元王子様と元お姫様
「誰かと思えばきみはあの時の…。
その後、少しは強くなったみたいだね。」
「くくく。
余裕ぶってるが結構キツイんだろ?
うまく笑えてねーぞ?」
タケゾウはそう言うと刀を手から抜き
すぐさまメルの頭目掛け斬りかかった。
メルはそれを何とか後ろにかわしたが
タケゾウは手を緩めるはずなどなかった。
後ろに下がったメルに対し
月炎・三日月を放つ。
メルは間一髪それを横にかわすと
数発の水の矢をタケゾウに向け作った。
「雨惨劇。」
「月炎・炎月花!」
タケゾウの目の前で矢が次々と弾かれ
ジュっという音とともに蒸発していった。
「おいおい。
手加減なんていいよ。
本気で来いよ。
殺してやるから。」
「ふぅ。
やれやれ。
随分な変わり様だねタケゾウくん。
きみもようやく現実にある不条…」
メルは話しながら
剣を抜き、構えたその瞬間。
話終わるのを待たず
タケゾウが距離を詰め
横一線、その剣を弾いた。
メルは剣をかろうじて離さなかったが
腕ごと弾かれてしまい
目の前がガラ空きになってしまった。
「御託はいい。
早く死ね。
殺してやるから。」
「な!」
メルは予想以上の速さに
反応が出来ていなかった。
そしてタケゾウは返す刀で
メルを斬りつけた。
メルは何とか上体をそらしたものの
肩から腰にかけて皮一枚
斬られてしまい
血飛沫が舞った。
その血飛沫の中から
メルに向かい、切っ先が現れる。
メルはそれを剣で振り払うと
怒涛の剣撃を繰り出した。
タケゾウも手を緩めるはずもなく
その剣撃を真っ向から受けて立った。
鋭い金属音とともに火花が散る。
「おらぁぁああぁ!!」
タケゾウはその怒涛の剣撃すら物ともせず
またもメルに一撃を浴びせた。
「…ぐ!」
メルはたまらず距離を取った。
「…どうやら前とは違うようだ…ね。」
メルは手で胸を抑え肩で息をしていた。
その一瞬だった。
タケゾウの刀がメルの肩を貫いた。
タケゾウはそのまま押し込み
刀ごとメルを地面に打ち付けた。
「ぐは!!」
「だから御託はいいから死ねよ!!」
タケゾウは地面に打ち付けたメルの腹を
思い切り踏みつけた。
そして刀を引き抜き
頭上より上に構え、そのまま振り下ろした。
「タケゾウ知り合い?」
そこにヘルが音も無く現れ
タケゾウの振り下ろした刀を
指でつまむようにして止めた。
「あ”あ”!?
邪魔すんな殺すぞ!!」
タケゾウの怒りに狂った瞳が
ヘルを睨みつける。
ヘルはそれをうっとりとした表情で見つめながら
タケゾウに言った。
「タケゾウ。
少しだけ時間をちょうだい。
その後、殺してもいーし、拷問してもいいよ。
ね?
お願い。」
タケゾウはそんなお願いは構いはしない
と言わんばかりに刀を振り上げようとするも
まったく微動だにしなかった。
「邪魔すんな!
離せ!」
「もう…。
でもそれだけ怨んでるってことね。
メル何したの?」
「さぁね。
忘れてしまったよ!!」
メルはそう言うとタケゾウの足を殴り
タケゾウの体制を崩すと
その場から脱出した。
「ふぅ…。
ふふふ。
ああ…痛かった痛かった痛かったぁあぁあ!!
人族風情が調子に乗らないでくれるかな!!」
メルの周りには無数の水の矢が出現していた。
「くはは。
ようやくらしくなったじゃねえか。
おい離せ。
俺の邪魔すんなヘル。」
「はぁ。」
ヘルは仕方ないと言わんばかりに
指を離した。
「んじゃま、いきま…」
「メル!
