あの日のその後
「タケゾウも知っての通り
わたくしは攫われたです。
そして、ヘルに出会い
何とか一命を取り留めたです。
その後はヘルがわたくしを保護し
この組織について話を聞いたです。
えーっと…元々はヘルがこの組織を立ち上げ
皆が平等に生きることができる世界を
というのが始まりだったようです。
そして長い年月をかけ
少しずつ少しずつ大きくなっていったです。
神様達が平和にしてくれたとはいえ
どうしても貧富の差や
差別など生きにくい者達がいたです。
そんな者達を受け入れていたのが
このカエルスなのです。
ですが今では組織も大きくなり
どうしても派閥というものが
できてしまったです。
ヘルやガルドのような穏健派と
メル達がいる過激派に内部で別れてしまったです。
過激派は世界を力で変えようと
様々なことをしたです。
それはもちろん許されることではないです。
そこでさすがに我慢の限界にきたヘルが
意見し、少しずつではありますが
変わろうとしている者も出てきてるです。
そんな時にわたくしは攫われてきたです。
ヘルが怒って無理矢理わたくしを保護して
くれたおかげでわたくしは今こうして
自由に動くことができるです。
もちろん最初は逃げようと思ってたです。
怨みや憎しみの感情が
何度も何度も湧き上がったです。
ですが…ここの皆と触れ合い
ヘルのそばにいてほんの少し
考えが変わってきたです。
皆が本当に良くしてくれたです。
タケゾウ達が無事なのもわざわざ
調べて来てくれたです。
一応知ってはいたですが…。
気付けば一週間以上がが過ぎていたです。
そんな時に事件は起きたです。
…。
魔族と龍人族が人族に攻撃を仕掛けたです。
……。
世界はついに戦争を始めてしまったです。
そしてその戦争にはカエルスも加わり
人族、小人族の連合、魔族、龍人族の連合
カエルスの三つの勢力が世界の均衡を保っているです。
それのどれか一つでも欠けてしまえば
もっと恐ろしい戦争になってしまうです。」
「な…なんで魔族と龍人族が攻撃を?
まだ準備段階だったはずじゃ…。」
「ふふふ。
きみはそんなことにも気付けないんだね。
アレースもそんなオブラートに包まないで
はっきりと教えてあげればいいのに。」
「メルは黙ってるです!」
「なぜだい?
事実を教えてあげなくては
可哀想じゃないか。
では僕が話してあげよう。
魔族と龍人族が攻撃をしたというのは事実だ。
だが、きみのいう通り時期ではなかった。
ではなぜか。
それはきみが行方不明になってしまったからだよ。
タケゾウくん。
きみが自身の弱さをわきまえてさえいれば
行方不明にはならなかったんじゃないかい?
僕が聞いた限りだと随分と
無茶をしたようじゃないか。
無茶とお無謀は別のものだよ。
そしてきみを失った魔王と一人の龍人が
人族に攻撃を仕掛けた。
大切だったんだろうねきみが。
きみさえいなければ戦争はもしかしたら
まだ起きていないかもしれない。
そしてアレースがカエルスに
従う必要もなかったかもしれない。
くっくく。
あれ?
言葉もないかい?」
「…まれ…。」
「は?
なんだって?」
「黙れって言ってんだ魚野郎!!」
「あーはははは。
いい気味だね。
声を荒げ、否定すれば世界が救われるとでも?
現実だ。
全てはきみが弱いから。
全てはきみが招いたことだ。
おかげで世界は大切な物を
たくさん失ったんじゃないかな?
きみ、僕のこと怨んでたんだろ?
今、世界はきみを怨んでいるよ。」
「黙れ!黙れ!黙れぇええ!!!」
「おや?
次は暴力かい?
そしてまた誰かを傷付けて怨みの連鎖を
作るわけだ。
最低だね。
アレースを見習うといいよ。
彼女は怨みや憎しみを
胸の内にグっと押し込めたんだ。
なぜだかわかるかい?」
「メル!
もうやめるです!」
「彼には知る権利…いや
知らなくてはいけないことだ。
家族の仇となぜ手を取り合っているか。
それはこの弱者のためなのだろう?
