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失意と墜落と逃走と

燃えて雪が解けぬかるんだ地に

タケゾウは力なく座っていた。






泣くでもなく

笑うでもなく

その肩には何の力も感じられない。






喪失。

この言葉が今のタケゾウを表すのに

適切だろう。






「タケゾウ。

そんなとこ座ってないでこっちきなよー。」

ヘルがそんなタケゾウを見かねて声をかけたが

タケゾウが反応することはなかった。







「こりゃ少し一人にしてやったほうが

いいのかもな。

ヘル。

タケゾウのこともそうだが

この二人はどうする?」

ジュジュはあまりにも暴れるため

ガルドによって気絶させられていた。

「あ、そういえば殺すって言われたんだった。

んー…このまま逃したら

殺しにここに来ちゃうかな…。

とはいえ捕まえているのもね。」

「ここには二度と来ないと

約束する。

だからこの人だけは助けてほしい。」

「健気だなー。

うちも悪魔だけど

鬼じゃないし逃してあげよう

と思うんだけど

少し話し合いでもしようよ。

とりあえず中に入りなよ。」

ガルドがジュジュを担ぎ

カリストはヘルに従い屋敷に戻った。







「じゃ皆屋敷の修復お願いね。

タケゾウ!

タケゾウも手伝っ…あれ?」

ヘルが振り返った庭には

タケゾウの姿がなかった。







「あれ?

おーいタケゾウ!

どこ行ったの?

屋敷に入ったのかな?」

ヘルは屋敷の中に入り

タケゾウを探すもどこにもタケゾウの姿はなかった。

















「……。」

タケゾウは一人街を彷徨っていた。







『アレース…。

何でだよ…。

せっかく生きてまた会えたのに…。

みんなも戦争してるって言ってたな…。

生きてるのはわかったからそれだけでも…。

でも…また…アレースみたいにみんなも…。

はは。

俺はこれからどうすればいい…。

約束守ったところで

なんか変わんのか…。

ぶっ壊すなんて言っといてこの様だもんな…。

世界ぶっ壊しても

もう大切なもんは変わっちまって

何も俺の手には残らねえってことなんだろうな。

結局、強くなったところで

何も変えることできねえんだな俺は。』

「いてぇなコラ!!」

タケゾウは考え事をしながらふらふらと歩いて

いたせいで柄の悪い男にぶつかってしまった。








「…。」

タケゾウはゆっくりと顔を上げ

その者の顔を見ると

また顔を下げふらふらと歩き始めた。






「おいてめぇ!

ぶつかっておいてなんだその態度は!!」

男はそう言ってタケゾウの肩を掴み振り向かせると

下からえぐるように

タケゾウの顔面を殴った。





タケゾウはそのまま壁に飛ばされ

ズルズルと地に座るような形になった。

そしてその男はタケゾウを数度蹴りつけると

気が済んだのか去って行った。






『ははは。

こんなに蹴られたのに

傷一つねえ。

すげえ体になったもんだ。

もうよくわかんねえな。

ん?

あれは…。』

タケゾウはさっきの柄の悪そうな男が

落としただろう丸薬を見つけた。







『…いい機会かもな。

正直何がなんだがもうわかんねえ。

このままもうどっかに行っちまうか。』

タケゾウは立ち上がり、街を出た。

誰に告げるでもなく

森に入った。





森はあの時とは姿を変え

平穏な物だった。






タケゾウはふらふらと歩を進めた。

やがて森は終わり、道が現れた。







曇っていた空からは

雪が降ってきた。







『…さみ…。』

タケゾウは寒さに少し身を小さくしながら

歩を進めた。






ダラダラといつまでも終わらない

自問自答を繰り返し

特にどこに向かっているなどという意識もなく

タケゾウはただ歩いた。







そして腹が減ると狩りをして食事を取り

眠くなればその辺で野宿した。

日が昇り、何事もなかったように日が落ちていった。

月に照らされたタケゾウの世界は

とても静かだった。






気が付くと雪がなくなり

暖かい日が増えていた。






タケゾウは歩いていた。

特に急ぐこともなく

ふらふらと歩いた。







気がつくと集落のようなところが見えていた。

だがタケゾウはその集落によることもなく歩を進めた。

その先にあった村も通り過ぎ

大きな街には入ったが、自分より小さい者ばかりがいた

その街をただ通り過ぎた。







街を出ると花をつけた綺麗な木々が目に付いた。

まるで元の世界で見た桜のような

薄ピンク色の綺麗な物だった。








『桜…みてえだな。

綺麗…だな。』

タケゾウは木の下に腰を下ろすと

目を閉じた。






『ずっと自分とだけ…会話してるみたいだ。

考えてわからなくなっての繰り返し。

歩いても何も見つからねえ。

考えても何も見つからねえ。

そもそも初めから何もないのか。

何について考えてたんだ俺は。

何を考えたらいいんだっけな…。

ああ…ねみーな。」

タケゾウは気付け寝息を立て眠っていた。

優しい暖かさに包まれながら

ゆっくりと眠った。








「…ゾウ…ねぇ!!

