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世にも奇妙なラブストーリー

鋭い金属音とともに

両者とも元いた方向に吹き飛ばされた。

タケゾウは空中でそのまま

月炎・三日月を放つも

女は地から木の根を伸ばし

自分の足に巻きつけ

地面近くまで自分を引き下げ

月炎・三日月をかわすとともに

そのまま根を中心に回転し

あっという間にタケゾウを捉えた。






女は間合いに入ると腰につけていた

小刀程度のナイフを抜き

タケゾウ目掛けて横一線振り抜いた。





タケゾウは間一髪、地面に着地すると

そのナイフを刀で受け流した。

そしてその返す刀で

下からえぐるように

刀を振り上げるも

そこにはすでに女はいなかった。

足に巻いた根で空中で方向を変え

タケゾウの少し横に無理やり着地していた。

そしてもう一本ナイフを抜き

タケゾウの間合いに飛び込むと

タケゾウの胴体目掛け斬りつけた。






タケゾウは何とか距離を取ろうと

真横に飛んだものの

すでにそのナイフは

タケゾウの脇腹をかすめてしまった。

脇腹から薄っすら血が滲む。





タケゾウの自動再生オートが働いたが

傷の修復が遅い。







『く…毒かなんか塗ってんなあのナイフ…。』

タケゾウが脇腹を抑え

刀を向けるその先で

女はうっとりとした笑顔を

タケゾウに向けていた。

タケゾウは一息吐き出すと

一気に距離を詰め

斬りかかった。






タケゾウは刀で連撃を繰り出すも

女はまるで踊るように

その刀を避けて見せた。

くるりと回り、タケゾウの脇腹に

回し蹴りを放ち、タケゾウが

後方に押し戻される。

その最中、月炎・三日月を放ち

女を狙うも、これも難なくかわされてしまう。






タケゾウはまた月炎・三日月を放ち

今度は自分も斬りかかろうと

足に力を入れたが

そこに痛みが走る。

女がタケゾウの足に

棘のある枝のような物を巻きつけたのだ。

そしてその枝は体にあっという間に

巻き付いた。

タケゾウは炎を放ち

自分の体ごとその枝を焼き払った。

そしてすぐさま皮膚を再生する。







「くすくす。

壊れない。

楽しいね。

うち、久しぶりに楽しい!」

女はそう言うと

タケゾウに斬りかかった。

タケゾウはそれをなんとか防いだが

もう片方の手に持たれたナイフが

深々とタケゾウの脇腹に刺さった。

女はそれを引き抜くと

宙返りをし、距離を取った。

さすがにタケゾウも膝をつき

脇腹を抑えた。








「あぁ。

やっぱりこのナイフで斬ると治らない。

くすくす。

ゆっくりとゆっくりとゆっくりと

壊れていくんだね。

くすくす。」

「その通りだな。

だからってすぐにってわけじゃねえ。

まだまだ。」

タケゾウは女を見てニヤっと笑うと

刀を杖代わりに立ち上がった。








制限解除リミットリリース

キルクルス!!!』

タケゾウはこのままでは勝ち目がないことを

悟ると、限界を突破するために

身体を向上し始めた。






『今、ここだ。

どこまで強くなれたのか。

俺はどこまで来れたのか。

今、出し切るんだ!!!』

「うおぉおおぉぉぉおおおお!!!!」

タケゾウは雄叫びとともに

どんどん魔力を取り込んでいく。







「あぁ。

良い。

すごく…刺激的。

くすくす。

あぁ…待てない…待てないぃいぃい!!」

女は大地に手をかざすと

無数の根を呼び起こした。

そして、タケゾウ目掛け

先端を鋭利な刃物のように尖らせ

怒涛のごとく突き刺した。








「月炎・炎月花!!」

タケゾウは自分の目の前に大きく円を描き

それを辿るように赤と青の炎が

空中で円となった。

そして、無数の根が

その円にぶち当たる。

衝撃とともに、宙を舞った

花びらのごとく、その火の粉は

根に燃え移り

辺りは一面炎の海と化した。






女はタケゾウの背後に

気付かれないよう

木の根を迂回させていた。






だが、タケゾウはいち早く

それに気付いた。

そして、地に刀を刺すと

月炎・天満炎月を使った。

大きな炎の壁がタケゾウを

一周取り囲むと

その炎の壁は急速に広がり

辺りの根を根こそぎ焼き払った。








そしてその炎は女に

迫ったが

目の前に数体の木の化け物が出現すると

女を守るように壁を作り

その炎に焼かれ、朽ち果てた。






「まだまだ!!!」

炎で遮られた視界を

タケゾウが切り裂き、女の間合いに入った。

着地と同時に斬りかかったが

ナイフで受け止められてしまった。

だがタケゾウはそれを押し込まず、手首を返し

刀をを滑らせ

そのまま足を斬りつけた。






ようやくタケゾウの攻撃が当たった瞬間だった。

だが、タケゾウは手を緩めることなく

斬撃を繰り出した。

先ほどとは速度もかわり

女はかわしつつも、ナイフを

使わなくては捌けないほどの

連撃となった。

女はたまらず距離を取ろうとするが

タケゾウはその手を緩めず

さらに速度を上げて

攻撃を仕掛けた。






そして金属音とともに

女が両手に持っていたナイフが地に落ちた。






タケゾウは切っ先を女に向けた。







「はぁはぁ…。

どうだ?