やめるです!」
タケゾウがその怨みに満ちた瞳で
見据えたメルの後ろに
数人の者がローブを纏い
いつの間にか立っていた。
その内の一人が声を発したようだ。
そしてそれを発しただろう者が
タケゾウとメルの間に割って入った。
そしてタケゾウの方を見ると
肩を小刻みに震わせながら
そのローブのフードをとった。
「あ…ああ…アレース…。」
「タケゾウ…タケゾウ…。」
その真っ赤な髪は少し傷み
美しかった色白の肌は少し荒れていた。
だが、あの金色の瞳は前にも増して
気高く、煌々と輝きを放っていた。
そして涙が頬をつたう。
タケゾウはゆっくりと歩み寄ると
アレースの頭を自身の胸にグっと
引き寄せた。
「よかっだ…ぐす…無事でほんとよかっだ…。」
「タケゾウ…ひぐっ…こんなになるまで
わたくしを探してくれていたのです?
髪もこんなに伸びて…ひぐっ…
会いたかったです…ぼんど…あいだがったでずぅ!!」
アレースはタケゾウの胸の中で泣いた。
「アレース知り合いだったんだ。
もしかして前に話してたのって
タケゾウのこと?」
「ヘル…ひぐっ…その通りです。」
「…。」
タケゾウは溢れる涙をグっと嚙み殺し
ヘル達に聞かなければならないことがあった。
『涙を流してる場合じゃねえ。
アレースがここにいる。
メルがヘルを訪ねてここに来た。
そしてヘルとアレースは面識がある。
もう決まりじゃねえか。』
「おいヘル。
お前ら…カエルスか?」
「ん?
そうだよ? 」
タケゾウはアレースに伸ばした腕に
さらに力を込め、ヘルに刀の切っ先を向けた。
「そうか。
ヘル。
お前の婚約者にも彼氏にも
絶対なることはねえな。
ガルド。
仲間にはなれねえわ。
俺達は出会う前から敵同士だ!!」
タケゾウはそう言うと
その向けた刀に炎を纏わせた。
「タケゾウ…。」
アレースはタケゾウを両手で軽く押すように
その腕から逃れた。
「アレース?
ダメだ。
今は離れるな!
今度こそ何としても…」
「タケゾウ。
聞いてです。」
アレースはタケゾウの目をジっと見つめた。
「なんだ?
話なら後に…」
「聞くです!!」
アレースはそう言うと
自分から目を逸らし、周りを見るタケゾウの
頬に両手を添え
自分の方を向かせた。
「アレー…ス?」
「タケゾウ。
わたくしも今はカエルスの一員なのです。」
「な、何を…何を言ってんだアレース?
どうせこいつらに強制されてるんだろ?
なあ?」
「いいえです…。」
「じゃ…じゃ誰か人質にでもされて…」
「いいえです。
タケゾウ。
強制も、人質も何も無いです。
わたくしが望んで
この組織の一員になったです。」
「い、いや…
だって…だってこいつらは!」
「そうです…。
彼らがしたことは今でも忘れていないです。」
「じゃあなんで!!」
「タケゾウ!」
途端にタケゾウの体をツルが
グルグル巻きにし
一気にアレースと離される。
そして屋敷から出て
皆とは離れた場所にいた
ジュジュとカリストの元に
飛んでいった。
「離せ!!
邪魔すんな!
離せ!!!」
「タケゾウ!
こいつらは皆殺しですわ!」
カエルスの名を聞いたジュジュが怒り狂って
いるのをカリスト後ろから抱きとめ
何とか抑えながら
タケゾウを自分の元に連れてきたようだ。
「姫、少し落ち着いてください!」
「そうだぞ。
こりゃ落ち着いたほうがいい展開だ。」
「な!!」
その後方にガルドが音もなく現れた。
そしてジュジュとカリストを地面に押し倒し
その両手で背中を抑えた。
『そんな!
ビクともしない!
手で背中を押さえ付けられて
いるだけなのに!』
「殺してやるですわ!!
お前ら全員殺してやるですわ!!!」
「こりゃ物騒だね。
だが、これ以上騒いでも
何もできないさ。」
そこにアレースが走ってやってきた。
「ガルド…。
あまり手荒なことはダメです。」
「大丈夫。
そこまで力入れてねぇよ。」
「そう…です。
タケゾウ。
少し話を聞くです。」
「嫌だ!
こんなもん焼き払って…」
「タケゾウ。
しっかり聞くです。
皆を救うには必要なことです!」
「皆を…救う…?」
そしてアレースは静かに話始めた。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価お願いします。
新年度幕開けで
バタバタとしていますがコツコツ書けたらと
思っています。
お付き合いいただければ幸いです。