タケゾウってば!」

「あ…え?」

タケゾウはその懐かしい声に目を覚ました。







「もう。

せっかく修練に付き合ってあげてるのに

なんでスヤスヤ寝てんのよ!

ほら!

また始めるよ!」

手をグっと引っ張り上げられ

タケゾウは寝ぼけながら

立ち上がった。







「ル…ルーナ?」

「そうだよ?

もう。

何寝ぼけてんのよ。

あたしの顔忘れたの?」

目の前に立っていたのは

紛れもなくルーナだった。







「俺…寝てたのか?」

「それはもうぐっすりとね。

じゃいくよタケゾウ!」

「わ!

ちょっと…待て!」

「なんじゃい。

寝ぼけて修練なぞ

何の身にもならんぞ。」

「そうだよタケゾウ。

ほら。

シャキっとしなさい。」

「ベル爺…サクヤまで…。」

ベル爺がにこやかに笑いながら

サクヤは少し気だるそうに

タケゾウに声をかけた。







「もう。

本当にどうしたのよ。

悪い夢でも見てたんじゃないの?

こんなんじゃ修練にならないわね。

今日はアレースとマルースも来ることに

なってるし、早めに晩御飯の支度を…

って言ってるそばから

もう来たみたいね。」

「タケゾウさーん。」

そこにアレースとマルースが手を振りながら

空から降りてきた。







「アレース…マルース!」

「あれどうしたんですタケゾウ?

そんな泣きそうな顔して。」

「タケゾウさん?

ルーナさんに何かひどいことでもされましたか?」

「な!

人聞きの悪い!

そんなことマルースじゃないんだから

あたしはしません!」

「な!

私だってタケゾウさん

にはそんなことはしません!」

到着早々、ルーナとマルースの睨み合いが始まり

それをアレースがなだめた。






「みんな…。

無事で本当に良かった…。」

タケゾウは溢れ出そうな涙をこらえていた。

「本当に変だよタケゾウ?

どうしたの?」

「怖い夢でも見たんじゃない?

お姉さんが慰めてあげようか?」

「そ、そんなこと必要ないです!

タケゾウさんは強い人なんですから!」

「マルース落ち着くです。」

「ははは。

賑やかでいいのう。

じゃ皆で晩飯でも作ろうかのう。

ほらタケゾウ。

夢のことなど忘れて

手伝え。」

「あ…ああ。

悪い…長い夢見てたんだな。

手伝うよ。

今、手伝う。」

タケゾウは腕で

目を拭うと、先に準備を始めた

皆の笑顔の中には飛び込んでいった。







そして頬に冷たい何かがつたった。







タケゾウが目を開けると

雨が降っていた。

タケゾウは頬に手をあて

空を見上げた。






空からは大粒の雨が

大地に降り注いでいた。






『雨…か。

やっぱ夢なわけ…ねえよな。』

タケゾウは手の平で目を擦ると

立ち上がり、雨の中を歩き始めた。







雨の中少し歩くと

前からたくさんの人が歩いて来た。

しっかりと整列され、武装したその集団は

まさに戦争に向かうために行軍しているようだった。







『軍隊…?

人殺し集団のくせにご立派だな。』

タケゾウはうつむきながら

雨に濡れた自分の髪で顔を隠し

その集団に道を譲り

草むらを歩いた。






「これを使ってください。」

タケゾウの前に一人の武装し

その上からローブを羽織っている人が立っていた。

「…ああ。

借りて行くよ。」

タケゾウは手渡されたローブを羽織り

一礼するした。

すると首にしていたギルドのタグと

剣神アドアリスがしていたネックレスが

首元から出てきた。

タケゾウはそれをソっとしまうと

そのまま歩き始めた。





「ま、待て!

それをどこで!」

「姫様ー!

戻ってください!」





タケゾウは振り返ることなく

歩を進めた。







雨は女の言葉を遮るように

強く降っていた。






女は雨に濡れる男を渋々見送ると

隊列に戻っていったのであった。



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