なかなか熱烈だったろ?」

タケゾウは肩で息をしながら女に言った。

「はぁはぁ。

…ふふ…くすくす。

本当にあなたって素敵。

うちのナイフも何度か

受けているのに

それでも壊れない。

あぁ…あぁ…。」

女は切っ先に手の平を当てると

そのまま自分からズブズブと

手の平を刺し、貫通させた。







「な!」

タケゾウが声を出した時には

女の手の平は鍔まで到達していた。

そして、鍔をギュっと鷲掴みにした。






「本当に…ス・テ・キ。」

女はあっという間に距離を詰めていた。

そして刀身に頬を当てながら

タケゾウをうっとりと見つめた。

刀身を伝う真っ赤な血が

女の頬に伝っていった。






タケゾウは刀を引き抜くと

顔目掛け、突き出した。

女は首だけを動かし

それをサっとかわした。

その際に、眼帯の紐をかすめ

ひらひらと眼帯が地に落ちた。







そしてその両目でタケゾウを

キョトンとした顔で見た。

タケゾウとしっかりと合った

その目を、女は真っ赤な手で覆った。






そして、とても残念そうにううつむき

ため息をついた。

「はぁぁ。

せっかく…せっかく壊れない

おもちゃと楽しく遊んでいたのに…。

うちのこの目をこんな至近距離で

しっかり見たらもうダメ。

あーぁ…目を使って壊したかったわけじゃないのに。」

女は残念そうに少し苛立ちすら

覚えたとばかりに口を尖らせ

顔を上げた。






遠くで戦いを見ていた子供は地に

尻をつき、うつむき、両手で耳を抑え

ガタガタと震えている。

女はそれを虚ろに見ると

やっぱりなと言わんばかりに肩を落とし

タケゾウの顔を見た。







「…え?」

女はつい声が出た。

目の前に男が立っていたからだ。






女の目はただの地獄だった。

その真っ黒な闇などと言うには

深すぎる黒がその目にはあった。

その中を白い無数の

人の形をした何かが出ようと

もがいてた。

苦しみが外にいる者に伝わるほど

うごめくそれは

絶望そのものだった。

それを遠巻きに見てしまった

子供はその禍々しさに怯え

それを体現するように

震えが止まらない様子だった。






眼帯が取れた途端、女から発せられたそれは

辺りをどんどん飲み込んでいった。

庭の端に避難していた者達にも影響を与え

目を見たわけでもないのに

悲鳴、嗚咽、錯乱する者が続出した。






そんな異常であり、異様が常識のような光景の中。

異様なまでに普通に立っている

常軌を逸した光景が女の前に

立っていた。

ただ、普通に立っていた。






女にとってはありえないことなのであった。

今までこの目を直視して

『普通』だった者はいなかったのだ。

それが突如、唐突に

突拍子もなく目の前に現れたのだ。







そしてそんな戦意を無くし

目を見開き驚いている女に

その目の前の男は行動した。






「…えーっと。

おら!」

刀を振り上げ、戸惑いながらも振り下ろした。

女はナイフを咄嗟に構えたが

それは弾かれてしまい

腕に軽いかすり傷を負った。

そして反射的に少し距離を取った。






「うちの目…見たのに…なんで?」

動揺が隠せない女。

それに特に動じることもなく

タケゾウは答えた。






「は?

目が合ったくらいで

照れるとでも思ったのか?

お前こそガキンチョだな。

小学生かよ。」

少し嫌味混じりにニヤっと笑いながら

タケゾウはそう言った。






女は腕から滲む血を見た。

「痛い…?

夢じゃないの?」

そして女はタケゾウを見つめた。

タケゾウは目の前で

いきなり動揺している女に

大きなため息をつき

言葉を放った。






「はあぁああぁ。

あのな。

そんなただの地獄程度でビビるかよ。

俺を内側から壊したいなら

俺の全てを奪ってみせろ。」





放たれたその言葉を

女は受け取った。

そして構えている刀におもむろに

飛び込んだ。

嫌な音とともに女の胸を刀が貫いた。






「あ?」

タケゾウは殺意もなく飛び込んだ女を

警戒することができなかった。






「痛い!

痛い!

痛い痛い!

痛い痛い痛い!

夢じゃない!

夢じゃない!」

女は刺さった刀を見ながら

狂喜した。

そしてタケゾウをまた見つめた。

そのうごめく黒い目に

白い光が宿り、瞳となった。







「うち、あなたの全てを奪うわ!!

結婚して!!!」







「………はぁあぁ!?」

そして女はタケゾウを

きつく抱き締めた。







世にも奇妙なラブストーリーの始まりだった。












読んでいただきありがとうございます。

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楽しんでいただければ幸いです。

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