの男が立っていた。








「夜はまだ冷える。

失礼するよ。」

白髪オールバックは

タケゾウと焚き火を挟む形で

石に腰掛けた。








「申し訳ないね邪魔してしまって。

私には気を使わず先にそちらの話を…」

「もう済んだ。」

「は!

まだ済んではいない!

貴様が森に案内すると言うまで

私はここから離れないぞ!」

女は突然の来訪者に

少し戸惑っていたのだが

何とかそこに留まった。







「いや、行かない。

話は以上だ。」

「な!

貴様が行ってくれないなら

私はどうしたらいいんだ!」

「知るか。」

「ははは。

思ったより元気そうじゃないか。」

「…何が言いたい…?

そもそも何の用だ?」

「ふむ…。

用事などと言う大層な物はないよ。

様子を見に来たというのが

正しいか。

しかし…それを持っていたということは…」

「余計なことは言うな。」

「ふふふ。

まぁいい。

それにしても随分と

雰囲気が変わったね。

次はどうするんだい?」

「次…。」

突如、話から外れてしまった女は仕方なく

焚き火の前に腰掛け

二人の話を聞くことにした。







「…俺は…。

俺にはまだ守りたい…守らなきゃいけない

約束がある。」

「ふむ。

その割には全く立ち上がらないどころか

逃げてしまったんじゃないかい?」

「…そう…だな…。」

「わかってはいるんだね。」

「ああ。

一つうまくいかなかっただけだ。

だが、その一つがうまくいかなかっただけで

どうしようもなくなったような気がした。

それが事実だ。

逃げて逃げてここまできた。」

「弱いままじゃないか。

すぐに立ち上がらなければ

変わるものも変えることができなくなる。」

「…わかってる。

そんなことはわかってる。」

タケゾウは下を向いて

拳を握った。

だが、その握った拳には

力が入らなかった。









「…もうどっちが前かわかんねえんだよ…。

どこ向いて、何のためにどうしていいか

何もわかんねえ。

守りたい約束も守れる気がしねえ。

それに俺さえいなければ…」

「戦争は始まらなかったと?」

「…。」

「随分と悲観的だね。

そんな自分に酔いしれてでもいるのかな?」

「…そうかもしれねえな。

こんな話をお前にするくらいだ。」

「…少し物騒な話のようだが

何か悩んでいるなら

聞いてやるぞ。」

「おやおや。

優しいお嬢さんのようだ。」

「そんなこと当たり前だ。」

「…。」

「では私がかいつまんで話してあげよう。」

「…おい、やめろ。」

「ちょうど一年ほど前のことだ。

この少年は姉を何者かに攫われてしまった。」

「ふむ。」

「そして少年は姉を探す旅に出た。

姉は必ず連れ戻すと両親と約束して。

旅の途中、気の良い仲間に出会う。

その仲間の一人が事情があり

その地を離れることができなくなり

また頼まれる。

友を頼むと。

その友とは色々あったようで

今はその友が敵のような形かな?

さて、そんな中また事件が起こる。

仲間の姉妹のうちの姉が

攫われてしまうんだ。

そして妹と約束する。

姉を助けると。

そして事件はさらに起こる。

探していた家族のほうの姉に再会するも

なんと戦闘になってしまったんだ。

そして助けることができずまた

離れ離れ。

そして自分も仲間とはぐれてしまったんだ。

その後色々あったのか

ここまで変わって今に至るというわけだ。

ひどいと思わないかい?」

「それはひどすぎる…。

貴様は…苦労してきたのだな…。

私にできることはないか?」

タケゾウは下を向いてため息をついて言った。







「何もない。

さっさとどっか行けよ。」

「ははは。

少年。

いいのかい?

このお嬢さんにはできることがあるのだよ?」

「何?

私にできることがあるのなら協力しよう!」

女は目を輝かせながら

勢いよく立ち上がった。






「ではまず少年の姉を返してあげるんだね。

それに姉との再会を邪魔したことも

詫びておいたほうがいい。

人族のお姫様。」

「…え?」

女は白髪オールバックの方を

疑問たっぷりに見た。








「少年は君達が異世界から召喚した

者たちの友であり、家族なのだよ。

君達が奪ったんだ。

そしてようやく再会した少年達を

結果的には戦闘にして

また離れ離れにした。

その首飾りとこの変わり様から

察するにおそらくはその剣の神と

戦い、勝ってここにいるんだろうね。

まぁ要するに君達が少年の苦しめている

元凶の一つだ。」

「…。」

女はうつむき声も出ない様子だった。









「ん?

どうしたのかな?

助けてあげないのかい?

せめて殺されてあげなよ。

少年に。

理不尽なことをした君達が悪いのだから。」

その時、タケゾウが素早く刀を抜き

切っ先を白髪オールバックに向けた。









「…黙れ。」

「やれやれ。

では私はこれで失礼するとしよう。

この先も楽しませてもらうよ。

では失礼。」

白髪オールバックは音もなく闇に消えていった。








「…。」

女は顔をあげることができず

ずっと地面を見ていた。

「…おい。」

タケゾウは見兼ねて声をかけた。







「…すまぬ。」

「ん?」

そしてタケゾウの横まで歩き

地に膝をつくと

土下座をして頭を下げた。








「…。」

「もういい。

頭上げろよ。」

女はそれでも頭を上げようとはしなかった。








「はあ。

いいよ気にしなくて…とは言えないか。

だが今は誰かを殺す気分じゃねえよ。

それにお前も俺を殺したくなるはずだ。

アドアリスのこと話してやるよ。」

タケゾウは女にアドアリスのことを話し始めた。



読んでいただきありがとうございます。

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楽しんでいただければ幸いです。

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