彼が戦争の原因を作ったとしても
それが拡大しないよう
二つに分かれてしまっている
カエルスを繋ぐ役割をして
なんとか戦争を拡大させないように。
また皆が笑っていられる場所を作るために。
それなのに彼は何もわかっていない。
そんな苦渋を飲んでいる
アレースのことを何も理解していない。」
「やめるです!!」
「ふふふ。
もう遅い。」
タケゾウはうな垂れていた。
返す言葉などあるはずもなかった。
世界は戦争を始めた。
それはルーナとマルースが
タケゾウを奪還するために
起こしたことだろう。
全ては自分が弱いから。
そしてそれを止めるために
アレースは仇と共に手を取り合い
第三の勢力として
戦争の拡大を防いでくれていた。
タケゾウは虚しかった。
自分がどれほど愚かなことをしたのか。
もう自分一人の命ではなかったのだ。
関わった人に支えてもらい
自分は生きていたことを
いつの間にか忘れていた。
「俺は…。」
「あははは。
ようやくことの重大さに気づいたかい?
本当に馬鹿なことしたね。」
「…くくく。
ははははは。」
「あ?
何を笑っているんだい?」
「確かに俺のせいだ。
だけどよ。
俺のせいで戦争が始まったことと
お前が俺に偉そうに話すこととは別だろうが。
とりあえずうるせえから死んじまえよ。」
タケゾウは話しながらユラっと立ち上がり
刀を構えたその瞬間に
全く警戒していなかったメルの
首を一刀で斬り落とした。
「は…れ?」
ドサっという音と共に
メルの頭は地面に転がり
胴体は崩れ落ちた。
「くくく…はははははは!!!
静かになったな!!
じゃアレース。
行こう。
戦争なんてもん俺がどうとでもしてやるよ。」
返り血を浴び振り返ったタケゾウは
アレースの知る以前のタケゾウではなかった。
「タケ…ゾウ…。」
アレースは突如豹変したように見えるタケゾウに
戸惑いを隠せないでいた。
「どうしたアレース?
早く行こう。
みんなのとこに帰ろう。」
タケゾウがそう言ったところで
ローブの集団が
タケゾウとアレースを取り囲んだ。
「皆!
やめるです!」
タケゾウは囲んだ者達を首を気だるそうにして
確認する。
「そういやこんな奴らもいたな。
まあいいか。
アレース少し待っててくれ。
皆殺しにしてくるわ。」
タケゾウがそう口にした瞬間に
ローブの者の内の一人の首が飛んだ。
「ぐくくく。
ほら。
ボケっとしてっとすぐ殺しちまうぞ?」
囲まれた和から抜け出たタケゾウが
後ろを振り返り
返り血塗れの顔を見せた。
「くくく。
戦争?
結構なことじゃねえか。
俺を助けたくて起きたなら
喜ばないとな。
世界が大切なもんを失ったって言ったか?
それは命かなんかか?
くっくく。
会ったこともねえ知らねえ奴が死のうが生きようが
俺にとってはどうでもいいことだっつーの。
そんなことにまで責任なんかとれっかよ。
馬鹿じゃねえのかっつー話だ。
俺にとってどうでもいい奴らなんぞ
死んじまえ!!!!!!!」
ローブの者に襲いかかったタケゾウを
アレースが間に入り抱き止めた。
「離せアレース!!
こいつら皆殺しだ!!」
「タケゾウ!
やめるです!!
憎しみからは何も生まれないです!
タケゾウよく見るです!
タケゾウはまだ失ってないです!
希望はあるです!」
「うるせえ!!」
「タケゾウ…今は何を言ってもダメです…ね。」
アレースはタケゾウを突き飛ばすと
タケゾウの周りを炎の高い壁で覆い尽くした。
「アレース!!
何すんだ!
やめろ!!」
「タケゾウ…。
わたくしは今…この組織でやらなくては
いけないことがあるです。
タケゾウも会わなければいけない人と
守りたい約束があるはずです。
…タケゾウ。
前を見るです。
憎しみに囚われてはダメです。
必ず…ひぐ…必ずまた会うです。
またね、タケゾウ。」
アレースはそう言うと
ローブの者達を連れ
足早にその場を後にした。
「待て!
アレース!!」
タケゾウは炎の壁を燃えながら這い出たものの
すでにそこにはアレースの姿はなかった。
「何でだよ…何でだよぉおおお!!!!」
タケゾウの叫び声が
屋敷の庭にこだました。
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